都立片倉vs青稜
都立片倉のエース高橋 ケガから横手投げに活路を見出す
都立片倉先発・高橋利季
<秋季東京都高校野球大会1次予選:都立片倉16-0青稜(5回コールド)>◇4日◇1回戦◇片倉高校グラウンド
都立片倉が16対0で青稜を下した。5回10安打に加え相手のミスもあり、初回から得点を重ねて主導権を握っての勝利のなか、エース・高橋 利季投手(2年)の好投が光った。
3回までランナーを1人も出さない完ぺきな投球。4回には初めてランナーを背負ったものの、落ち着いた投球で、青稜にホームを踏ませなかった。
セットポジションからしっかりと軸足に重心を乗せつつ、左半身で壁を作ると、最後に鋭く右腕を振り抜いた。肘をしっかりと立てて投げる右サイドハンドだが、時折、腕の高さを落としてアンダースロー気味の位置から振り上げるように投げるシーンもあった。試合中に器用に投げ方を使い分けることで、同じ直球でも軌道や球威の違いを作り、ピッチングに幅を持たせていた。高橋も「同じ球種でも軌道が変わるので、相手打者の雰囲気や表情を見て使い分けています」と状況に応じて、意図して投げている。
元々はオーバースロー投手だった。巨人・中川 皓太投手(広島山陽出身)を参考にして、自身のイメージするフォームを求めているが、入学したころは肩、肘への負担が大きい投げ方だった。2年生になってからは腰にも疲労が溜まってくるなど、大きなけがには至らずとも回復にも時間がかかり、大事を取って離脱することも頻繁で、安定して投げるにはフォームの見直しが必要だった。
体への負担が少ない投げ方を探す過程で、指揮官・宮本監督のアドバイスで腕の位置を下げた。自分のなかでどんなフォームがいいのか、明確にイメージをもって投げ込みつつ、チームメイトが指導を受けている話を聞いて取り入れていくことで、サイドスローやアンダースローといった投球フォームが身についた。「投げ方が違うだけで、負担のかかる部位が変わった」など、ケガと向き合ってきた高橋にとってフォームにバリエーションを持たせたことで、安定して登板できる目途が立ってきた。
青稜戦でもあらゆる投法から、最速130キロ後半の直球やスライダーを駆使して抑えた。相手打者をまさに「幻惑」させた。178センチ、66キロとまだ細身で、直球の切れはもう少しのところもあるが、アウトコースを軸に両コーナーにしっかりと投げ分けができる点など、試合を作れる安心感があり、エースにふさわしい投球だった。
また、宮本監督が「頭のいい選手です」と話すように、マウンドで考えて投げていることも魅力だ。次の目黒日大に勝利すれば、都大会への出場が決まる。変幻自在、クレバーな右腕・高橋の快投が楽しみだ。
青稜は1安打に封じ込められ、反撃のチャンスが作れなかった。指揮官の南監督も「勝つならロースコアで競り合わなければいけなかった」と序盤で点差を付けられたことを悔やんだ。主将の押鐘 惇内野手(2年)も、「今年は守り勝つチームなので、接戦に持ち込みたかった」と守備から崩れたことを悔やんだ。2022年の春は都大会の切符をつかんだ。次の春も都大会に出るために、一冬越えて守り勝つ野球を確立して、予選突破を目指す。
(記事=田中 裕毅)