監督なし! 学生がスタメンも練習も決めるのは当たり前! 「自由」「主体性」「ハイレベル」それが準硬式の現場だ!<田中裕毅の『準硬ドットコム』第3回>
多様なチーム運営方法
野球チームにはプレーヤーである選手がいて、監督やコーチなど指導者がいる。
と、当たり前のことを綴ってみたが、大学準硬式ではそんな常識は通じない。チーム運営は学生たちが中心なのだ。選手間でサインを出したり、スタメンやメンバー交代を決めたりするのも日常茶飯事。大会運営も学生が積極的にかかわっているのだ。
言うまでもなく大学準硬式は、サークルや草野球のレベルではない。全日本大学準硬式野球連盟は、213大学270チームが加盟する全国組織だ。75年の歴史を誇り、全国大会も開かれている。プロ野球選手も今年のオリックスに5位指名された明治大準硬式出身の高島 泰都投手(滝川西出身)など、たびたび輩出。今年は大学卒業後、独立リーグでプレーする中京大準硬式の道崎 亮太投手(東邦出身)など、再び硬式の世界の一線に戻る選手も多い。
準硬式のチーム運営は実に多様である。硬式野球部のように、推薦で選手が入部してくるようなチーム、高校野球のような指導者のいるチームもある。一方で学生たちがすべてを運営する、というチームもある。その中間にあたる、指導者はいるが毎日は関わらないチーム、監督が試合中のサインだけは出すチームなんかもあるのだ。
学生主体チームで全国制覇
この学生主体チームがけっして弱いわけではない。全国大会にも出場しているのである。
実際、私が活動した日本大学三崎町がそうだった。基本は学生主体で運営。試合の時に指導者が来て采配する状況だった。
私の入部当初は新関東リーグ1部に昇格したばかり。春は入れ替え戦に回ってしまうなど、2部降格の心配をするような状況だった。
しかし、2年時、チーム全体で「優勝しよう」という目標を掲げた。選手同士でチーム運営方針を固めて、練習時間を増やした。結果、その年の1部では春秋優勝、さらには全国大会ベスト4進出。3年生でも全国大会出場と、たった1年でガラリと結果が変わったのである。
また、学生主体のチーム運営で全国制覇を成し遂げたチームもいる。2021年の清瀬杯第53回全日本大学選抜準硬式野球大会で優勝したのは東海大札幌校だ。その時の主将・平澤輝はチーム運営についてこう語っている。
「もちろん同級生などの意見を取り入れながら、うまくまとめています。でも、監督がいないので、どうしても“我”が出てしまい、まとめられないときもありました。そこをまとめるのが自分なので、そこは難しいと思います。
ただみんなで楽しく、チーム全体で雰囲気よく野球をすることが出来るところが、学生主体、もっといえば準硬式の良いところだと思っています」
学生主体で自由だからこそ、チームを強くすることもできれば、弱くすることもできる。自分たちの意志1つで、さまざまなことに挑戦できる場が準硬式なのだ。自由だからこそ楽しく、そして厳しい。それが準硬式という魅惑の世界である。
昨今、学生スポーツの現場での行き過ぎた指導がたびたび問題となっている。学生自らが考え、行動できる準硬式球界の部員数がいま増え続けているのも納得である。
取材・文/田中 裕毅(準硬式野球評論家)
小学3年生から中学生までは軟式野球。高校での3年間は硬式野球をプレー。最後の夏は控え捕手でベンチ入りを果たす。
大学から準硬式野球で3年間プレー。大学2年、3年生のとき、チームは清瀬杯大会に出場し、自身はベンチ入り。さらに3年生の1年はチームの主務として、選手登録やリーグ戦運営に携わる。特に春季リーグはリーグ委員長として、試合日程の調整をはじめとした責任者を任される。