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甲子園4強・近江に黄金期の予感!? エースを甲子園のマウンドへ導けるか

2021.10.19

 今夏の甲子園では強豪校を次々と下して、20年ぶりの4強入りを果たした近江。新チームでも投打で活躍を見せた山田陽翔(2年)を筆頭に滋賀県勢初の全国制覇を狙えるメンバーが揃っている。今回は大躍進となった夏の甲子園の振り返りと新チームの展望について取材した。

 後編の今回は甲子園準決勝、そして新チームの歩みや戦力について迫っていった。

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大阪桐蔭から漫画でも書けない勝利 近江ベスト4までの軌跡

疲労残す主将に代わる副主将・津田が新チームを牽引

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近江 星野世那

 準優勝した2001年以来、20年ぶりのベスト4入りを果たし、初の頂点が見えてきたが、過密日程で戦ってきた選手の体が限界だった。岩佐は準々決勝で右肘を痛めて準決勝は登板できず、智辯和歌山に1対5で敗戦。山田も甲子園でのダメージが大きく、ここまで秋の大会では登板していない。

 近江は彼ら以外にも副島良太外義来都星野世那の2年生左腕が控えていたが、彼らを起用することは容易ではなかったと多賀監督は話す。

 「総合的に考えた時に山田、岩佐と他の3人では相当な差がありますよね。甲子園で投げるということは、地方大会とは違う独特のものがあって、地方大会の1球が5球分、10球分に相当する疲労度があるんじゃないかなと今回思いましたね。岩佐はそんなに球数は投げていないですけど、1球が10球、場合によっては20球に感じていましたよね」

 甲子園は独特の雰囲気の中で、強力な打者と対峙するため、投手にかかるストレスは他の試合よりも強い。こうした背景を考えた時に山田、岩佐以外の投手で乗り切るのは難しいというのが、多賀監督の判断だった。

 だが、結果的に副島と外義は甲子園のマウンドに上がり、星野も外野手として出場することができたのは、新チームになってから活かされることだろう。

 甲子園から地元に戻ったその日、「彼の性格からしても主将にして、今まで通りチームの柱としてやっていくのが一番いい形かなと思った」と多賀監督は新チームの主将に山田を指名した。

 しかし、山田は甲子園のダメージを考慮して、全体練習からは離れていた。その代わりに存在感を示しているのが、副主将の津田だ。前主将の春山以上に生真面目な性格でチームを引っ張っており、練習開始時間が以前より10分早くなったという。多賀監督は津田に対して、日常の練習や生活を引っ張る役割を期待していたが、ここまでは指揮官の予想を上回る働きぶりを見せている。

[page_break:甲子園の舞台でエースを投げさせる]

甲子園の舞台でエースを投げさせる

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小竹雅斗

 戦力面で見れば、投打の大黒柱である山田に津田と横田悟(1年)の二遊間、副島、外義、星野の左腕トリオといった甲子園経験者が揃っており、今夏以上の結果も十分に狙える陣容だ。

 その中で多賀監督がキーマンに挙げているのが、甲子園でもベンチ入りしていた捕手の大橋大翔(2年)。新チームでは正捕手として多彩な投手陣を引っ張っていく役割が求められる。捕手育成に定評のあるチームだけにこれからどのような成長曲線を描いていくのかに注目だ。

 もう一人の注目選手が1番中堅手の小竹雅斗(1年)。夏は横田とともにベンチに入れるか迷ったというほどの好素材。「良い状況判断ができる子」と指揮官の信頼も厚く、攻守でチームに勢いをもたらす存在となってくれそうだ。

 秋の滋賀大会は山田を起用せずにベスト4まで勝ち上がった。その山田も準決勝では代打で出場し、3位決定戦では4番右翼手でスタメン出場を果たした。立命館守山との3位決定戦では、山田の満塁本塁打が決勝点となり、何とか近畿大会に出場権を勝ち取った。

 実戦復帰を果たした山田だが、まだ万全の状態ではなく、近畿大会では野手としての出場が濃厚。来春の甲子園出場を勝ち取るには他の投手の活躍がカギを握る。まずはセンバツ選出が濃厚な4強入りして、山田をもう一度、甲子園のマウンドに立たせるのがチームの目標だ。

 「練習では何としてでも近畿大会で勝って、甲子園の舞台で山田を投げさせるという気持ちが津田を筆頭に強いと感じますね。そういう気持ちで何とかここからも壁を突き破ってくれないかなと思っています」(多賀監督)

 夏は惜しくも届かなかった全国制覇への挑戦権を懸けた戦いが18日より始まった。チーム一丸となって、2季連続の甲子園出場を勝ち取れるか。

(取材:馬場遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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