投手育成の原点は、30mブルペンでのしっかりした投げ込み!霞ヶ浦(茨城)【前編】
悲願の甲子園初出場を果たしたのが2015(平成27)年夏。それまで、7年間で5度、茨城大会決勝で苦杯を舐めさせられてきた。そうして6度目の挑戦でついに悲願を果たしたのだが、それだけ県内では強豪校としての位置づけを維持し続けてきているともいえる。
もっとも、一昨年夏には決勝で前半最大5点のリードをしながら、逆転され、一次は再度追いついたものの、延長の末に土浦日大に屈した。その悔しさは大きかった。また、昨夏もベスト4に進出したものの甲子園には届かなかった。果たして、今年はどんな夏になるのだろうか。4年ぶりを目指す霞ヶ浦を訪ねてみた。
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霞ヶ浦高等学校(茨城)【後編】
作り直していく中で台頭してきたエース・鈴木寛人
30メートルブルペンでピッチングをする霞ヶ浦の選手たち
昨年秋の県大会はベスト8に進出して藤代に敗退。しかし。春は守りが乱れたこともあって明秀日立に初戦で10対7という乱戦の末に敗退。やや不本意な結果に終わった、そこからの立て直しとして挑む夏となる。
夏を目指す戦いとしては、6月になってチームとしては一気に仕上がってきたということを高橋祐二監督も実感している。というのも、ここへきて投手としては、期待していた鈴木寛人君が一気に成長してきたなと感じさせてくれるようになってきたのが大きい。プロのスカウトからも、注目される存在になってきたのである。
「春は、投手を含めた守りが崩れて、簡単に早く終わりましたから…。時間もあったので、そこから作り直していく時間もありました」
そう、高橋監督は振り返るが、そこからもう一度鍛え直していく中で、投手陣の中から鈴木君が大きく抜け出してきたのだ。最速148キロまで表示しているというストレートのスピードもさることながら、球の回転がいい投手としての評価が高い。
実は、そうした投手育成の背景には、霞ヶ浦独特の投手作りの秘訣があった。
それは、プレートからホームベースまでの距離が30mもあるロングブルペンでの投げ込みだ。そこで、今の時期は週2回、ストレートで50球、変化球(カーブ)で20球の合計70球を投げる。これが、冬の時期には週3回行うという。通常のバッテリー間(18・44m)の倍近い長さを投げるのだが、これを6~7分程度の力で投げて、球の軌道がスーッと糸を引くようになっていくのが理想だという。
[page_break:好投手輩出の陰にロングブルペンあり]好投手輩出の陰にロングブルペンあり
グラウンドに整列する霞ヶ浦の選手たち
このロングブルペンで投げ込んでいくことによって、
1.ボールの回転力を付けていく
2.球筋がよくわかる
3.しっかりと投げていくためには、球の引っ掛かり具合をしっかりと核にしていかなくてはならない
4.馬力で投げるのではなく、いい投げ方(理想的フォーム)でスムーズに投げていかないといい球は投げられない
ということを確認することが出来る。
鈴木寛人君などは、そこから見違えるように球がよくなって、「完全に一皮剥けたなと感じられるようになった」と言う。実際、5月の下旬あたりからの練習試合で成果が打始めていた。センバツ帰りの桐蔭学園を8回1安打に抑え、作新学院には1対0、東海大甲府にも1失点のみで3対1。かつては、ヒットを一本打たれたら、そこから連打を喰らってしまうという悪癖があったのだが、ボールの回転が良くなってきて、打者に対して勝っていると感じられるようになって、意識も成長してきて「普通に投げたら、そうは打たれない」という意識を持てるようにまで成長してきたという。
さらには、2年生で左の山本雄大君も成長の兆しを見せているという。
この30mブルペンは、室内練習場の端の方に設けられているのだが、投手が投げ始めると、高橋監督は打撃練習やシートノックが行われているグラウンドから、室内練習場へ向かって、その様子も見に行くのである。その中で投手陣の成長を見ていくのである。
実際、ここから、根本薫(オリックス=2016年ドラフト9位、現外野手)、遠藤淳志(広島=2017年ドラフト5位)と2年連続でドラフト会議で指名される投手が育っているのである。そう言う意味でも、投手の育成として30mブルペンが素材そのものを壊すことなく育てていかれるということを証明しているとも言えそうだ。
前編はここまで。後編では夏に向けた取り組みなどを中心に伺います。後編もお楽しみに!
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(取材・手束 仁)
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