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強豪・奈良大付撃破!文武両道を実践する畝傍(うねび)のコンパクトな練習【前編】

2020.12.09

 秋の奈良大会で3位となり、来春のセンバツの21世紀枠推薦校に選ばれた畝傍(うねび)。県内有数の進学校で、昨年度は現役浪人併せて京大に6人、阪大に30人の現役合格者を輩出した。野球部も阪大、神大、大阪市立大など難関国公立で野球を続ける選手が多く、文武両道を実践している。

 いかにして勉強と野球を両立しているのだろうか。そのヒントを探るべく、取材に伺った。

8割が塾通い。短期集中の練習

強豪・奈良大付撃破!文武両道を実践する畝傍(うねび)のコンパクトな練習【前編】 | 高校野球ドットコム
鳥かごでバッティング練習をする選手(畝傍)

 橿原市にある畝傍は1896年に創立された伝統校。レトロな雰囲気を醸し出す校舎は登録有形文化財に指定されている。

 グラウンドは内野こそ黒土だが、レフトが極端に狭く、サッカー部、ラグビー部、陸上競技部と共用で内野部分しか使えない日もある。取材日もグラウンドの3分の1のみを使用しての練習だった。

 そのため、外野手はポジションについてノックを受けることができず、1ヶ所でゴロや定位置より前のフライを処理していた。フリー打撃もできないため、グラウンド端にある鳥かごでマシンのボールを打つのが基本となっている。

 また、19時半までに下校することが暗黙の了解となっているため、1日の練習時間は2時間半程度。約8割の選手は塾に通っており、練習後に塾で勉強する選手も少なくない。時間と場所が限られた中で力をつけるために必要なことは集中力だと今年8月に就任した同校OBの駒井彰監督は話す。

 「授業が終わったらすぐグラウンドに出ることですね。練習の間も迅速に行動する。短い時間ですけど、集中してやる雰囲気を作るということですね。外野の守備は試合と同じようにできないですけど、後ろの打球は前の方に守ることで後ろの打球を練習しています。練習試合は土日にこなしながら、失敗したり、上手くいったことをみんなで共有しながら一つ一つ力を高めていくことにみんなで意識を強く持っています」

 この日は16時に練習が始まり、18時過ぎには練習を終えてグラウンド整備に入っていたため、2時間ちょっとの練習時間だった。その中で時間ごとに練習メニューを区切り、スムーズに次の練習に移っていく。3時間以上グラウンドにいたのではないかと思ったほど、濃密で無駄のない練習を行っていた。

 時間を有効活用するのは勉強も同じ。主将の若松慎太郎(2年)は「休み時間であれば5分でも単語帳を見たり、家に帰ってからは30分でもいいので勉強する習慣をつけるようにしています」と隙間時間を上手く使うことを心がけているそうだ。野球も勉強も時間を大切にする。こうした意識が高いレベルでの文武両道を実践しているのだと取材を通して実感した。

[page_break:強豪・天理に敗れるも3位決定戦で奈良大附に雪辱]

強豪・天理に敗れるも3位決定戦で奈良大附に雪辱

 

強豪・奈良大付撃破!文武両道を実践する畝傍(うねび)のコンパクトな練習【前編】 | 高校野球ドットコム
若松 慎太郎主将

 今夏の独自大会は2回戦で奈良大附に1対3で敗戦。旧チームでは三塁手の若松(新チームから外野手に転向)、捕手の根来 瑛(2年)、遊撃手の和田 拓大(2年)の3人が試合に出場しており、その中から話し合いを経て、若松が主将に選ばれた。

 駒井監督は最初から新チームの実力に自信を持っていたわけではないが、「練習試合を重ねるうちに粘り強さが出てきて、ひょっとしたらという思いが出てきました」と徐々に手応えを感じられるようになってきた。

 これまでの畝傍は実力を出し切れずに敗退することが多かったそうだが、秋季大会では投打が噛み合い、順調に白星を重ねていった。しかし、近畿大会出場を懸けた天理戦では0対7の7回コールド負け。プロ注目右腕の達 孝太(2年)相手にわずか2安打に抑え込まれた。打席に立った若松はこれまでにない凄さを感じたという。

 「(達君は)自分たちが見たことのあるピッチャーに比べて何段階も違うピッチャーでした。真っすぐは全く落ちてこないですし、変化球も全く自分たちが当てることができないくらいにキレもスピードもあったので、そこは対応できないと勝てないのかなと思っています」

 近畿大会の出場は絶たれたが、「21世紀枠というセンバツの推薦項目がありますので、(3位決定戦で対戦する)奈良大附に勝って3位になれば、チャンスが生まれるんじゃないか」と駒井監督は選手に発破をかけた。すると先発した太田 佑音(2年)が好投を見せ、3対1で勝利。夏に敗れた相手にリベンジし、いい形で大会を終えることができた。

 この戦いぶりが評価され、21世紀枠の推薦校に選出。若松は「自分たちが常日頃やってきたことを評価して頂いたので、嬉しく思っています」と語る。それ以来、チームに自信が生まれ、活気のある練習を続けることができている。

 だが、甲子園までの道のりは決して簡単ではない。まずは11日に発表される近畿地区連盟推薦校に選ばれる必要があるが、近畿大会に出場した大阪の大阪山田や兵庫の東播磨などと争うことになる。

 当然、選ばれることを選手や指導陣も期待をしているが、「奈良県で選んで頂いたことを一つの誇りとして、次は夏の大会で優勝して、甲子園に出場しようという話をしています」と駒井監督は仮に落選してもこの実績は必ずチームのプラスになると考えている。選考結果はふたを開けてみないとわからないが、どちらになってもチームの発奮材料になることは間違いなさそうだ。

強豪・奈良大付撃破!文武両道を実践する畝傍(うねび)のコンパクトな練習【前編】 | 高校野球ドットコム後編はこちらから!
強豪私学の好投手を討つ 21世紀枠推薦校・畝傍、悲願の甲子園初出場に向けて【後編】

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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