近江vs長崎日大
トーナメント表
・浦和学院、敦賀気比などが属するブロック
・大阪桐蔭、花巻東などが属するブロック
・ベスト8以上の組み合わせ
近江・山田が気迫の165球「京都国際の分まで」の思い胸にタイブレークを制す
山田陽翔
<第94回選抜高校野球:近江6-2長崎日大>◇20日◇1回戦◇甲子園
この試合は、近江の山田陽翔投手(3年)の一人舞台だった。
出場辞退の京都国際に変わり、急遽出場が決まった近江。直前の決定とあって、この日は朝早くに出発してバス移動で甲子園までやってくる強行スケジュール。コンディション不良が心配されたが、回を追うごとに投げ込むボールには迫力が増していった。
試合は長崎日大の先発・種村隼投手(3年)との熾烈な投手戦となった。切れのある直球と縦に割れる変化球を駆使して、立ち上がりから凡打の山を築く種村に対して、序盤の山田は四球やとらえられる打球もあった。だが、尻上がりに調子を上げていき、ランナーを出しても後続を断つ粘り強い投球でスコアボードに「0」を並べていった。
試合が動いたのは6回、長崎日大は4番・河村恵太内野手(3年)、5番 白川輝星内野手(3年)の連続タイムリーで2点を挙げ、待望の先制点を奪った。
その後も種村は安定した投球を見せて、このまま逃げ切るかと思われたが、近江も粘りを見せる。5番・岡崎幸聖内野手(3年)が無死一、二塁からライト前タイムリーを放って1点差に迫ると、さらに二死一、二塁から8番・大橋大翔捕手(3年)がライトへタイムリーを放ち同点に。土壇場で延長戦に持ち込んだ。
そして2対2の同点で迎えた13回表、近江は無死一、二塁からスタートすると先頭の4番・山田が適時打を放ち、その後敵失や暴投などで一挙4点を勝ち越した。
山田は6回以降は、気迫の投球で得点を許さず、延長13回165球を投げぬき完投勝利。投打で会心の活躍を見せた。
試合後、多賀章仁監督は「昨年は前年の3年生の夏を力にしてベスト4に勝ち上がることができましたが、今年は京都国際の無念を背負って戦った。試合前には当たり前に野球ができるわけじゃないと感謝して、感動を発信するぞと発破をかけました」と語り、選手たちの活躍に思わず目じりを下げる。
また熱投の山田については、「彼は魂の投球ができる。魂という言葉が似合う子で、仲間から慕われる人間性や、チームを強くするものを持っている子。仲間も彼から学んでいると思うし、私も彼から学ばしてもらってる」と手放しで賞賛。選手たちの活躍に終始、感慨深げに語った。
(記事:栗崎 祐太朗)