強豪・クラーク女子を率いるのは東北楽天OB。指揮官が語った現役時代で学んだこと【後編】
今年の北海道大会を制したクラーク記念国際。男子野球部は初のセンバツへ大きく前進し話題となっているが、女子硬式野球部も強豪で知られている。
2018年度に創立された女子野球部。他の女子野球部と一線を画しているのは、NPB・東北楽天ゴールデンイーグルスと連携をしているということ。NPB球団と提携した女子硬式野球部の設立は「日本初」だ。
監督は東北楽天に在籍した森山 周監督。後編では森山監督の経験談と今後の展望について語ってもらった。
前編はこちらから!
女子硬式初!東北楽天と連携を取るクラーク記念国際しかない方針とは【前編】
クラーク記念国際女子野球部
ーークラーク記念国際が楽天と提携してから今年で4年目になります。指導するにあたって気をつけていることなど、ありますでしょうか?
森山:プロ野球に入ってくる選手は、ある程度の基礎ができていますから、いきなり新しいことを教えることが多いですけど、高校生には〝わかりやすく、わかりやすく〟伝えることが必要です。基本的には同じことを教えているのですが、少し言葉の表現は変えるようにしています。例えば「軸足に体重を乗せろ」とプロでは簡単に言いますが、軸足に体重を乗せるには、まず逆の足に乗せてから、重心を移動することが必要です。プロではしない、もう1個前の段階から話をしていくと、なんとなく伝わるようになるのかなと思います。
ーークラーク記念国際の指導に、森山監督の経験が生きている部分はありますでしょうか?
森山:元々、右バッターで大学から左バッターに転向しましたので、右バッターの気持ちも左バッターの気持ちも分かります。プロ野球では一軍でも二軍でも、ピッチャーとキャッチャー以外はすべてのポジションを守らせいただいたので、当時のコーチにご指導いただいたことを、そのままクラーク記念国際の生徒に伝えています。
あとは走塁ですね。今はピッチャーの投球がワンバウンドした時にスタートを切る「ワンバンGO」を徹底的に練習しています。キャッチャーがミットで止めたら戻りますが、前に転がしたら、そのまま次の塁に走る。実際にユース大会の駒大苫小牧戦では、二塁走者がワンバンスタートで三塁に走り、次の打者のタイムリーヒットで先制しました。
戦略室の金刃からは「このカウントは、この球が多いよ」というアドバイスも受けています。盗塁を狙うなら、(球速の遅い)変化球の多いカウントの方がセーフになる確率が高いですから、その知識があるとないとでは大きな違いになります。まだまだ改善点はありますが、前の塁に進む意識は全国でもトップの方にいると思います。
神戸弘陵のメンバーはパワーもありますし、体も大きい。個々でみたらうちのチームは敵わないですけど、野球の理解度や走塁のような細い部分なら対抗できます。今の(クラーク記念国際の)子どもたちは、かなり理解してプレーしているように感じます。
森山 周監督
ーー現役時代で印象に残っている成功したプレーと、失敗したプレーを教えてください。
森山:唯一、星野(仙一)監督にほめられたのが、(2014年9月20日の)日本ハム戦のプレーです。同点の9回裏の先頭バッターで内野安打で出て(出塁して)、盗塁したら次のバッターの嶋(基宏選手)が歩かされてノーアウト一、二塁になりました。そこでまた(三塁に)盗塁して、(島内 宏明選手の)ヒットでサヨナラ勝ち。なかなかほめてくれる監督ではありませんでしたが、「若手は(森山選手を)見習ってほしい」という感じでおっしゃっていただきました。楽天時代に唯一ヒーローインタビューを受けた試合です。
失敗は数えられないほどしていますが、印象に残っているのは、オリックス時代の日本ハム戦です。1点リードされている9回裏に二塁ランナーの代走に行ったんですけど、バッターがセカンドライナーを打って、僕が飛び出してダブルプレーで試合終了。代走に出て、何をしてるんだという感じですよね。
守備ではソフトバンク戦だったと思いますが、セカンドを守っていて、1イニングに失策2つと、記録は失策にならなかったけれどエラーみたいなプレーが続いた試合がありました。「飛んでくるな」「飛んでくるな」と思うんですけど、そういう時に限って飛んでくる(笑)。結局その試合で二軍落ちしました。
「失敗してもいい」というのはないんですけど、失敗はするものです。その失敗をどうプラスに持っていくかが大事です。僕は選手を怒ったりすることはありませんが、失敗を失敗のまま終わらせていたら、キツクは言います。「あれがあったらから、こうなったんだ」というのを見せてくれればいいですし、今の選手たちはそれができているので結果を出せていると思います。来年が非常に楽しみです。
(取材:河嶋 宗一)