試合レポート

天理vs星城

2022.06.05

天理が星城にも完封勝利。世代屈指の遊撃手が攻守で躍動

天理vs星城 | 高校野球ドットコム
適時二塁打を打つ戸井零士(天理)

<愛知県招待試合:天理2-0星城>◇5日◇[stadium]刈谷市営[/stadium]

 招待試合最終戦を迎えた天理(奈良)は星城と対戦した。

 3回裏に戸井 零士内野手(3年)の2点適時二塁打で先制し、その2点を守りきり、完封勝利。非常に内容のある勝利だった。

 星城の先発、最速146キロをマークした田島 善信投手(3年)に対して、戸井の狙いは定まっていた。3回裏の打席について「直球は非常に速かったですけど、変化球も速いので、ストレート待ちで対応ができました」と126キロのスライダーを振り抜き、左翼線を破る適時二塁打で2点を入れた。

 戸井はこの招待試合で、17打数6安打をマーク。一番疲れが出る招待試合最終試合で、高い集中力で打撃ができた。享栄戦では149キロ左腕・東松 快征投手(2年)の145キロのストレートを捉えてのフェンス際の中飛もあった。戸井自身、「享栄戦の前半はアウトになりましたが、良い打球も多かった」と手応えを口にしていた。

 招待試合では、140キロ台の直球と変化球にも対応できる姿を示しすと同時に、守備でも非凡なところを魅せた。戸井の守備は堅実さとスピードを兼ね備えている。肩が強く、外野の芝生と土の境目付近で守っている。だが、打球が転がると、猛然と突っ込み打球を処理する。また三遊間、二塁ベース寄りの打球にも素早く追いつき、アウトを決める。星城戦の初回でも好守備を見せ、スタンドを沸かせた。戸井は「捕りやすいバウンドを見極め、捕球することができています」と手応えをつかんでいる。

 中村監督も戸井の守備について、「これまで一歩引いたといいますか、ちょっと怯えてしまうこともあったんですけど、この4試合、すべて積極的にいけていました。愛知の4校はどの打者も打球が速いことを想定して、我々もノックで速い打球を打ちましたけど、よく反応ができていたと思います」と高評価をしていた。

 天理出身の右打ち遊撃手、太田 椋内野手(オリックス)を彷彿とさせる。もちろん戸井は太田のことをリスペクトしており、さらに高いレベルに到達するために攻守ともにレベルアップしたいと語る。

 安定した守備と高い打撃技術に加えて、盗塁を決めるなどの走塁技術の高さも遺憾なく発揮した戸井。翌週には世代屈指の左腕として注目されつつある阿南光(徳島)の森山 暁生投手(3年)との対戦が予想されるが、ここでも結果を残すことはできるか。

(記事:河嶋 宗一

[page_break:愛知県屈指の本格派右腕、愛知県屈指の名ショート擁する星城が見逃せない!]

愛知県屈指の本格派右腕、愛知県屈指の名ショート擁する星城が見逃せない!

天理vs星城 | 高校野球ドットコム
田島 善信(星城)

<愛知県招待試合:天理2-0星城>◇5日◇[stadium]刈谷市営[/stadium]

 毎年、能力が高い選手を擁するチームとして注目される星城。天理に0対2と惜敗したが、今年も気になる選手が多くいた。

 183センチ、78キロと恵まれた体格の田島 善信投手(3年)が、この日4番投手でスタメン出場した。立ち上がりから球場のスピードガンでは140キロ台を計測。4回から編集部でも計測したが、常時130キロ後半〜146キロをマークした。やや疲れも見え始める中盤の4回から6回の3イニングでの直球の平均球速は140.16キロだった。先発投手として140キロ台の速球を投げ込むスピード能力が高い上に、120キロ後半のスライダー、フォークの精度も高かった。

 その高いパフォーマンスは投球フォームの良さに起因している。稲沢市立治郎丸中時代は軟式。投手になったのは高校からで、入学当初は127キロだった。そこから投球フォームを一から学び、19キロも球速を伸ばすことができた。

 走者がいないところでもセットポジションから始動し、左足を高々を上げながらも、右足の膝を適度に曲げてバランス良く立つことができており、軸足にしっかりと体重を乗せて、滑らかな体重移動を実現。そして打者寄りでリリースし、フィニッシュに入る。一連の流れに躍動感があり、田島自身も「体重移動や体の使い方などはかなり意識してフォームを作ってきました」と振り返る。

 平均球速も140キロを超えて、さらに投球フォームの土台も良いとなれば、注目投手となって当然だ。天理打線相手に6回を投げて7奪三振、2失点と及第点といえる投球を見せた。田島は「天理打線は振れる打者が多く、打たれたのは全部甘い球でしたので、そこを修正していきたいです」と悔やんだが、能力的にいえば、今年の愛知県でもトップクラスの投手に入るのではないだろうか。

 また遊撃手の中川 大雅内野手(3年)も非凡な動きを見せた。171センチ、61キロと細身ではあるが、野球センスは抜群だ。

 得意の守備では、打球への反応が速い。ヒット性の打球を阻止し、さらに持ち替えも速く、強肩で深い位置からでも刺せる守備には見応えがある。巨人・坂本勇人内野手(光星学院出身)、西武・源田壮亮内野手(大分商出身)の守備を参考にしているというが、中川は日頃の守備練習の成果が大きいと語る。

「練習では1時間以上、個人ノックを受け続けています。その時、どんな打球でも絶対に止める。その気持ちで守備に入っています」

 確かに中川の守備には、スピードはもちろんだが、どんな球でも食らいつく泥臭さがある。

 さらに中川は3安打をマークした。トップに入ってからインパクトに入るまで無駄のないスイングができている。中川は今年3月からここまでの公式戦、練習試合はすべて安打を放つ覚醒ぶりだが、その裏には仲間の支えがあったという。

「学生コーチになった同級生が打撃投手になってくれて、毎日打っています。この日も朝、打撃練習をしてから、球場に入りました。それが良かったと思います」

 努力家でありながら、周囲への感謝も忘れないナイスガイ。脚力も高く、8回の内野安打では一度、ファウルと勝手に判断してスタートが遅れながらも4.10秒を計測した。

 星城はパワーヒッターの溝﨑 悠貴外野手(3年)など、能力が高い打者が揃う。夏はシード校として迎えるが、今年の愛知私学4強に負けない魅力を持っているだけに、十分、優勝候補になりそうな戦いぶりだった。

(記事:河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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