目次

[1]敦賀気比流・冬トレの考え方 / 長距離走を行わない理由とは
[2]返した優勝旗を再び持ち帰りたい

 明治神宮大会準優勝敦賀気比。しかし敦賀気比を率いる東 哲平監督は、チームの状況を厳しく見ており、また選手たちもまだ実力が足りないと自覚していた。雪国である福井県で、選手たちはいかにして、実力をつけているのか。トレーニングの考え方、そして選抜へ向けての意気込みも語っていただいた。

敦賀気比流・冬トレの考え方

グラウンドはこの日も湿っていた(敦賀気比高等学校)

「雪国なので冬の間はグラウンドの上での練習は基本的にできない。実戦練習も当然できません」と東監督。取材日は雪こそ降っていなかったものの、冷たい強雨が地面に叩きつけていた。ある選手が「冬の間は、グラウンドの土が乾いた状態になることはほとんどないです」と教えてくれた。

 センバツ大会が2か月後に迫っていながら、実戦練習が一切できないという現実。そのハンデは決して小さくはないはずだが、東監督は「ハンデを嘆いたところで、なにも始まらない」と、達観したような表情で話す。

「毎年、うちのチームの冬トレのテーマは『個人の能力のアップ』です。実戦練習はできないかもしれないけど、その分、体づくり、体力強化、振り込み、基本動作の習得や反復といった面ではどこにも負けないくらいに徹底的にやってやろうじゃないかと。グラウンドが満足に使えない分、割り切って、腹を据えて室内練習場にこもれる。今ではそれがうちの強みだと、プラスに考えられるようになりました」

 敦賀気比が冬トレにおいて大事にしているのは「野球の動作の中で体づくりを行う」という発想だ。
「『野球に生きる体力は野球の動作の中で身につけるのがベスト』という考え方が前提にあります。例を挙げると、野球選手に体幹の力は必要ですが、技術練習以外の時間で体幹トレーニングに時間をたくさん割くことはうちではしません。バットを振り込む過程でも体幹は間違いなく強くなりますし、その過程で生まれた体幹力がもっともバッティングに生きてくるのだと思う。野球はボールやバットといった道具を使って行うスポーツ。極力、道具を使った技術練習の中で体づくりを進めていきたいと考えています」

長距離走を行わない理由とは

 グラウンドが満足に使えない環境ということもあり、「走り込む量などもきっと桁違いなのだろう」と筆者は決めつけていた。しかし、聞けば、冬トレメニューに組み込まれがちな「長距離走」は基本的には行わない方針だという。東監督は「10キロ、20キロ走ることで野球がうまくなるのならいくらでも走らせますけど…」と前置きした後、次のように続けた。

「うちの高校も、冬トレといえば一日中走っていたような時期も昔はありましたが、その時期は思うような結果も出ず、甲子園に出場することもできませんでした。やはり長距離走はオーバーワークにつながりやすいため、脚の故障も多くなりますし、体も大きくなりにくくなる。長距離走でつく体力と野球に必要な体力はやはり違うと思いますし、野球のパフォーマンスに直結する下半身強化を目指すならば、ボールを使ってゴロ捕球の練習をしたりする方が成果が出やすいという結論に至りました」

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