都立上水vs都立杉並
今やれることをきっちりとやり切った都立上水が、8回の大逆転で都立杉並を下す
8回、大反撃ののろしを上げた2ランを放った上水・田中
<秋季東京都高校野球大会1次予選:都立上水12-8都立杉並>◇4日◇1回戦◇佼成学園グラウンド
この夏は、ともに初戦で敗退してしまった両校。都立上水は登録部員数もフルに至らないという状況ではあるが、そんな中で、新チームがスタートしてきた。ただ、この日は主将を体調不良で欠くという苦しい戦いに挑まざるを得なかった。都立杉並も、夏は早大学院にコールド負けしているだけに、新チームとしてはまず一つ、公式戦で勝利したいというところであろう。
チームとしては未完成ということは、どちらも否定できないところであろう。だけど、そうした中で、「今の自分たちができることを精いっぱい一生懸命やって行こう」という姿勢が、都立の中堅校同士の戦いには、溢れていたように感じられた。
7回までは、取って取られて、また取って、取られてという展開で、落ち着かないと言えばそうかもしれないけれども、どちらも、最後のところでよく守っているなという印象もあった。こうして都立杉並が1点リードで迎えた8回、都立杉並は1番からの好打順だった。
長町が四球で出ると、バント後、申告敬遠で1死一、二塁。4番岡田が意地の右前打で二塁走者をかえす。さらにバントで二、三塁として四球で満塁になると、7番桑原の一打は遊撃への内野安打となってこの回2点目。8回での3点差は、都立杉並にとっては、大いに優位な展開かと思われた。
ところが都立上水は諦めなかった。8回裏は6番からの打順だったが、森谷が中前打すると、続く田中のジャストミートで捉えた打球が左翼越えの2ランとなった。これで、たちまち1点差。こうなると都立上水も勢いづいてくる。
8番新海が死球で出ると、続く浅野が相手に読まれている中でもセーフティーバントを決めて一、二塁。1番江里口がバントで進めると、1死二、三塁から島田の打球は三塁へのボテボテながらも内野安打となり、ついに同点に。なおも一、三塁から相手失策もあって1死満塁となったところで、最も頼れる4番三枝が右前へ痛烈な適時打を放って逆転。二塁走者は本塁で刺されたものの、その後はいささか動揺した都立杉並の2人目・坪田が制球に苦しんで、4連続四死球でさらに2点が追加された。
この回だけで、都立上水は打者13人で7点を奪っての大逆転。ベンチからは、「持っている者は、すべて出せ」というような支持の声が飛んでいたが、選手たちはまさに、それに応えきったという形だった。こうして、都立上水としては思わぬ形での勝利への展開となった。
必ずしもベストの状況ではなかった都立上水だったが、凌いで凌ぎ切っての逆転勝利で、湯原功久監督も、「ほとんど試合で活躍したことないような8番、9番の選手たちが自分のやれることを精いっぱいやって活躍してくれたことが嬉しい」と目を細めた。先発した橋本にしても、リリーフした三枝にしても、打線では中軸を任されているが、いずれも内野手。湯原監督は、「何とかよく投げてくれた」と称えていた。
都立杉並としては、8回までは、ほぼ勝てる流れだったのだけれども、最後に抑えきれなかったところが響いた。しかし、2回の相手のミスに乗じて果敢に攻め入って3点を奪っていく攻撃スタイルなどは、しっかり練習をしてきているなという印象を十分に感じた。
(記事=手束 仁)