第532回 『目標』ではなく『決意』の域へ!兵庫県の公立の雄・社が痛感した勝負への姿勢【前編】2019年01月09日

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【目次】
[1]「決意」の大切さを痛感した秋
[2]目指したのは「打ちにいって見逃せる技術」

 昨秋の兵庫大会では、小野津名関西学院市立尼崎を退け、4強入りを果たした。準決勝で明石商に敗れた後に臨んだ報徳学園との3位決定戦では延長13回の死闘の末、惜敗。あと一歩の所で近畿大会出場は逃したが、昨夏の甲子園大会でベスト8に輝いた名門を追いつめた一体感のある戦いざまは強く印象に残った。
 12月中旬、兵庫県加東市に位置する高校を訪れた。校内にある野球部専用グラウンドへ歩を進めると就任5年目の山本巧監督が笑顔を携え、出迎えてくれた。

「決意」の大切さを痛感した秋



ノックを打つ山本巧監督

 「近畿大会まであと一勝のところまでいきながら、最後に勝ち切れなかった一番の要因は『決意の不足』だと思っています」
 秋の戦いを振り返った指揮官は、穏やかな表情に若干の悔しさを滲ませつつ、そう語った。

 「決意の不足が甘さにつながった。甲子園出場を目標に掲げていましたが、うちは未だ秋も夏も兵庫の決勝すら進出したことのない学校。目標という感覚のままでいる限り、未知のゾーンを突き抜けることはできないなと。必要なのは『目標』ではなく『決意』の域にもっていくこと。『絶対にやるんだ!』という強い気持ちで戦いに臨むことの重要性を痛感した秋でした」

 勝負に臨む大前提を認識した秋は、新たな試みを導入した秋でもあった。「秋季大会中に変化を遂げる」というテーマの下、例年ならば、秋の公式戦終了後におこなう「体づくり」を8月のお盆明けからスタート。「強化レベル」のハードなウエイトトレーニングと向き合いながら、秋の公式戦を戦う方針を採った。

 「今までも秋季大会期間中にウエイトトレーニングはやってはいましたが、試合に向けてのコンディショニング面を考えると、『疲労をためたくない、故障やケガもこわい』という気持ちが勝ってしまい、筋力を維持するレベルのトレーニングにとどまっていた。でも昨秋は、外部トレーナーと相談しながら、極力試合にコンディションを合わせつつ、強化レベルの負荷の高いトレーニングを思い切って秋季大会中にやり続けました」

 冬場のオフ期間を経て、ようやく手に入るレベルのボディを前倒しで手に入れられれば、体格に恵まれた選手の多い強豪校との差を秋の段階で縮めていけるのではないか。新たな試みの根底にはそんな考えがあった。
 大会の後半になるほどに相まみえるチームのレベルは上がり、戦いの激しさは増す。しかし、昨秋は新たな取り組みが功を奏し、大会スケジュールが進むごとにナインの体躯には逞しさが宿り、チームの平均体重が右肩上がりで増えていった。兵庫の上位陣に対してもパワー、スピード面で互角に渡り合えたことは、県4位という結果を力強くアシストした。



プロ注目の147キロ右腕・藤本竜輝投手

 「大会のはじまりと終わりとでは明らかに選手たちの体つきが変わっていた。やはり身体が変わればプレーも変わる。大会序盤はまったく計算のできなかった控え投手陣も大会が進むにつれ、体つきが逞しくなり、投げるボールがどんどん力強さを増していきました」

 新チーム結成時は、最速147キロを誇るプロ注目右腕・藤本 竜輝に頼らざるを得ない状況だったが、準決勝、三位決定戦では控えの古西祥真、鐘搗啓介が明石商報徳学園打線に対し、ともに自責点ゼロの好リリーフ。特に古西は「ここまで秋に伸びた選手は見たことがない」と指揮官に言わしめるほどの成長を遂げた。
 「古西は秋季大会期間中に体重が約10キロ増えたんです。お盆過ぎの古西と大会終盤の古西は見た目も投げる球ももはや別人でした」

 入学当時、120キロ程度だった最高球速は現在136キロ。秋だけで約5キロのスピードアップに成功した。
「元々、打者の手元でボールが伸びる球質だったのですが、今では実際にボールがホップしているように感じられるイメージの球を投げられるようになり、真っすぐで空振りがとれるようになりました。夏までに藤本との二枚看板が形成できる可能性は高いと思っています」

【次のページ】 目指したのは「打ちにいって見逃せる技術」

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