試合レポート

常磐大高vs常総学院

2022.04.28

独自のフォームに変えて140キロ台連発の常磐大高エースが常総学院を抑え、4失点完投勝利!

常磐大高vs常総学院 | 高校野球ドットコム
先発・田中元弥(常磐大高)

<春季茨城県大会:常磐大高5-4常総学院>◇28日◇3回戦◇J:COMスタジアム土浦

 常総学院vs常盤大高と茨城を代表する実力校同士の対決は最後まで手に汗握る一戦となった。

 常磐大高は4月12日の地区予選を制し、初戦は不戦勝となり、臨んだ3回戦。2週間ほども空いた中で、臨んだ公式戦だった。それまでも基本的な練習しかできておらず、実戦に慣れるか不安はあったという。しかしその不安を払拭したのが、主力打者の一発だった。

 3番・佐藤翼が変化球を振り抜いた打球はライトスタンドへ消える2ラン。幸先よく先制した。海老澤監督は「相手投手の直球が強い投手でしたが、あの一発で行ける雰囲気になりました」と振り返る。

 佐藤翼は167センチ75キロとがっしり体型のスラッガーだ。取手シニア時代から外野手でMLBのブライス・ハーパー選手の打撃に憧れているという。力みをなくすために構えも工夫したオープンスタンスでバットを寝かせ気味に構えるスタイルから、小さなステップからインサイドアウトのスイングを実現。ボールを手元まで呼び込み、遠くへ飛ばすことができる打撃フォームが魅力だ。「打撃練習では120%の力で振り切ることを意識しています」。高い意識による積み重ねが本塁打を生んだ。

 4回表、1点を返された常磐大高は4回裏、無死満塁のチャンスから1番鈴木康修内野手の犠牲フライ、2番林航汰内野手のスクイズで1点を追加する。

 常総学院のエース・坂本駿投手(3年)は140キロを超える速球を投げ込む投手。そういう投手から着実に点を加えたのが大きい。さらに6回裏、8番佐藤羽(つばさ)外野手の本塁打で1点を追加する。常磐大高は2人の「さとう・つばさ」がいるが、3年生の佐藤翼は「翼さん」と呼ばれており、2年生の佐藤羽は、「はね」と呼ばれているようだ。県内でも上位に入る常総学院投手陣から2本塁打を打つ常磐大高の打撃陣のレベルの高さは脅威だ。

 常磐大高の背番号1・田中元弥投手が力投。ステップ幅がかなり狭く、腰を沈めず、上半身を鋭く回転させ、スリークォーター気味に腕をふる独特の投げ方だ。この投げ方に至ったのには理由がある。

「これまで重心を下げてオーバーで腕を振って投げるこだわりがあったのですが、なかなか球速が伸びなかったので、昨秋思い切って腕を下げて、そして腰を落とさないことにしました」

 この投げ方は昨秋から取り組み、130キロ程度だったのが、137キロまでスピードアップ。一冬で懸命にトレーニングを行い、体重5キロ増の180センチ86キロと大型投手へ成長した。さらにストレートも140キロを超えた。

 この試合も、手元のスピードガンでは常時135キロ前後だったが、球場表示では常時140キロ前後(最速142キロ)のストレートを投げ込んでおり、120キロ前半のスライダーのキレ味も鋭い。

 こんな投手がいるのかと驚きだった。最後、常総学院打線に粘られ、被安打10、四死球6と苦しみながらも最後は併殺に打ち取り、4失点完投勝利。1点差で勝利をモノにしてベスト8進出を決めた。

 田中は「コントロールを乱して、ずっと先頭打者を出してしまいました。被安打も多かったですし、チームに勢いを乗せる事はできなかったと思います。しっかりと修正して臨んで生きたいと思います」と明秀日立戦へ意気込みを語った。次の明秀日立戦では、投打で機能し、2年連続の春季関東大会出場に近づくことができるか注目だ。

[page_break:常総学院惜敗も選手18人起用。伸びしろのある選手たち]

常総学院惜敗も選手18人起用。伸びしろのある選手たち

常磐大高vs常総学院 | 高校野球ドットコム
先発・坂本駿(常総学院)

<春季茨城県大会:常磐大高5-4常総学院>◇28日◇3回戦◇J:COMスタジアム土浦

 昨年、センバツに出場した常総学院。今年のチームは苦しい戦いが続いている。秋の県大会では2回戦敗退。そして上位進出を目指して、強豪・常磐大高に臨んだが、あと一歩で及ばなかった。

 常総学院の先発はエースの坂本駿投手(3年)。江戸川中央シニア出身で、1年生の時から速球を投げ込んでいた投手だ。右オーバーから常時130キロ〜136キロ(球場最速は141キロ)を計測。セットポジションの入り方がどことなく大川慈英投手(明治大)を思い出させる投手である。スライダーのキレもよく、名門校のエースを担う投手らしい力量がある。しかし高めに入ったボールを振り抜かれ、3.0回を投げ、3失点、4四死球と悔しい結果となった。マウンドを降りても野手として出場していたように鋭い打球を打てる打撃は目を見張るものがあった。

 2番手としてマウンドに登った左腕・伊藤地宏投手(3年)は1年生の時から登板経験豊富な技巧派左腕。常時125キロ〜後半の速球、キレのある変化球を投げ分け、ゲームメイクに徹する。高校1年秋の時は常時120キロ前後だったことを考えると、パワーアップを実現している。2イニングを投げ、1失点だったが、着実に成長を見せている。

 6回裏から3番手として登板した中林永遠投手(2年)は期待の本格派右腕だ。真っ向から振り下ろす直球は常時130キロ〜136キロを計測。ストレートの回転数は高そうで、質の良さを実感する。スライダーのキレもよく、総合力は高い。本塁打は打たれたが、140キロ超えは十分期待ができる。

 8回裏から4番手として登板した石川大翔投手(3年)は、右スリークォーターから常時120キロ後半〜135キロの速球、切れのあるスライダー、カーブをテンポよく投げ込む好投手で、リリーフとして控えているのは強い。

 野手陣は10安打を放ち、4対5と1点差に迫ったが、最後は併殺に終わった。好投手・田中元弥投手にも対応できる打撃力を考えると、侮れないチームであることは間違いない。

 その中でも途中出場で適時二塁打を放った山﨑玲恩内野手(2年)の動きが目を惹いた。安定した遊撃守備は非常にレベルが高く、身のこなしも軽快だった。何より堂々としたプレースタイルが印象的で、どんな進化を見せるか注目したい。

 そして常総学院はベンチ入り20人中、18人を起用した。島田直也監督は「まだ今年のレギュラーは1試合通して任せられるレベルに達していないので、多くの選手を起用することになっています」と手厳しい。逆に言えば、伸びしろである。島田監督は最上級生の3年生の奮起に期待を込めていた。

 島田監督の言葉通り、ベンチ入り選手がさらに奮起して、強い集団になるか。そして新戦力が浮上するのか。夏の常総学院に注目だ。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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