海城vs堀越
偏差値70超の進学校・海城がシード校撃破 制限された練習環境が強さを支える
ハイタッチをする海城バッテリー
<秋季高校野球東京都大会:海城6-5堀越>◇15日◇2回戦◇江戸川区
都内でも有数の進学校として知られる海城が、12安打と打線を繋ぎ、シード校・堀越を破った。
2対2で迎えた5回に7番・小田 周内野手(2年)の一打などで3点を加えて主導権を握ると、5対4で迎えた7回には3番・樋口 航介内野手(2年)がこの試合5本目の安打となる適時打を放った。6対4とリードを広げると、最終回に1点を返されたが、6対5で何とか逃げ切った。
「金星だと思います。実力は堀越さんのほうがあったと思います」
試合後、海城の指揮官・梶監督は、シード校撃破に驚きと嬉しさを感じながらも、落ち着いた声色で語った。終わってみれば、堀越の6安打に対して、海城は12安打。各打者の体格、スイングを見ると、堀越のほうが力はあった。それでも海城打線の方が活発だったのは、平日練習を通じて「予習&対策」ができたことにあった。
初戦の都立日比谷戦を終えてから、新型コロナウイルスの影響で練習に制限がかかり、全体練習が再開したのは試合2日前の13日から。「時間かけてやりたいことはあった」と梶監督の中では、初戦を終えてから走塁をはじめ、確認しておきたいことが山積みだったが、思わぬ形で制限がかけられた。
普段から平日練習は2時間半程度で、校庭を活用した全体練習も3日間ほどと、他の学校に比べて練習量では劣っていた。そこに新型コロナウイルスの影響で練習制限となっては焦るところだが、「いかに質を高められるか。練習密度を高めることを大事に取り組んできました」と樋口が話すように、足りない練習量を密度で補ってきたことを今回も実践した。
1つの練習メニューに対して目的意識をしっかりと持ち、やるべきことを明確にしてきた。堀越との試合に向けても「できることだけに絞ってやろう」と決めた。「左投手の変化球対策でマシンをカーブに設定して、ストレートを意識しながら逆方向へ打つように意識しました」。樋口をはじめ、選手たちはあらかじめ狙い球を絞って、対策を講じてきた。
「初見では対応が難しいですが、どんな変化をするのか見て、慣れてくれればと思って練習しました」と「予習&対策」をして臨んでいた。直球に対しては、チームにサウスポーがいないため、選手たちの方でも打席の立ち位置を変えたり、コースを絞って徹底的に練習しながら、左投手特有の角度をできる限り準備してきたことを、試合中に軌道や配球などをベンチ内で情報共有。その場で修正して、対応した。
二塁打を放った海城・樋口 航介
その成果を大いに発揮したのは、2本の適時打を含む5安打を放ち、1回戦から8打席連続ヒットを記録した3番・樋口だ。
都大会直前で梶監督から「インサイドアウトを意識するように指導された」という打撃フォームは、トップの時にバットのヘッドが投手方向に倒れるものの、スイングはシャープで無駄がないため、確実に捉えられていた。
かつ、インサイドアウトで振りだせていることで、「振り遅れても内側から出せていて捉えるので、球を見極める時間があり、チームで徹底していた低めの変化球を捨てることを実行できた」と話し、有利なカウントから甘い球をはじき返した。
秋季大会は週末に試合があるため、平日練習を調整と対策にあてることができる。勝ち上がるごとにチーム力が増していく時期でもあるが、海城の場合は時間と場所に限りがあるからこそ、「練習には迷いがないです」と逆境も、うまく生かしてチームは強くなっている。
梶監督が海城に赴任して初めて秋季東京都大会で2勝を挙げた。「全員が諦めずに、気を抜くことなく戦い抜けた結果だと思います。嬉しいです」と選手たちを讃えたが、「次戦も挑戦者のつもりで戦います」とすぐに気を引き締めた。3回戦は再びシード校の桜美林との戦いに注目される。
敗れた堀越の小田川監督は「これまでは、やってきたことができなかった」と悔やむと、主将の草場 陸捕手(2年)も「徹底事項を守れずに、『何とかしよう』と欲が出てしまった」と普段とは違う戦いになってしまったことを反省していた。
夏休み期間中、新型コロナウイルスで思うように練習が積めず、経験不足が懸念事項だったが、海城戦でそれが浮き彫りになった。冬のトレーニングを通じてどれだけのチームに仕上げてくるのか。
(記事=田中 裕毅)