試合レポート

大宮南vs聖望学園

2023.07.12


昨夏覇者・聖望学園初戦敗退。Cシード・大宮南が競り勝つ!

<第105回全国高校野球選手権埼玉大会:大宮南2ー1聖望学園>◇11日◇2回戦◇県営大宮

 灼熱の県営大宮球場、第2試合は昨夏覇者・聖望学園が登場。相手は好投手・高山 寛大投手(3年)を擁し、今春旋風を巻き起こした機動力がウリのCシード・大宮南である。

 先発は大宮南がエースの高山、一方の聖望学園は2年生左腕・向深澤 要投手が登板し試合が始まる。

 先制したのは大宮南であった。先頭の今井 理仁外野手(3年)がセーフティーバントを決め出塁すると、すぐさま二盗を決め無死二塁とする。続く海北 圭太内野手(3年)がきっちり送り1死三塁とすると、続く続く菊地 優真外野手(2年)の二ゴロで三走・今井理が「ゴロGO」を決め幸先良く1点を先制する。

 対する聖望学園は3回表、この回先頭の近藤 奨悟捕手(3年)が中前安打を放ち出塁するが、続く向深澤の送りバントや1番・齋藤 千風内野手(2年)のセーフティーバントが決まらず2死一塁となる。それでも続く坂田 悠綺外野手(3年)のところで聖望学園ベンチはエンドランを仕掛けると、これが決まり坂田が右前安打を放ち2死一、三塁とするが、3番・柳 京四郎外野手(3年)のところで一走・坂田が二盗に失敗し無得点に終わる。

 聖望学園は4回にも1死から4番・百済 廉矢内野手(3年)が四球を選び出塁すると、続く清遠 知輝外野手(3年)のところで聖望学園ベンチはエンドランを仕掛ける。清遠はこれに応え右前安打を放ち1死一、二塁とする。ここで6番・中條 和也内野手(2年)がセーフティー気味に送り2死二、三塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。

 なかなか追いつけない聖望学園に対し、大宮南は5回、この回先頭の高山が左前安打を放ち出塁すると、続く山田 文徳外野手(3年)が三振する間に高山が二盗を決め1死二塁とする。ここで大宮南ベンチはさらに仕掛け、8番・深津 優希内野手(3年)のところでエンドランを仕掛ける。これが見事に決まり、深津は左前適時打を放ち2点差とする。

 2点差とされた聖望学園はここで向深澤を諦め井上 大仁投手(3年)へスイッチし、すぐに反撃を開始する。

 6回、1死から代打・小泉 三四朗外野手(2年)が右前へポトリと落ちる安打を放ち出塁すると、続く百済がきっちりと送り2死二塁とする。ここで5番・清遠が左前適時打を放ち1点を返す。

 突き放したい大宮南はその裏、この回先頭の海北が中前安打を放ち出塁するが、続く菊池が送れず、1死後4番・越石 遥也内野手(3年)の二ゴロの間に一走・海北が二塁へと進み2死二塁とする。続く中川 昭蔵内野手(3年)が四球を選び2死一、二塁とチャンスを広げるが、6番・高山は一、二塁間へヒット性の打球を放つも打球は走者に当たり無得点に終わる。

 大宮南は7回にもこの回先頭の山田文が右中間へ三塁打を放つと、1死後9番・中嶋 優人捕手(3年)のセーフティースクイズは相手バッテリーのフィールディングに阻まれ本塁憤死し後続も倒れ、またしても無得点に終わり、大宮南に嫌な流れとなる。

 そして迎えた最終回、アクシデントが発生する。

 これまで好投してきた大宮南・高山は最終回の投球練習中、熱中症により全身を攣り続投は不可能となる。急遽マウンドには越石が上がる。

 千載一遇のチャンスを迎えた聖望学園は、大宮南・越石の立ち上がりを攻め、この回先頭の中條が左前ヒットを放ち出塁するが、続く「ピンチバンター」の松崎 悠大外野手(3年)は送れず三振に倒れる。

 それでも、1死後、一走・中條が二盗を決め1死二塁とするが、8番・近藤のところで聖望学園ベンチはエンドランではないが走者を動かす形を取った。これが、結果二走・中條のスタートも遅く三振併殺ような形になり万事休す。

 Cシード・大宮南が昨夏の覇者・聖望学園を2対1で競り勝ち初戦を突破した。

 大宮南の高山は「試合を作って後半勝負の気持ちでしたが、持ち味が出せた。小学生の時同じチームの清遠には(3安打は)やられましたが。実力は相手の方が上なのでチームとしてどう勝つかを意識した」と振り返った。そして中嶋捕手は、「最終回は先頭が出て正直終わったと思っていた。高山は球の質が良かった。自分達の力を出し切ればいいぐらいの気持ちでした。相手は振ってくるので外野フライを打たせる投球を意識した。相手に臆することなくいつも通りの戦いができた」と振り返ったように、バッテリーの勝利でもある。

 「一生懸命やった結果です。初回は狙い通りです。少ないチャンスを物にできました。今日はバッテリーを褒めてあげたい。しっかりリカバリーをして次に臨みたい」と蓜島監督。初戦の硬さやシード校としての受け身の姿勢も特に見られず、今春同様に初回から持ち味である機動力を見せつける形となった大宮南。悲願の上位進出へまずは大きな1勝を飾った。

 一方の聖望学園の飯牟礼監督は「遅い球に対する呼び込んだバッティング練習はしてきました。夏の大会でバントができないチームは勝てない。それを補うようにエンドラン仕掛けたりして次の打者が補う形はできていた。ただスコアリングに進んだ状態でたたいてほしいと日頃から言っていたが、なかなかそれができなかった。鍛え方が足りなかったと私自身も反省材料です。とはいえ、全国で一番葛藤した子たちだったと思う。申し訳なかった」と、反省の弁を述べた。この日は相手を上回る9安打を放ちながら要所でバントが決まらず得点を奪えなかった。ただし、問題はそれだけではない印象を受ける。

 飯牟礼監督体制に変わったばかり。しかも考え方も前任者とはガラリと変わり自主性を重んじる監督。ただし、顔と名前も一致しない状態で戦い敗れた今春と違い、今大会は数ヶ月という短い期間ではあるが時間はあった。だが、「監督が代わってうまくかみ合わなくて雰囲気も上がらなかった」「監督と意見が割れることもあったが、大会1週間前に互いの考え方を話し合った」と、結果的には監督、選手双方の話を聞く限り、現状は一枚岩ではなかったようだ。特に、自主練禁止や学年毎の練習など考え方の相違の部分で短期間だったこともあるが、擦り合わせるまでには至らず、その結果がこの日の試合に現れてしまったか。幸い、センターラインの2年生が残るだけに今度はじっくりと話し合い、同じベクトルを向き、秋以降の巻き返しに期待したい。

取材=南英博

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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