山梨学院vs拓大紅陵
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タレント集団・山梨学院が6回に集中打で拓大紅陵の好投手を攻略!8回コールド発進
山梨学院・榎谷礼央
10月30日から開幕した秋季関東大会。水戸市民球場で開催された第1試合は山梨学院と拓大紅陵との一戦になった。
山梨学院は県内で圧倒的な戦いぶりで優勝。一方、拓大紅陵は接戦で勝ち上がってきた。序盤に主導権を握ったのは拓大紅陵だった。
制球が安定しない山梨学院の先発・山田悠希を捉え、7番・黒田陸の左前適時打で1点を先制する。山田は全身をバランス良く使った投球フォームから繰り出す常時120キロ後半〜138キロの速球と、120キロ前半のスライダーを織り交ぜる好投手。対する拓大紅陵は県大会でも多くの好投手を粘り強く攻略して勝ち上がっている。山田ぐらいの力量だと、すぐにアジャストをしていた。3回表には満塁のチャンスから押し出しで1点を追加する。
さらに続く打者にワンボールを与えたところで山田が降板。エースの榎谷礼央が登板し、このピンチを凌ぐと、それまで勢いが合った拓大紅陵打線をピタリと止めた。
榎谷の下半身主導の動きからコンパクトなテークバックで投げ込むフォームは安定感があり、しっかりと力を入れられるフォームだ。県大会が終わって、横振りになる癖を解消するドリルを行い、縦振りで投げられるフォームに改良したという。
ストレートは常時135キロ〜140キロ(最速143キロ)。3回のリリーフでは全力投球をしていたが、4回以降はコントロール重視の投球を心がけた。それでも140キロが出るのだから、このスピード能力は2年秋にしてはトップクラス。140キロ〜143キロの速球を連発して出せるようになると、楽しみだ。さらに縦横のスライダーの切れ味もよく、関東屈指の好投手だ。
追う山梨学院は3回二死一、三塁から4番高橋がつまりながらも中前適時打を放つが、拓大紅陵のエース・小堺心温が非常に安定していた。コンパクトなテークバックから繰り出す直球は常時120キロ後半〜131キロ程度。球速は劣るのだが、内外角へのコントロールが安定しており、120キロ前半のカットボール、110キロ前後のチェンジアップ、カーブの投げ分けが絶妙で、ここぞという場面で投げ込む内角ストレートなど、駆け引きの上手さはさすが千葉を勝ち抜いてきた投手と思わせるものがあった。山梨学院の打者たちも小堺の投球術を絶賛していた。
「コントロールがよい投手ですし、打てるボールが本当になかったです」(高橋海翔)
「ストレートのキレがいいですし、変化球も良くて、前半まで打ちようがなかったです」(相澤秀光)
「前半は打ちようがないぐらい。良いボールがきていました。コントロールも抜群でした」(佐仲大輝)
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山梨学院・佐仲大輝
しかし、6回裏、山梨学院がついに反撃開始。一死から連打でチャンスを作り、ここまで2安打の佐仲大輝が甘く入った直球を逃さず、左中間を破る適時二塁打で逆転に成功。さらに5回まで6安打を放ち、球数も、93球を投げさせることができていた。相澤はいう。
「こういう試合をするために、練習をしたわけではない。もう1回気合を入れていこうと話し合いました」
相手投手のスタミナを削った攻撃と選手たちの執念が実る形となった。その後は9番榎谷の中前適時打、1番鈴木斗偉が適時二塁打、さらに2番進藤天の犠飛で6対2と大きく勝ち越す。さらに7回裏には佐仲の犠飛で1点を追加した。
8回裏には県大会から大当たりだった鈴木が高めの直球を逃さず、ライトスタンドへ消えるソロ本塁打。その後も敵失で1点を追加し、最後は相澤秀光の3ランで12対3で9点差に。8回コールド勝ちを決めた。
吉田監督は「今日は佐仲です。2日前に起用しようと決めた選手。盗塁刺や今回の一打。今日の試合のMVPです」と絶賛する。
今年は前評判が非常に高かった山梨学院。榎谷や1年生スラッガー・高橋海翔が注目されていたが、こうしてみると、タレント揃い。1番鈴木は脚力があって長打力がある左打者。2番・進藤天も足さばきが軽快な遊撃手、3番・岩田悠聖は高校通算20本塁打を超える長打力を持ったスラッガーで、コールドを決める3ランを放った相澤も高校通算19本塁打を放った左の強打者だ。準々決勝の白鴎大足利戦でも実力を発揮できるか。
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敗れた拓大紅陵だが、まだまだポテンシャルが高い選手がいることを証明した。1番菰田朝陽はバットコントロールが実に良く、好投手相手にも力を発揮できる打撃技術は光るものがある。県大会から好調だった中村瑠斗は榎谷から二塁打を放ち、持ち味を発揮した。
そして野手で最も光ったのが四十住海都。榎谷のシュート回転するボールを思い切り引っ張ってレフトスタンドへ運んだ打球は圧巻だった。スローイングタイム2.00秒前後の強肩も光り、県内屈指の大型捕手として覚えておきたい。
打ち込まれてしまったが、嶋田翔太は常時130キロ前半〜140キロ(最速142キロ)の速球はエース・小堺以上。安定して結果を残すにはかなり時間がかかりそうだが、それでも楽しみな存在であることは間違いない。
(取材=河嶋 宗一)
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