Column

桶川(埼玉)「練習ハ不可能ヲ可能二ス」を胸に秘めて、埼玉で波乱を起こす!

2020.03.06

守備からリズムを作って県大会をたぐり寄せた


順番を待つ桶川の選手たち

■活動の一環で企業への提案もする歴史ある学校

 昭和47年に開設された桶川。現在は各学年8クラスを持つが、1、2年生を対象にした『桶高クエスト』と呼ばれる取り組みがある。

 これは地元中小企業の経営者を講師として招き、各企業からもらう課題に対して生徒が新規事業として提案するという内容。今年から始まった活動で、2月には『鴻巣市文化センター クレアこうのす』での発表会も行われた。

 他にも伝統行事である駅伝など様々な取り組みがある桶川の野球部のオフシーズンに迫った。

■県大会出場へ、不安を抱えた船出

 県大会出場に向けて新チームを始動させた桶川。「1つ上の先輩とは実力に違いがあり、まとめれば先輩たちを超えられるのか」ということを主将の田島康太郎は常に考えながらチームを牽引。旧チームに出場していたのは2人だけだったため、実戦形式の練習や練習試合を多く組みながら実践経験を積みながら成長をしてきた。

 その中で1つチームカラーとなったのが「守備からリズムを作る野球」だと田島主将は語る。
 「ピッチャーがストライク先行で投げて、野手が球際に強く併殺プレーもしっかりできることで、リズムを作ることが出来ました。それが攻撃にもつながって、打撃でも長打や連打が出るようになりました」

 また大会が近づくにつれて、チーム内の雰囲気にも緊張感が走ってきた。「最初は全然ダメで、『秋勝てるのかな』と危機感はありました」と大きな手ごたえを感じていた田島主将にとって印象深い試合が予選で対戦した東農大三だ。

 「1つの先輩の飯島一徹さんが同じ中学で、その人の後輩たちがいるので『強いのかな』と思っていたんです。同級生も主軸で活躍しているので個人的にやりにくさも感じていました」

 練習試合、新人戦でも勝つことが出来ず、不安を抱えていた田島主将。しかし、「チームの雰囲気が落ちると思っていましたが、逆に『絶対に勝とう』となっていた」と良いムードで試合に臨むことが出来た。


一塁側のネットに掲げられた「練習ハ不可能ヲ可能二ス」の横断幕

■チームの躍進を支え、春先も期待のキーマン2人

 試合は序盤1対1の接戦だったが、守備でリズムを作っていくと、攻撃にもリズムが生まれ、ビッグイニングなどで見事コールド勝ち。これで勢いに乗って県大会に出場することが出来た。

 そんなチームを支えてきたのが前チームからの経験者で、副将の長谷川和希とエースの水野廉介の2人だ。
 「長谷川は一緒に出続けてきて、チャンスで長打を打てますし、1番打者としてチームを支えてくれました。また自分が打てない時期で苦しんでいてもあいつが打てば自分のことのように嬉しいです。
 水野はコントロールが悪くて打たれたので頼りなかったんですが、自分たちの代になると粘り強い投球ができるようになりました。ピンチでも声をかけられる余裕もありますし、トレーニングに対しても積極的に取り組むようになり、頼もしいです」

 春先もこの2人がメインになることを期待する田島主将。桶川の躍進のキーマンに注目だ。

■目指すは8強、シード確保!

 冬場は「秋の大会が終わってからエラーから守備が乱れしまい崩れることで大量失点することがありました。その結果、打撃でも繋がらなかったです。ですので、守備を固めるために手で転がすボールを捕ったり、外野手はノックを受けたりしながら固めてきました」

 一方で、サッカー場ハーフコートにタイヤを6個並べ、押して1往復。その休憩で縄跳びをするなど厳しい練習を重ねてきた桶川。そんな桶川で気になるものが「練習ハ不可能ヲ可能二ス」と書かれた横断幕。この言葉を「桶川の伝統で残っています」と田島主将が語る。

 「守備でリズムを作って大量得点を取ることが今年の桶川野球」だと宣言した田島主将に最後に春先への意気込みを伺った。
 「個人的には東農大三ともう一度対戦したいですが、私立に恐れられる公立校として県大会8強に入って、シード権を獲得したいです」

[page_break:桶川=ダークホースと思われるような存在へ]

桶川=ダークホースと思われるような存在へ


バッティング練習をする桶川の選手たち

 ここからは桶川の副主将・長谷川和希、エース・水野廉介の2人に話を聞きました!

