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広陵が独走気味になってきたが、広島新庄と如水館、瀬戸内などが追う

2018.06.04

広島県高校野球を代表する広陵と広島商

広陵が独走気味になってきたが、広島新庄と如水館、瀬戸内などが追う | 高校野球ドットコム
昨夏の甲子園に6本塁打を放った、広陵出身の中村奨成(現広島東洋カープ)

 かつて広島県の高校野球は広島商と広島広陵の対決構図が大きくクローズアップされ、その間隙を縫うかのように尾道商なども出場すれば上位に進出した。

 とはいえ、広島県の高校野球というと広島商と広島広陵だった。この両雄を語らずしてはいられない。戦前から継続されているライバル関係ともいえる存在である。

 広島商の象徴的な試合は1973(昭和48)年春、作新学院・江川投手を足で攻略した試合だろう。徹底して高めの速球は見送り、四球で塁に出れば何度も何度も盗塁を仕掛けてくる。高校生としてはとても手がでないとさえ言われた江川から2安打ながら、最後は重盗で勝利をもぎ取った。結局、この大会は準優勝にとどまるが、その夏は決勝で静岡にサヨナラスクイズで勝ち5度目の優勝を果たしている。その後、88年夏にも全国制覇を果たしている。広商野球というのは、打てなくても何とかしていくというしたたかさが伝統として今も生きている。一つの作戦を徹底してやりぬく執念のような強さを内在している。

 これに対して、実績としては広島広陵がやや遅れをとっていた。ところが、ここへ来て広島商が商業校の悲哀とでもいおうか、選手獲得も含めて苦戦を続けているのに対して、広島広陵は91年春、03年春に優勝、07年夏に準優勝を果たして、全体でも優勝3回、準優勝5回という記録がある。

 中井哲之監督が就任2年目にして見事に古豪を復活させた91年以来、県内の地位も逆転していった。そして、03年春に好投手西村健太朗を擁して春だけで3度目の全国優勝を果した時には、県内ではすっかり独走態勢になっていた。近年の実績でも、13年春と14年夏に出場し、17年夏には花咲徳栄に敗れはしたものの、再び準優勝を果たしている。

[page_break: 広陵を追う私立の如水館、広島新庄と公立の広島工、西条農、市立呉]

広陵を追う私立の如水館、広島新庄と公立の広島工、西条農、市立呉

広陵が独走気味になってきたが、広島新庄と如水館、瀬戸内などが追う | 高校野球ドットコム
広陵を追随する如水館(左)と広島新庄(右)

 こうして、現実には広島商は置いておかれた感は否めない。そして代わる勢力が浮上してきている。

 その代表格としてこのところ注目されているのが如水館だ。広島商でも実績のある迫田穆成監督が指導してチーム力が上がってきた。三原工と緑ヶ丘女子商が統合されて94年に創立されたのだが、97年から3年連続で甲子園に出場している。これで一気に、広島県に如水館ありということも知らしめた。時をほぼ同じくして台頭してきたのが高陽東だった。高陽東は83年に広島市高陽ニュータウンに創立された県立校だが、広島工でも実績を挙げた小川成海監督が赴任してきて一気に躍進した。ことに、96年は春はベスト4、夏もベスト8で一気に甲子園でその存在を示した。

 もちろん、広島の野球はそれだけではない。無名の廿日市出身の山本浩二がやがて広島カープの看板スターとなってプロ球界でも一時代を形成したように、他の学校も歴史を作った。筆頭格は公立では学校の歴史としても広島商に負けないものを持つ尾道商だろう。尾道といえば大林宣彦の映画の舞台としてもよく使われている。それらの映画でものんびりとした街という印象があるが、尾道商は64年、68年と春2度の準優勝がある。小川邦和(早大→日本鋼管→読売)、山内泰幸(日体大→広島)、船木聖士(NKK→阪神)などプロ野球選手も多く出ている。

 私立では76年春に黒田投手(鋼管福山→リッカー→ヤクルト)で盤石の強さを示して優勝した崇徳が印象深い。バレーボールの名門としても有名で、世界一のセッターといわれた猫田勝敏(専売広島・故人)や西本哲雄(専売広島)らのミュンヘン五輪金メダリストに元全日本監督の寺廻太(明大→NEC)らをはじめ、日本のバレーボール界には多大な人材を送り出している。

 また、74年に甲子園に登場した盈進や、90年夏に初出場するといきなりベスト4へ進出した山陽、旧松本商の瀬戸内近大福山なども毎年チームを整備してきていた。そんなところへ新たに躍進してきたのが広島新庄だ。14年春に初出場、桐生一と延長15回引き分け再試合を演じるなど、好試合で印象づけた。さらに15年と16年夏に連続出場して、今や広島広陵を追いかける一番手といっていい存在となった。

 公立では広島工西条農宮島工など、かつて甲子園出場を果たしている実業系も踏ん張っている。17年春には市立呉が初出場を果たして開幕戦で初勝利も果たしている。

(文:手束仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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