松山商vs松山聖陵
松山商「令和的松商野球」で17年ぶり愛媛頂点!
6回表松山商・先頭打者の4番・西岡 龍樹(3年主将・捕手)が左越同点ソロ
<春季四国地区高校野球愛媛県大会:松山商5-3松山聖陵>◇4日◇決勝◇西条市ひうち
1969年、三沢(青森)との「延長18回引き分け再試合」や、1996年・熊本工戦での「奇跡のバックホーム」など、夏の甲子園決勝で名勝負を繰り広げ「夏将軍」の名で知られる愛媛県立松山商野球部。
過去に春甲子園出場16回(優勝2回)、夏甲子園出場26回(うち優勝5回)と名門の名をほしいままにしてきた伝統校だが、甲子園出場はベスト4入りした2001年夏以来遠ざかっているどころか、愛媛県大会制覇も2005年春から遠ざかる日々が続いていた。
しかし、周囲の評価が「名門」から「古豪」に変わろうとも、彼らは捲土重来へ向け、着々と力を蓄えていた。特に2020年4月に今治西で春6回・夏5回の甲子園出場を果たした大野康哉監督が就任してからは、同年夏の県独自大会ベスト4、昨夏愛媛大会ベスト4など、すべての大会で県8強以上をキープ。そして今大会。冬の間に「座学の時間も含めて」(大野監督)野球を理解し、勝利への道筋を探り続けてきた松山商の精進は実りの時を迎えることになる。
四国地区初の「継続試合」となった今治工との準々決勝では1点ビハインドで、なおも3回裏1死二、三塁のピンチを背負って中断した時点で「3点差まではOK」を確認し合い終盤逆転勝ち。実力者・松山学院との準決勝でもシーソーゲームを制し、大野監督就任以来初の決勝戦進出を達成。そして…。この日の戦いも彼らのイズムが随所に現れたものとなった。
松山学院戦での5失策を反省し「ミスなしで戦う」をテーマに初回無死満塁をはじめ、序盤に訪れた多くのピンチを最少失点に留めると、2対3で迎えた6回表には反転攻勢へ。
「次につなぐ気持ちを持ってバットを短く持って振った」という主将で4番・西岡龍樹捕手(3年)の高校通算3本目となる同点アーチを口火に、その後の1死一、三塁からは、4回裏の代打適時打後、そのまま三塁手に入っていた楠岡晴陽内野手(2年)が158センチ、55キロの身体をバットの芯に集約したような鋭い当たりで右中間を真っ二つに破る2点適時三塁打で逆転に成功した。
このリードを「監督さんから指摘を受けてフォームを修正した」中盤以降、尻上がりに調子を上げた清家瑛投手(3年)が守り切り、松山商は17年ぶりの愛媛県王者を獲得した。加えて掲げていた「ミスなし」も失策は9回裏2死からの1つのみ。指揮官もこれには「主将の西岡中心に心を充実させてくれたことがうれしい」と、試合を重ねるごとに成長したチームワークを称えた。
なお、この優勝により、松山商は秋春通じての勝利ポイントを、春準決勝で敗れた西条に並ぶ「9」まで伸ばした。今後、松山聖陵がもし春の四国大会で優勝した場合でもポイントは松山学院、新田と同じく8ポイントまでにしか伸びず、かつポイントで並んだ際は直近大会での成績を優先させポイント上位校とする規定により、夏の「第104回全国高等学校野球選手権愛媛大会」における第1シード獲得も決定的なものとしている。
かくして10年ぶりの春季四国大会でも大会での課題を成長に変換し「令和版松商野球」のさらなるバージョンアップを期す松山商。彼らの着実な歩みは21年ぶりの聖地に立つその日まで、決して止まることはない。
(取材=寺下 友徳)