試合レポート

都立片倉vs東京実

2021.09.12

明暗分けた終盤の無死満塁の攻防、凌いだ片倉がその直後に大爆発

都立片倉vs東京実 | 高校野球ドットコム
8回片倉、湯地詠斗君の安打から猛攻が始まった

 東西東京の私立と都立の実力校同士の対戦で好試合が期待された。東京実は初戦で保谷に7対0とコールド勝ちしての進出。一方片倉は、組み合わせの都合で初戦がいきなりこの代表決定戦ということになった。新チームとしての公式戦を一度戦っている東京実と、これが初戦となる片倉。試合前のモチベーション等でも、いくらか気持ちの差はあったのではないだろうかとは思われた。

 ことに、今年も去年同様に新チームはコロナ禍で十分なチームとしての練習もこなし切れていない。チーム作りとしても最も大事な対外試合が制限されていて、なかなか思うようなチーム作りにはならなかったというのも正直なところではないだろうか。

 そうした中でも、東京実はある程度は試合をこなせたという。片倉も、例年実施してきた長野県や新潟県への遠征強化合宿は実施出来なかったが、予定は変更しつつも、可能な範囲で都内の学校と対外試合を20回程度はこなしてきたという。そういう意味では、実戦ということではある程度は消化できているので、初戦とはいえ、そんなに心配はしていないというのは宮本秀樹監督の試合前の思いだった。

 試合は、序盤は細かい点の取り合いという展開になった。
 片倉は、初回に先頭の麻野君が中前打で出ると盗塁とバントで一死三塁として、四球後、4番佐藤奏斗君の中前打で先制する。

 これに対して東京実は2回、二死走者なしから「当たれば一発を放り込む力は十分」と言われている吉田君がレフトへ柵越えソロを放って同点とする。

 しかし片倉もすぐに3回、松永君と湯地君の連打からチャンスを作って6番藤井君の中越二塁打で二者を帰して再びリード。それでも、追いかける東京実もその裏、平田君の右前打し、相手失策が相次いで1点差とする。こうして、試合は中盤にさしかかっていくのだが、ここからは片倉の2番手左腕高岡君と東京実も和田君をリリーフした2番手左腕後藤君との我慢の試合という展開になっていった。ただ、試合の流れとしては、いくらか東京実に傾きつつあるのかなという印象でもあった。


 そして、勝負を分ける明暗となる場面が訪れる。

 東京実は1点差で迎えた7回、四死球とバント安打で無死満塁として上位打線。絶好の逆転機を迎える。2番和田君は内野飛球に倒れたが、3番窪田君のところで山下秀徳監督は「打てる選手もいるので代打も考えた」というところだった。

 ただ、そこで「足もあるので、バント安打という可能性もある」ということでそのまま行ったのだが、スクイズを試みた打球は三飛となってしまい、併殺で無死満塁を潰した。山下監督は試合後、「私の中で迷いがありましたね。ベンチが迷っていては、結果は出ません。ここですべての流れが変わった」と反省しきりだった。

 最大のピンチを逃れた片倉は8回、先頭の3番湯地君が中前打を放ったところから猛攻が始まる。続く佐藤泰斗君も左前打し、さらに四球で無死満塁とする。ここで、藤井君と途中から7番に入っていた高岡君の連続安打で2点ずつ加えていく。さらに、3番手の下手投佐藤優太君も攻め、失策も絡んで追加点が入り、結局この回は打者13人で7人連続得点で一気に点差を広げていった。まさに、こういうことがあるから高校野球はわからないのだとも言えよう。

 この回の片倉の各打者は、バチンバチンと中前へはじき返していく打撃で、決してロングヒットではないけれども、相手投手としては非常に嫌な感じになっていく打線でもあった。例年ならば、長打のある選手が中軸にいるのが片倉打線でもあったのだが、宮本秀樹監督は、「今年のチームはホームラン禁止にしている。夏の東東京の二松学舎の打撃を見て、そうか、これだよなと思ったんで、とにかくコンパクトに叩いて投手返しではじき返していくということに徹底した」という形で鍛えた打線である。それが、この試合ではものの見事に機能したと言っていいであろう。

 また、ロングリリーフとなった高岡君に関しても、「あれだけ長いイニング投げたことないんだけれどもね。ちょっと心配だから、ジョンソンを一塁に回して残しておいたんだけれども、その必要はなかったね。むしろ、ジョンソンをもう一度マウンドに戻す勇気がなかったよ(苦笑)」と、高岡君が5回3分の2を投げて、2安打無失点という好リリーフにも、大満足だった様子だった。

 コロナ禍でも、きっちりと練習を積んでこられた片倉が、その成果を示した形の試合となった。「練習試合では、日大三にも勝っているんだよね」という今年の片倉。何かやりそうな匂いは十分に感じさせてくれた。


都立片倉vs東京実 | 高校野球ドットコム
8回に安打を放って出塁した片倉・佐藤奏斗君と、コーチャーの三田君

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二回に同点本塁打を放った東京実・吉田君

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片倉・ジョンソン-マーカス太一君

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(記事=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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