関東一vs工学院大附
関東一が誇る強打の捕手の一打で逆転勝ち 苦しみながら初戦突破
関東第一4番衛藤冴仁
<春季東京都高校野球大会:関東一6ー2工学院大附> ◇2日◇1回戦◇江戸川区
先発の畠中 鉄心投手(2年)は、直球、変化球のコントロールともに良く緩急が使える。畠中をリードする女房役はチームの主軸選手でもある衛藤 冴仁捕手(3年)だ。
対する工学院大附の先発、エースの大友 伸晃投手(3年)は身長180センチほどのサイドハンド投手。
試合は関東一が勝利したものの、両校とも11安打を放つ打撃戦だった。
2回裏に関東一が2点を先制。直後の3回表、工学院大附がすぐさま2点を取り返し試合を振り出しに戻す。試合が動いたのは5回裏、関東一が2死から2番・小島 想生内野手(2年)、3番・松山 慈桜外野手(3年)が四球を選び2死一、二塁となり、チームの主軸である衛藤に打席が回る。1、2打席と自分のスイングができていなかったが、この3打席目で右翼への三塁打を放ち、2死から2点をもぎ取った。その後、7回、8回と1点ずつ追加して、9回はエースである坂井 遼投手(2年)が2死から四球を出すも最後の打者を二ゴロに打ち取り勝利を収めた。
関東一の米澤監督は「今日の試合はどちらに転んでもおかしくない試合展開で、相手チームの雰囲気は1回から試合終了する9回まで落ちることがなかった。このような試合展開をモノにできたのはチームとしてもプラスに働くと思う。でも、チームとして細かいところの部分はできていなかったため、次の試合からはそこを修正することを含め、上手く試合を運びたい」と振り返った。
決勝打を放った衛藤は「工学院大附さんは、初回から先発の畠中の投げる球を絞ってきていると感じ取ったため、初回から出し惜しみせず、変化球もストレートも内・外に投げ分け緩急もつける投球をし、結果的3回表に2失点し、8回までに11安打されたものの、打たせて取る投球で守備からのリズムで攻撃を迎えられて試合を勝ち切ったことがよかった」と話した。
どうして関東一を苦しめることができたか 工学院大附が取り組んだオフシーズンの過ごし方
工学院大附・大友 伸晃
<春季東京都高校野球大会:関東一6ー2工学院大附> ◇2日◇1回戦◇江戸川区
試合には負けてしまったが監督、選手も「大きな収穫を得られた試合となった」と語っていた工学院大附。雨宮監督は「乱打戦に持ち込めたことは良かったけど、もう一つチームが頑張りきれなかったことが勝敗を分けた」と語った。さらに、ここまで力をつけられた理由を聞かれ、雨宮監督はこう説明した。
「チームの中で『体の準備・心の準備』などたくさんの段取りがあり、全てやり方が決まっていて、一人一人の意識が高く、しっかりと準備ができているため、パフォーマンスの向上につながっている。今年の冬は全体練習もやるけど、選手一人一人が考えてやってほしいこともあって、私が代表を3人選び、その3人がドラフト形式でまた選手を選び3チームを作り、その3チームそれぞれに自分たちに合った練習をするように伝えて、週末には試合をする」といった他の高校ではやらない練習方法に取り込んだという。その結果「一人一人考えて練習をする環境を作って、毎日新しい新鮮な練習ができるため、選手がより野球を愛し、好きになり一人一人の力が上がり、結果チームとして1段階、2段階もパフォーマンスの向上に繋がった」と熱く語った。
先発7回5失点も、打たせて取る投球を見せた大友は「今日はストレート、変化球のコントロールを意識し、浮かないよう投球ができたけど、5回から球が浮いてしまっている部分も出てきて、体力も落ちていってしまった。夏までには今日の試合で見つかった課題や、スタミナの向上と、決め球であるストレートとスライダーの球威、精度を上げたい」と奮起を誓った。
大友は昨年秋までオーバーハンドの投手だった。昨年の11月からフォームに対して悩んでいて、雨宮監督からフォームを「一からではなくゼロから作ってもいいんじゃない?」とアドバイスをもらった。ここから雨宮監督とマンツーマンで冬の期間だけで作り上げたサイドハンドのフォームで今大会に挑んでいた。最後の夏の大会までに、どのように進化していくか楽しみだ。
関東一は順調に行けば優勝候補である東海大菅生と4回戦で当たる。しかし、上を見ると足元をすくわれる可能性がある。一戦一戦確実に勝利をつかみにいく姿勢を期待する。
(取材=鎌田 光津希)