都立総合工科vs都立文京
総合工科はいい形の試合、文京は久々の完敗に仕切り直し誓う
総合工科・勝然玲雄君
<交流試合:総合工科5−0文京、総合工科7−5文京>◇12日◇総合工科グラウンド
今度の土曜日には、夏の大会の組み合わせの抽選会がある東京都。こういう時期になってくると、チーム作りもいよいよ最終段階に入ってきたかなぁというところだ。都立校では上位に残れる実力があるのではないかと言われている文京と総合工科の対決は、なかなか興味深いものでもあった。
梅雨入りしている関東地方だが、この日は、天気予報で雷雨の可能性もあるということも言われていたのだが、午前中は、そんな予報はいい形で外れたのかなと思えるくらいの好天の下での試合となった。
両校の春季東京都大会は、文京は国士舘に2対11、総合工科は足立学園に3対1とリードしていながら、中盤にビッグイニングを作られて逆転負け。ともに、初戦敗退で苦い思いをしている。新入生も入ってきて、また新たな気持ちで夏を目指してここまでそんな思いも立て直してきた。
総合工科は、この日は理想的と言ってもいい感じの2つの試合となった。
1試合目では弘松恒夫監督が、「いつもは、試合途中で投げることがほとんどなのだけれども、初めて先発で試してみた」という勝然(かつしか)が先発。初回こそ、1死から斉藤陸内野手(3年)、須藤勇真内野手(2年)と文京の2番、3番に連打されたものの、その後を落ち着いた投球で連続三振。
これですっかりリズムに乗って、2回、3回は三者凡退。予定の5回をしっかり0に抑えた。さらには1年生の小森が3回を投げて無難に抑え、最後は春の大会ではエースナンバーを背負っていた水上隼人投手(3年)が代わり端こそ安打されたもののあとは3人で抑えて、3投手での完封となった。
文京・水野耀喜君
2試合目でも、5回までは0に抑えられリードされていたが、6回に1番元水孝志朗の二塁打から、相手失策もあってチャンスが広がりスクイズで同点。武藤の二塁打で逆転。一旦は逆転されたものの、終盤の8回に四球と5番内山の安打と相手失策などで追いつき、9回に「当たれば、一発もある」と言う中林がまさに、芯で捉えた左翼への2ランで逆転した。
リードしての完封逃げ切り、競り合いでリードを奪われた展開から同点~逆転という2つのパターンのいい勝ち方を味わうことになった。弘松監督は、「たまたま、今日はいい形で打線がつながったのでこういう試合になりましたけれども、今までは、こういう形になっていかないことも多かったですから…。この流れをあと1カ月維持していかれればいいんでしょうけれどもね」と、慎重ではあるが、今の段階のチームの仕上がりとしては、悪くないと感じているようだった。
好調打線も、むしろ、それを夏の本番までどう維持していくかということが、これからのチームとしての一つのテーマとなっていきそうだ。
投手陣に関しては経験のある水上に左腕の松原、谷口(やくち)、深耕(ふかすき)に1試合目で初先発した勝然と、1年生の小森も3イニングを1安打1四球で0で抑えたということで、この日に投げた投手に関してはある程度の目安は立っているのではないだろうか。
一方、文京の梨本浩司監督は、想定外の負け方に、渋い表情だった。
「いやぁ、完敗ですね。ここのところずっと、一本目の試合では完封負けなんてなかったんですけれどもね…。かなりいい形で仕上がってきたかなと思っていたんだけれども、こういう試合をしてしまうと、また、もう一度やり直していかないといけませんよね。まったく、悪い流れの試合が2試合。元々、この代(3年生のチーム)は、投手がいなくて、下級生が投げていくといがあるという形ではあったんですけれども…、今日は、本当によくないところがすべてでました」
ここへきて、ちょっともう一度チームの見直しも必要かなと言うことも感じていたようだ。ただ、夏の本番までに時間のないことも確かだ。それだけに、中学時代にある程度の実績のある中学生が入学してきたということもあって、1年生の起用も含めて考えているようでもある。
この日も、2試合目に先発した水野は江戸川区の上一色中時代には全中連の全国大会で準優勝チームの投手という実績を持っている。力のある総合工科打線を5回で2安打無失点に抑えたのは力のあるということの証明と言ってもいいであろう。
文京は、梨本監督が、生徒たちが自分で考えて取り組んでいくということを積極的に推進しており、部員たちによる委員会システムという形を取っている。練習提案委員会、環境整備委員会、学習風紀委員会と3つの委員会のいずれかに所属することにして、それぞれが「今は、どういう取り組み方をしていくのがいいのか」ということを提案しながら、委員長中心に進めていくスタイルだ。この日も、試合後の練習を総合工科のサブグラウンドを借りて行うことを提案していた。
大学野球部のような、こうしたボトムアップスタイルの大人の取り組み方である。これが、選手たちの自覚や意識の向上も育んでいるようだ。夏へ向けて、この日の負けをどう捉えて自分たちの糧として成長させていくのか見届けたいものである。
(記事:手束 仁)