試合レポート

拓大紅陵vs市立柏

2022.04.30

拓大紅陵の144キロ右腕。投球スタイルを大幅改善し、2失点完投勝利!

拓大紅陵vs市立柏 | 高校野球ドットコム
嶋田 翔太(拓大紅陵)

<春季千葉県大会:拓大紅陵9-2市立柏(7回コールド)>◇3回戦◇30日◇[stadium]千葉県野球場[/stadium]

 拓大紅陵が序盤から優位に進め、7回コールド勝ちを収めた。1回表、1死三塁から内野ゴロの間に1点を先制。3回表には4番・瓦林 奏良内野手(3年)の適時三塁打とバッテリーミス、さらに薬師神 将哉外野手(3年)、川上 輝良内野手(2年)の適時打でこの回、4点を入れて、5対0とした。4回表には、菰田の三塁打と2番・大立 翔良内野手(3年)の犠飛で6対0。5回表にも、3点を追加し、9対0とリードした。投げては背番号10の嶋田 翔太投手(3年)が5安打2失点の力投。7回コールド勝ちで勝利を収めた。

 拓大紅陵の先発・嶋田は昨秋の関東大会でも140キロを超える速球を投げていた速球派右腕で、今春の練習試合でも最速144キロをマークしている。

 昨年の秋は山梨学院打線の強打の前に、1.2回を投げ5失点(自責点4)と悔しい内容に終わっていた。嶋田にとっては自分の投球を見直す大きなきっかけとなった。

「直球だけでは通用しないということがわかりました。コントロールを磨き、苦手だった変化球も練習しないと思いました」

 投球練習では制球力を高める意識で挑んだ。変化球も、元ロッテで投手として活躍した和田 孝志監督や、技巧派右腕のエース・小堺心温投手から学び、スライダー、スプリット、チェンジアップを習得した。

 市立柏戦の投球はその成長がうかがえる内容だった。当時と比べると、140キロ超えの速球は少なく、常時133キロ〜138キロとやや抑えめ。しかし、ほとんどがボールだった時と考えると、テンポよく抑えようとする意識が見られる。

 120キロ前半のカット気味のスライダーでカウントを稼いだり、三振を奪ったり、120キロ台のスプリットで打ち取る場面もあり、昨秋の嶋田とは別人のようだ。「先発として長いイニングを投げるために球速を落としてコントロールを意識しました」と自分の思い通りの投球ができたようだ。和田監督は「とにかく真面目に取り組む選手で、秋に打たれたことが変わるきっかけとなりました。だいぶ低めで勝負できるようになったと思います」と内容を評価した。

 ただ、6回裏、四球から先頭打者を許し、4番・栗原 泰人外野手(3年)の中前安打とエラーで1点を失い、さらに1死三塁のピンチを招き、内野ゴロで1点を失い、2失点を喫した。嶋田は「四球で先頭を出して、失点を与えてしまったのは反省点で悔しかったところです」と振り返る。それでも、四球を出しても慌てることなく、投球ができるようになったのは成長点。2失点完投勝利で、勝利を決めた。

 エースの小堺が投げずに勝利できた。和田監督によると緊張で、力が入っているところはあったようだが、自信を深める試合となった。

[page_break:スピードは飯田哲也氏に匹敵。1番センターの2年生外野手が3安打3得点の活躍]

スピードは飯田哲也氏に匹敵。1番センターの2年生外野手が3安打3得点の活躍

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三塁打を打つ菰田 朝陽(拓大紅陵)

<春季千葉県大会:拓大紅陵9-2市立柏>◇3回戦◇30日◇[stadium]千葉県野球場[/stadium]

 拓大紅陵の野手陣はレベルが高い。

 どの選手も大学野球で活躍できるのではと思わせた。その中で最も活躍を見せたのが、1番中堅・菰田 朝陽外野手(2年・左投げ左打ち)だ。第1打席は中前安打から相手野手のスキをついて、一気に二塁へ到達し、先制のホームを踏んだ。さらに第2打席は遊撃内野安打を放ち、第3打席は三塁打を放った。小さなステップからインサイドアウトで振り抜き、鋭い打球を打てる。

 非常に技術の高さを感じさせる好打者だが、遠くへ飛ばせるようになったのはステップを変えたことが理由だという。菰田は「澤村 史郎先生に、ノーステップからステップするように教わってから、打球が速くなっただけではなく、角度がつくようになりました」と手応えを感じている。手打ちになってしまうのは、菰田、和田監督も共通認識として「当て逃げ」になっていたのが課題だった。強く振れて、長打を量産できるようになったのは大きいだろう。

 三塁打のベースランニングを見ても足は非常に速く、和田監督は足の速さについて偉大なOBにも匹敵すると語る。「足の速さについては飯田(哲也)さんに匹敵すると思います」。飯田 哲也氏は拓大紅陵出身で、ヤクルト黄金時代のセンターとして活躍した外野手だが、それに匹敵する評価をしている。

「飯田さんは走り出した時、トップスピードに乗った時の速さがすごい人でした。菰田はスタートから速い選手。打撃がもっと磨きがかかれば上の世界でも勝負できる選手だと思います」

 今後の活躍が非常に楽しみな選手だ。

 また菰田だけではなく、各野手が非常に伸びている。昨秋から高い打撃技術を発揮していた瓦林 奏良内野手(3年)は三塁守備の動きが非常によくなり、打撃スイングを見てもなめらかなレベルスイングで次々と長打を生み出す。薬師神 将哉外野手(3年)も綺麗なレベルスイングから安打を量産する好打者だ。そしてこの春から遊撃手に定着した川上 輝良内野手(2年)は和田監督も高く評価する強肩を生かしたスローイングが武器で、打撃でもパワフルなスイングで安打を量産。下位打線の打者とは思えない。

 昨秋、安定した遊撃守備を見せていた中村 瑠斗主将は一塁手へ。野球において一塁手の守備力はかなり重要。今年の拓大紅陵の中で最も守れる一塁守備をしていたのが、中村だったという。今大会も中村だからこそアウトにできたプレーが多くあったという。

 攻守ともに充実した内容の拓大紅陵。Aシード獲得まであと1勝。夏までさらに進化を予感させる試合内容だった。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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