常葉大菊川vs津商
細かい点の取り合いの試合は、常葉大菊川が辛くも津商を振り切る
粘りの投球だった常葉大菊川・久保綾哉
<第75回秋季東海地区高校野球大会:常葉大菊川5-4津商>◇23日◇準々決勝◇草薙総合運動場
前日の1回戦で、市立岐阜商(岐阜)に快勝した津商(三重)が、静岡県1位の常葉大菊川に挑む準々決勝。初戦後は、「県大会から、チームとしても成長していることが感じられる」と、宮本健太朗監督も語っていたように、勢いに乗っている津商。それだけに、これが初戦となる常葉大菊川としては受けて立たないように行きたいところであろう。
初回、常葉大菊川は先頭の勝亦 望向外野手(1年)が連投となった津商・松田 空知投手(2年)の立ち上がり、機先を制すかのような左越え二塁打を放つ。続く鈴木 徠空外野手(1年)の内野安打で、一、三塁とし、死球もあって1死満塁となったところで、5番・佐藤 稜太内野手(2年)が中犠飛を放って先制する。2回にも常葉大菊川は死球の走者がバントと失策で進んで1死一、三塁から1番・勝亦の中犠飛で2点目。
これに対して津商も3回、先頭の杉本 鼓太郎外野手(2年)が三塁線を破る三塁打を放つと、樋尾 龍誠捕手(2年)の二塁ゴロの間にかえって1点を返す。さらに5回、津商は德田 真哉内野手(2年)が右前打と後逸で三塁まで進むと、続く樋口 雄斗内野手(2年)も左前打して同点とした。
しかし、常葉大菊川もその裏、四球と盗塁で進め、岩﨑 匠悟内野手(2年)が右前打で繋いで一、三塁として、1死後、佐藤が、この試合チーム3本目の犠飛で3点目。
こうして細かい点の取り合いが続いていくが、6回にも津商は先頭の1番・野島 煌外野手(2年)が中前打で出ると捕逸で二塁へ進み、上林 基良外野手(2年)のバントは悪送球を誘い、二塁走者は本塁までかえって、再び同点。津商もしっかりと追いかけていく展開。まさに、細かい点の取り合いの展開で、どちらが抜け出るかというところでもあった。
その裏の常葉大菊川は2つの内野失策で1死一、二塁となったところで、1番・勝亦が中越え二塁打を放ち2人を返す。常葉大菊川としては、初めて適時打が出たのだが、これが貴重な2点適時長打となった。
それでも追いすがる津商は8回、死球からチャンスを作って、1死満塁から樋尾の中犠飛で1点差とした。しかし、津商としては、あと1点が届かず及ばなかった。
常葉大菊川はエースナンバーを背負っている福住 柚稀投手(2年)がコンディション不良で投げられないという状態だったので、石岡諒哉監督は、前日から背番号10の左腕・久保 綾哉投手(1年)には「最後まで託すから踏ん張って投げて行こう」ということを伝えていたというが、久保は最後まで粘り強く投げ切った。「東海大会は甘くないということは覚悟していたのですけれども、ウチ本来の野球ではなかったかもしれませんが、結果的には1度もリードされなかったことが大きかった。何かやってくれるだろうと期待して起用している1、2番の1年生も起用に応えていい働きをしてくれた。鈴木 叶(捕手=2年)が打てない中で、その次に置いた(佐藤)稜太が、いい働きをしてくれたのも良かった。久保も、9回を投げ切ってチームを勝たせられたということで、よく投げたと言っていいでしょう」と、石岡監督は、苦しい戦いの中でも、いい点を見出して選手たちを称えていた。
あと1歩、及ばなかった津商の宮本健太朗監督。「頑張った選手たちを、上手く導いてあげられなかった。私の責任ですね。結果としては、あと1本出ていれば…、という場面がいくつかあったと思うのですが、そこで出せなかったですからね」と悔いた。それでも、樋尾主将を中心としていいまとまりを見せたチームに関しては、「いいリーダーシップを示して、引っ張って行ってくれている」と評価していた。今後の、さらなる飛躍も期待できそうなチームである。
(取材=手束 仁)