試合レポート

大府vs日本福祉大付

2022.08.21

知多地区の雌雄を決する対決は、大府が緊迫の投手戦を制し県大会進出

大府vs日本福祉大付 | 高校野球ドットコム
大府・長野晴太君

<秋季愛知県大会知多地区2次トーナメント:大府1-0日本福祉大附>◇21日◇準決勝◇阿久比スポーツ村野球場

 知多地区は、4ブロックに分かれた1次リーグで上位2校になった8校で県大会出場の5枠を2次トーナメントとして争う。トーナメントは敗者復活もありだが、この準決勝で勝てば、県大会進出は決まる。ということで、まずはここで勝って、秋季県大会進出を決めたいところだ。

 昨夏の大会では、大府はベスト4、日本福祉大附はベスト8に進出して、知多の雄としての存在感を示した。この夏は、お互いにもうひとつ結果を残せなかっただけに、この秋は、知多の雄としてはやはり負けられない戦いとなっていく。

 大府は、東浦で実績を上げた中嶋勇喜監督が、この4月から異動してきて就任した。知多地区唯一の甲子園経験校でもあり、その伝統を担っていくことにも、身の引き締まる思いのようだ。

 一方、日本福祉大附は、かつて鹿児島県の神村学園を何度も甲子園に導いた山本常夫監督が就任して以降、チーム力が上がってきた。知多半島の先端から、甲子園出場を目指してチームを鍛えている。

 日本福祉大附は間瀬、大府は1年生の長野、ともに背番号1を背負う投手が先発した。どちらも制球がよく、早いカウントで相手打者を追い詰めていくテンポのいい投球でもあった。

 3回に、大府は9番石田が中前打で出ると、1番椙村が四球を選んで一、二塁。さらに押谷の三塁へのバントが内野安打となり、大府は無死満塁と絶好のチャンスを得る。ここで、3番田村は左犠飛を放って先制した。しかし、その後は間瀬も大府の中軸をしっかりと抑えて1点止まり。日本福祉大附としては、よく1点で堪えたというところであろうか。また、大府としては、先制はしたものの、もう少し畳みかけておきたいというところでもあったであろう。

 いずれにしても、この1点を追いかける日本福祉大附と、何とか守りたい大府。緊迫の投手戦となって試合は続いていった。お互いに、もう一つ攻めきれないという状況でもあったが、それだけ両投手がしっかりと投げていたということでもあろう。

 1対0のまま8回まで進んだ試合。日本福祉大附は、1死後、連打で一、二塁とし、併殺崩れと四球で2死満塁となる。ここで、4番伊藤と長野の勝負となったが、ここは長野が投げ勝って3球三振。ピンチにも動じない落ち着いた投球だった。

 そしてその裏、大府は9番石田が四球を選ぶと、勝負をかけて二塁へ盗塁。内野ゴロで三塁へ進み、1死三塁とする。すると、ここで日本福祉大附・山本監督は、「もうここは1点も2点も(取られたら)一緒や」ということで、2者連続の申告敬遠で敢えて満塁策とする。ここで4番竹内勝負となったのだけれども、間瀬が投げ勝って内野ゴロで本封。さらに、光松も外野飛球に打ち取り、満塁策は当たった。

 しかし、9回も日本福祉大附は攻めきれず、結局は三者凡退。大府が辛くも最少得点で逃げ切ったという形になった。

 大府の中嶋監督は、「この勝ちは、チームにとっても自信になっていくと思う。なまじ何点か取って勝つよりも、こうした僅差の試合を守って勝てるということで、チームの成長にもつながっていくでしょう」と、手ごたえを感じていたようだった。また、自分自身も、「大府という伝統校のチームで、集団の気質というか選手たちの考え方を把握できるようになってきました。夏が終わってから、選手たちと時間をかけて話し合いながら、見つめ直していく時間もありました。そんな中で、お互いの考え方や方向性を確認して把握できるようになってきたのは大きい」と、この夏休みの練習では、選手たちと指導スタッフとの意思疎通というか、いろいろなことを確認し合っていく中で、試合を通じて認識が上がっていったということもあっという。だからこそ、「こうした試合を勝てたということの意味は大きい」と言えそうだ。

 日本福祉大附も夏の大会を終えてから、新チームは次へ向けての新たなスタートという意識で取り組んでいた。ことに、今度の日本福祉大附は、昨年夏のベスト8を見て入学してきた1年生たちも多く、彼らがこの試合でも先発メンバーとして4人が名を連ねるなど、むしろ1年生を視野に入れてのチーム作りということになっているようだ。それだけに、この大会を通じて2年生たちが、「自分たちも負けてはいられないんだ」という意識をどれだけ持ってくれるかということが大事な要素になってくるというのは山本監督の考えでもある。

 この日は、1対0という試合をモノにできなかったけれども、ミスのないロースコアの野球を展開していくことは、チームとしての質は向上していくはずである。「何としても、県大会進出はしないといけない」と言う山本監督の思いもある。敗者戦に回って、そこからの浮上を狙っている。

 なお、日本福祉大附は、今週末には大阪桐蔭との練習試合も組んでいるという。他にも奈良県の名門・郡山や大阪の太成学院などとの高いレベルの相手との練習試合でチームに経験を積ませていくという。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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