【甲子園】1回戦 土浦日大 vs 上田西
土浦日大-藤本士生
ワンプレーの大事さ痛感、タイブレークの「怖さ」が勝敗を分け、土浦日大が37年ぶり夏勝利
<第105回全国高校野球選手権記念大会:土浦日大8ー3上田西(延長10回タイブレーク)>◇6日◇1回戦◇甲子園
今大会の幕開けから、大激戦となった。土浦日大(茨城)、上田西(長野)両チームともに力を出し切った接戦は、延長10回タイブレークの末に、土浦日大に軍配が上がった。1986年以来、実に37年ぶりの夏甲子園の勝利だった。
土浦日大は松田 陽斗内野手(3年)の大会第1号で先制するなど序盤で2対0とリード。しかし、上田西も適時打とスクイズで同点として前半を終えた。
その後、ともに投手陣が踏ん張って、ピンチを招きながらも得点を許さず延長戦へ突入。10回の攻防がスタートしたが、ひとつのプレーが大きく勝敗を分ける。そんなタイブレークの「怖さ」を痛感した。
守りについた上田西側から10回表を振り返りたい。バントの構えを見せた土浦日大3番の先頭打者・後藤 陽人内野手(3年)に低めの直球でフライを上げさせ、岩下 俊輔捕手(2年)のファインプレーで1死。走者を進めさせない作戦が成功する。上田西からすれば流れがこちらにきたと思ったかもしれない。しかし暴投で、二、三塁に走者を進めてしまう。その後、四球を与えて、1死満塁に。ピンチは広がったが、塁は埋まって守りやすくはなった。野手陣もそう思ったはすだ。その後、安打を許して1点は奪われたが、1点ならまだ逆転のチャンスはある。次打者で思惑通りに投手への強いゴロがきた。滝沢 一樹投手(3年)は迷わず本塁併殺を狙う。しかし、送球がややそれた影響でアウトは本塁だけ。そして、その後に悪夢の5連打を浴びてしまう。併殺を完成させていれば、1点で10回表を終えていた。1度、打線に火がつくとそれを止めるのは難しい。やはり、あの併殺で終わらせておくべきだった。大事にいこうと思ったのが少し災いしたのだろうか。
逆に土浦日大は「まずい」と思ったはずだ。タイブレークでは先攻チームが1点だけで終わることは、「負け」の確率を上げてしまう。バントで送れなかったが相手のミスで走者が進んだ。併殺で終わったと思ったらミスをしてくれた。まさに命拾いだった。土浦日大はその「運」を結果に結びつけようと、たたきつけた打球でのヒットなど、気持ちの入った打球で次々と得点を生み出し、勝利を決定づける6点を奪った。
1イニング6点をはね返すのはやはり難しい。上田西の10回裏の攻撃は1点に終わった。タイブレークは点の奪い合いでもあるが、いかに守るかも重要となる。そんなことを感じさせた試合だった。
振り返れば、土浦日大のエース・藤本 士生投手(3年)の絶妙なコントロールには驚かされた。低めへ微妙に変化する変化球で打者のタイミングをずらし、ひょうひょうと投げていると思えば、ズバッと内角直球で勝負していた。上田西の打線は振りが鋭い打者が多かったが、思うような打撃をさせず、先発して8回途中までは6安打2失点に抑えた。エースの踏ん張りなしでは、この激戦での勝利もなかっただろう。