大舞台でも発揮した習志野の緻密な守備と走塁。すべてはタイムを意識することから始まる
初の決勝進出を果たした習志野。惜しくも東邦に敗れ、準優勝に終わったが、3試合連続の逆転勝利と劇的な勝利が続いた。大会中、勝負強い打撃、相手のスキを突き、無駄のない走塁、安定した守備を貫いた。今回は習志野の練習シーンからその原点に迫っていきたい。
習志野の基準タイム「4秒00」
張り詰めた雰囲気で行われる習志野の守備練習
習志野の練習を見て気になったことがある。それは練習の補助員が打球が飛んだ際に、「4秒01、3秒87」と叫んでいることだ。これは打球が転がってから送球が完了するまでのタイムを計っている。習志野の基準タイムは「4秒00」。クリアができなかったり、送球が乱れる場合があれば、小林徹監督からそれができない理由をピンポイントで指摘する。罵声があるわけではない。ただタイムをクリアするために無我夢中でボールに飛びつく守備練習は張り詰めた雰囲気で、取材者でも緊張してしまう。
三塁手の和田 泰征は、「足が速い選手は4秒00で走り終えることを考えていて、それまでに送球が完了させることを意識しています」と説明。また左打者のセーフティバントについては「3秒80以内」で終えることを基準にしている。習志野の無駄のない守備はタイムを意識した練習から築かれているのだ。
もちろんこれより速い3秒後半を当たり前に走る選手はいるが、まだ技術、動作のスピードが遅い高校生に対しては高い数字を求めすぎるのではなく、一般的な俊足選手の基準を設け、当たり前にクリアできるよう、練習を積んでいる。
和田は最初、苦しんだが、日々のノックや、動作の切れや体の強さを身に付けるトレーニングを積んでいたことで、動作の切れを増していき、タイムがクリアできるようになった。
「打者によって反応を早くしたり、セーフティに備えたり、打球が速い選手の場合はしっかりと待って捌くことを考えたりと、いろいろなことを考えて備えができるようになります」
ただボールを食らいつくだけではなく、タイムも意識することで、実戦に強くなる。それが甲子園で安定した守備をもたらした。
また習志野は走者二塁時、シングルヒットや相手のエラーで高い確率で本塁に帰ってくるが、もちろんこれもタイムを測っている。習志野が基準とするのは「6秒80以内」だ。何度も繰り返して、当たり前にこなせるようにする。そのクリアをするために第二リードや、スタートのタイミングを工夫を行う。右翼手の高橋雅也は「内野ゴロも、走塁も、僕らも、先輩も納得いくタイムが出せるよう練習をしていきました」
習志野の強さは簡単には動じない精神的な強さ、平常心でプレーできる強さがある。それは小林監督の巧みな選手操縦法だけではなく、タイムを意識した日々の守備練習と走塁練習で築かれた技術によっていつでも甲子園でその技術を表現できるのだ。
取材=河嶋宗一