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今年で47年目を迎える新宿シニア。チーム支える伝統の指導法と先進的な取り組み

2021.02.26

 日本選手権に8度、全国選抜大会に7度と計15度の全国大会出場の実績がある新宿シニア。チームの創立から今年で47年目を迎え、過去には北海道日本ハムファイターズの淺間大基選手を輩出した。現役の高校球児でも市川祐投手が関東一のエースとして活躍中で、昨年からは伊東幸一新監督の下、新たな体制でチームは再スタートした。

「礼儀を尊ぶ精神、団結・協調の精神、勤勉の精神、闘志・闘魂・不屈の精神」の、伝統の4つの精神を重んじる新宿シニアの取り組みに迫った。

人間力の向上を目指す伝統の指導方針

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新宿シニアの練習の様子

 伊東新監督の下、江戸川沿いの河川敷グラウンドで練習に取り組んでいる新宿シニア。高校野球での活躍ももちろんだが、社会に力強く羽ばたいていける人間の育成を一番の目標に掲げている。

 伊藤監督は指導者としてチームに携わるようになり3年程だが、かつては現役の選手たちと同じように新宿シニアのユニホームに袖を通して3年間野球に打ち込んだ。伝統である前述の4つの精神を引き継ぎ、指導にあたっている。

「中学野球、高校野球がゴールではないと思っているので、社会に出た時に力強く生きていけるように上手い下手よりも強く成長して欲しい思いがあります。勝たなくてはいけない場面もこれから出てくるかと思いますが、そこはブレずにやっていきたいなと思っています」

 そんな新宿シニアの指導に惹かれて入団を決めた選手の一人が、主将としてチームを引っ張る佐々木大翔選手だ。「人間的な成長が野球の成長にも繋がる」と感じていた佐々木選手は、体験会で挨拶や礼儀を重視する雰囲気を目の当たりにして自身のカラーに合うと直感したという。また全国大会への出場実績も追い風となり、新宿シニアで心身を鍛えることを決意した。

「このチームは野球の実力だけじゃなくて挨拶とか礼儀、道具を並べるといった、野球人として大事なことを教わることができると聞きました。自分の性格やチームのカラーが合っているなと感じて入団しようと思いました」

 昨年の夏からスタートした新チームは、投手陣中心にチーム作りを進めており、目標である全国大会の出場に向けて個々のレベルアップに努めている。中でもチームの中心となるのは、右腕の石澤順平投手だ。身長は176センチあり、キレのある直球を投げ込む石澤投手だが、体つきはまだまだ発展途上で伸びしろの大きさを感じさせる。

 また主将の佐々木選手も、打線では主に1番や3番に座り、守備でもサードやショートを任されるなど、中心選手としてチームを引っ張る。今年は最終学年を迎えますが、「秋の大会では関東大会に出場することができなかったので、夏に全国大会に出て良い成績を残せるようにこの冬を頑張りたい」と強い意気込みを語る。

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新宿シニアの練習の様子

 取材に伺ったこの日は、スプリントコーチの秋本真吾氏を招いて走力アップの練習を午前中に行った。秋本氏は、現役時代は400mハードルの選手としてオリンピック強化指定選手にも選出され、また特殊種目200mハードルの当時のアジア最高記録を樹立。スプリントコーチになってからも、これまで100名以上のプロ野球選手にスプリントの指導を行うなど、選手としても指導者としても経験豊富だ。

「年間通して見ると、プロの選手よりも小中学生に指導する方が圧倒的に多いです。昨年はコロナで少なかったですが、全国の自治体や学校を回り年間1万人ぐらいは指導を行っています」

 プロ野球選手にも指導を行ってるとあり、選手たちは慣れない動きでも真剣な表情で取り組んでいた。

 また練習では、走るフォームを作るドリルだけで無く、手押し車など基礎体力、基礎筋力を高めるトレーニングも行われた。そこには秋本氏が選手たちに伝えたいメッセージがある。

「一番は土台が全てです。正しい走り方、正しい投げ方、正しい打ち方など、カテゴリーとしては技術的なところに入ると思いますが、それを再現するためには基礎体力、基礎筋力が全てで、そこがあって初めて技術が成り立つと考えています。
その土台を強化することがまず大事で、そこをやることで僕が伝えたような技術の再現率が高まってくると選手たちには伝えました」

 この日は秋本氏によるスプリントの練習を行ったが、その他にもボールの回転数などを計測する専門家に指導を受けることもあり、伊東監督は外部の指導者を招くことに積極的だ。

「選手に足が速くなって欲しいということもありますが、色んな角度から刺激を受けて吸収する力や聞く力を養って欲しいなと考えています。様々な知識を入れることで上手くなる引出しを増やし、その中で自分で判断する力を身につければ、野球以外のところでも役に立つと思います」

 人間力の向上を目指す伝統の指導に加え、先進的な知識を積極的に取り入れる新宿シニア。この環境の中から、これからどんな選手が誕生するのかとても楽しみだ。

(取材=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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