富士宮東vs北杜
プロレベルの伸びを誇る最速144キロ右腕が静岡の県立校に! 練習試合で完封勝利飾る
久能樹音(富士宮東)
<練習試合 富士宮東6-0北杜>◇26日◇富士宮東グラウンド
187センチの大型遊撃手・勝又瑠偉内野手(3年)を擁する富士宮東。6月最後の日曜となった26日、清水西(静岡)と北杜(山梨)から連勝を飾ったが、北杜戦で先発した久能樹音投手(3年)が完封を達成し、夏の大会へ弾みをつけた。
最速144キロを計測する直球を軸に、緩急をつけたチェンジアップなどで北杜打線を翻弄。ノーワインドアップから動きはじめ、肩甲骨の柔軟性を生かして、右腕を背中側に入れるような大きなバックスイングで勢いを付けていくと、最後はオーバースローの高さから振り下ろす。縦回転のフォームと相まって、指にかかったときの直球は伸びすら感じられた。
それは錯覚ではなく、精密機器・ラプソードを時折活用すると、伸び具合を示す縦の変化量が50センチほどを記録したことがあるという。回転数の最高は2100で、回転効率も90%近い数字をたたき出しており、プロでもトップクラスの数字が並ぶ。指揮官の大勝監督も、久能の直球の質の高さは勝又以上に評価している。
ただ中学時代、富士シニアでは内野手。入学時に球速を測っても120キロ。その後も野手メインだったが、1年生秋に左手首を骨折したことをきっかけに投手転向。ケガで115キロまで数字を落としていたそうだが、走り込みとウエートトレーニングを通じてフィジカルを強化してきた。
さらに「監督に指導されて意識しています」という体重移動、特に左股関節を引き込むような動作を習得することで縦回転のフォームを覚えようとしてきた。
その結果、3年生になって144キロまで成長。春季大会でも静岡商、日大三島との試合でも登板し経験を積んだ。そして26日の北杜戦では6つの奪三振を記録するなど、完封勝利。伸びのある快速球を武器としたエースとして、集大成の夏を迎えることになった。
静岡の県立校に現れた逸材・久能樹音の快投に期待したい。
試合は6回終わって2対0で富士宮東がリードすると、7回に打線が爆発。5番・小澤陸内野手(2年)、さらに久能の高校初ホームランで4点を追加して勝負あり。6対0で北杜を下した。
[page_break:プロ注目スラッガー、144キロ右腕だけではない 県立校・富士宮にいる実力者]プロ注目スラッガー、144キロ右腕だけではない 県立校・富士宮にいる実力者
大谷陸斗(富士宮東)
<練習試合 富士宮東6-0北杜>◇26日◇富士宮東グラウンド
プロ注目の大型内野手・勝又瑠偉内野手(3年)、144キロ右腕・久能樹音投手(3年)の投打の要がいる富士宮東。夏の大会でも活躍は期待したいところだが、2人以外にも打線には力のある選手がそろい踏みだった。
1番に座った大谷陸斗外野手(3年)は体格こそ小柄ではあるが、鍛えられたフィジカルを生かして、パンチ力のあるバッティングを見せる。左足を上げてタイミングを取った際にバランスよいので軸足にしっかりと体重を乗せて間が取れている。スイングに行くときも軸をブラすことなく鋭く回転しており、レベルスイングで捉えているのが印象深い。
3番にいる秋山勇多内野手(3年)もポイントが近くてもフォロースイングが大きくしっかりできているので、痛烈な打球を飛ばせる。事実、7回の最終打席では、左中間へ長打を飛ばしており、広角に打てる技術があることを示した。
秋山、勝又に続く5番・小澤陸内野手は2年ながら、インパクトしてから右手の押し込みが強く、多少差し込まれても押し込んで外野まで痛烈な打球を飛ばす。さらに9番にいる窪田杏慈外野手(3年)は「上位へのつなぎ役として活躍している」というが、懐を広くしていることで、長く球を見られるようにしているのがわかった。
北杜戦では出塁できなかったが、1試合目の清水西戦では2つの四球を選んで上位につないだ。
元々、打てる選手が多く、主将・勝又に刺激を受けてバットをよく振ってきた。練習の虫たちが揃っていたことで、強力打線を形成していた。スタメンのほとんどが3年生となっている富士宮東。積み重ねてきた練習の成果を集大成の夏に発揮できるのか。意地とプライドを乗せたひと振りに注目したい。
(記事:田中裕毅)