Q.秋季大会など、ここまで試合を通じて見つかった課題を教えてください

長谷川:秋は県大会まで進むことが出来ましたが、チーム全体で「県大会に出場ができて目標達成」という雰囲気が出てしまい、気が抜けていました。県大会が終わってからも雰囲気が良くないので、雰囲気作りが課題です
水野:結果として抑えることが出来ましたが、初球がボールになることが多く、3ボールから三振を奪うなど球数が多くなってしまったのは課題です。

Q.課題克服のためにどんなことを意識してきましたか

長谷川:自分から声を出すようにして雰囲気を作るようにしたのはもちろんですが、あとは自らの行動を速くすることで、全員の行動を早められるように意識していました。
水野:走り込みで下半身を強化してきました。あとは置きティーの上にボールを置いて、それを狙って18.44メートルくらい距離を取って投げることで、コントロールを磨きました。

Q.このオフシーズンの目標、個人的に強化したところを教えてください

長谷川:筋力強化です。部活の中でベンチプレスやスクワットの最大値を図っていましたが、それを最初は80キロできるようにするために、部活以外でもトレーニングするようにしました。そのおかげで80キロを超えることが出来ました。
水野:走り込みで下半身強化はもちろんなのですが、リストも強化しました。元々、ボールの切れ味は良い方だと思っていました。ですので、そこをさらに強化しようと思って、取り組んできました。

Q.応援する方々へ自分に自分のここを見て欲しいと言うのを教えてください

長谷川:長打が打てることです。一冬を超えて打球の質が変わってきたので、外野の頭を超すような打球でアピールしたいです。そして守備では、守備範囲を広げて、緊迫した場面でファインプレーを見せて投手を助けられるようにしたいです。
水野:まずは初球でストライクを取ること。そして得意なストレートでインコースもどんどん攻めて力で押していきたいと思います。

Q.このチームの好きなところ、または他のチームに負けていないところはどこですか

長谷川:流れが良くなればチーム全体が良い雰囲気で強豪とも戦える、雰囲気や流れの部分は桶川が他のチームに負けていないところです。
水野:とにかく部員同士が仲良くて、争いごとはないです。自主練でも教え合いますし、試合でいいプレーが出れば雰囲気は凄く良くなるところが好きです。

Q.これからの意気込みを最後にお願いします

長谷川:埼玉では私立が上位を占めていますので、公立校の桶川でも戦えることを示したいです!
水野:対戦した相手が、「桶川か」とダークホースのように思われて、恐れられるような存在になりたいです!

 長谷川選手、水野選手ありがとうございました!

[page_break:冬場で鍛えた個の力をチーム力へ!]

冬場で鍛えた個の力をチーム力へ!


松崎 真

 ここからは松崎 真監督に話を伺いました

Q.今年のチームは、新チームが始まってから、どんなテーマを持ってチームを作り上げてきましたでしょうか。

 旧チームの経験者が2人しかいなかったので不安を抱えたままでのスタートでした。そのなかで技術の基本練習だけでなくすぐに新人戦や地区予選でしたので、選手には実戦を通じていろんなことを覚えてもらえるように練習試合や実戦練習を多く入れました。初めて経験することばかりだったと思いますが、すぐに吸収してくれました。

Q.秋の大会を振り返っていかがでしょうか

 新人戦はすぐに負けてしまい、万全ではない状態で地区予選に入りました。「何とか県大会に行こう」ということで、急ピッチでチームを作っていましたが、投手と野手のピークが上手く重なって、何とか勝ち切れました。

Q.冬の練習のテーマは何でしょうか

 走攻守すべてのレベルアップが課題でした。上尾戦、その後の試合でも守備で課題を残しましたので守備力向上をしました。ただ、投手力に不安が少しありましたので、得点力アップのために打撃も力を入れました。

Q.ここまで指導されてきて、桶川の野球とはどんなものだと感じておられますか

 自分で考えて自主的に取り組むのが根底にあると思いますが、今年のチームは守備でリズムを作るチームです。

 秋の地区予選2試合ともそういった展開で、守備からリズムを作って攻撃に転じて点数を奪う。まずは守備でしっかりすることで、選手たちが落ち着いて試合に臨めたと思います。

Q.横断幕にある「練習ハ不可能ヲ可能二ス」という言葉、これはどのようなものだと感じていますか

 前の監督からのモノですが、練習をしっかりやって力を付けていこうというところだと思います。試合になれば誤魔化しは効かないので、練習をしっかり積むことで成長ができるからしっかりやろうと。選手たちにも少しずつですが、浸透していると思います。

Q.最後に、今後の意気込みをお願いします。

 まずは試合で自分の持っている力を発揮できるかだと思います。ここまで個の力は上がっていますが、チーム力としてはどうなのか。そして試合ではどうなのか。それを確認してチームを仕上げていきますが。思うような力を発揮できればおのずと勝利に近づくと思います。

 ですので、相手から嫌がられるというか、粘り負けずに何とか食らいついて試合が終わったら1点でも多く捕っていたいと思います。僅差で勝っているチームを作れればと思います。

 松崎監督、そして桶川高校の皆さん、ありがとうございました!

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今年も大好評!
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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