目次

[1]経験値の浅さを埋めるべく3年生が成長も自粛期間に
[2]夏はオール3年生で臨み、強豪揃いのブロックを勝ち抜き、優勝へ

 甲子園通算103勝を誇る京都の名門・龍谷大平安。府大会準々決勝敗退に終わった昨秋からの巻き返しを図っていたが、コロナ禍により、当初の予定は大幅に狂ってしまった。そんな中でも夏の代替大会に向けて練習に取り組んでいる。甲子園を目指せない中で彼らはどのようにして夏を戦うのだろうか。

経験値の浅さを埋めるべく3年生が成長も自粛期間に


 昨年のチームは秋の近畿大会を制してセンバツでも8強入り。夏は準決勝で立命館宇治に敗れて3季連続の甲子園出場とはならなかったものの、この1年間は十分な成績を残せたと言えるだろう。

 昨年の3年生が引退して、新チームが結成された当初の課題は経験値の浅さだった。旧チームからレギュラーに定着していたのはクリーンアップを打っていた奥村 真大(3年)のみ。その奥村も最初は主将に立候補したが、数日で挫折。それからは山崎 憂翔(3年)が今日に至るまで主将を務めている。

 こうしたチーム状況もあり、原田英彦監督は「秋は行き当たりばったりでした」と振り返る。軸となる投手がこの時点では確立されておらず、「投手もたくさん使いました」(原田監督)と苦しい投手運用を強いられた。

 それでも地力で8強まで勝ち進んだが、準々決勝の東山戦では投手陣が序盤から打ち込まれ、4回までに10失点を喫してしまった。後半の追い上げも届かず、9対11で敗戦。2年連続のセンバツ出場とはならなかった。

 投手力に不安を残した秋だったが、冬場の練習の頑張りを原田監督は高く評価していた。右腕では秋から投げていた西本晴人と村尾 亮哉に「いいスピードボールを投げる」(原田監督)という工藤麟太郎、左腕では長身の竹嶋大登にカーブを武器とする茨木 篤哉、ワンポイントでの活躍に期待できる谷次真一と3年生投手が次々と成長を見せており、エース候補の誕生に指揮官は期待を寄せていた。



原田英彦監督(龍谷大平安)

 しかし、その矢先に新型コロナウイルスの感染が拡大して、3月上旬には寮を解散。5月末まで全体練習を行うことができなかった。

 「一番大事な冬が終わって、春からゲームを重ねる。野球面はもちろんですし、人間的にも3月から6月にかけて一番成長するんですよ。この期間を奪われたというのは凄く大きいです」と原田監督は悔やんだ。

 冬の練習で心身ともに逞しくなった最上級生が、試合を重ねるごとにチームを成熟させることによって、夏には完成度の高いチームを作ることができる。夏の大会を戦うために大事な時期にチームを解散せざるを得なかったのは龍谷大平安に限らず、多くのチームにとって大きな痛手となったことだろう。

 休校期間には選手と指導者でLINEやZoomなどを利用してやり取りをする高校も多かったが、原田監督は「自分で考えるいいきっかけかなと思って、何も言わなかった」とあえて静観する選択をした。選手たちに全てを任せることで自主性を育もうとしたのである。