智辯学園vs京都国際
「直球軸」ぶれなかった智辯学園・小畠が大活躍、京都国際「歴史つくった」
先発・小畠 一心(智辯学園)
◆京都国際・平野がどこまで粘れるか
両チームともに右のエース同士の投げ合いが実現した。
智辯学園は小畠一心が先発のマウンドに上がる。ストレートやツーシームといった直球系のボールをメインにして、打たせて取る投球を見せる。とはいえ真っすぐは140キロ中盤を計測する本格派右腕として、3回戦・日本航空戦は9回1失点完投勝利だった。
京都国際の平野順大は、ストレートは130キロ中盤のスピードではあるが、伸びがある質の高さがある。前回の敦賀気比戦では5回まで無失点と先発の役目を作ってエース・森下瑠大へスイッチした。
同じ本格派右腕だが、実力を考えると小畠の方が上手だ。京都国際・平野としては何とか強打の智辯学園相手に粘って最少失点で抑えて終盤勝負に持ち込みたい。
一方の智辯学園は少しでも早く平野を攻略出来れば、主力投手はここ1週間で210球を投じて疲労を残すベンチの森下のみとなる。となれば序盤から猛攻を見せて主導権を握りたいところだ。
◆背番号10・小畠一心が投打で大暴れ
試合は3回まで智辯学園・小畠は落ち着いた投球、京都国際・平野はランナーを出しても粘り強い投球で互いのスコアボードに0が並んだ。
だが4回、3つの四死球などで二死一、二塁とチャンスを作った場面で、8番・小畠が、高めに浮いてきた変化球を捉えた。会心の当たりではなかったが、風に乗った打球がレフトフェンスを越えて智辯学園に3点が入った。
自分のバットで3点リードを作った小畠は、5回に京都国際・5番辻井心にストレートをはじき返されるなど、一死三塁を招く。ここで7番金田大記にストレートをセンターへ運ばれて犠牲フライで1点失うことになったが、途中出場の森下をストレートで三振に斬って取り、最少失点で切り抜けた。
この後、打線の援護はなかったが、7回に4番・平野からカーブで見逃し三振を奪うなど、変化球も交ぜながら京都国際打線に反撃の隙を与えない。
最終回に入っても140キロを計測するストレートで京都国際を圧倒した小畠。9回被安打3、失点1の好投でチームを決勝へ導いた。
◆軸となるストレートが小畠を支えた
今日の試合、やはり智辯学園の右のエース・小畠の活躍がなければ、初の決勝進出というものはなかっただろう。
「選抜の広島新庄戦をきっかけに好調が続いている」と小坂監督は評価しているが、ストレート系のボールを使ってピッチングを展開し続けていることが大きいだろう。
昨秋の近畿大会をきっかけに現在のスタイルに行きついたそうだが、ストライクゾーンで勝負できることで、ストライク先行でピッチングできている。今日もストライク率は41.53%(118球中49球)という数字があり、小畠らしさが出ていた。
特に変化球を活かすという意味でも日本航空戦に続き、軸となるストレートをしっかりと投げ込めていることで、自分有利なカウントでピッチングを展開しやすくなっていたことも大きい。
残すは決勝戦のみとなり、おそらく西村とのWエースで智弁和歌山を抑えることになるだろうが、連投でも好投を見られることを期待したい。
◆決勝での好投にも期待
その小畠は「前回の反省を活かして良い投球ができたと思います」と試合を振り返った。
また小坂監督も今日の小畠は「5試合目の登板でしたが、球数が少なく四死球も少なかったので、いけそうでしたので、最後まで託しました」と制球力を活かした小畠らしい投球を評価した。
それと同時に、「今年は西村と小畠に投手陣は引っ張ってもらったので、明日は振り絞ってほしい」とフル回転での活躍を期待した。
決勝は「智辯」対決。甲子園では2002年3回戦以来で、決勝では初となった。「同じ智辯として負けられないです」と小畠が意気込めば、小坂監督も並々ならぬ思いを口にした。
「智弁和歌山さんとは比べられることがありますが、成績は智弁和歌山さんの方が上なので、肩身が狭いところもありました。自分自身、意地と、プライドをもってやっていたので、それを見せたいと思います」
「智辯」対決を制して悲願の頂点を掴むことが出来るか。総力戦となる決勝戦を楽しみにしたい。
◆高校生らしい、お手本となるチームだった
春の選抜に続いて夏の甲子園にも初出場を果たした京都国際。初戦の前橋育英戦から厳しい試合が続いていたが、初めての夏の舞台で強敵を次々と倒した。このことには小牧監督も「勝ち抜けたことは嬉しいです」と話すものの、課題が明確になったことを感じていた。
「全国のトップクラス相手には振らせてもらえませんでした。ですので、相手を圧倒する力も必要なんだと思いました」
この1年で京都国際の新たな歴史を作ったことは紛れもない事実だ。そのことについて小牧監督も「歴史を切り開いてくれました」と3年生の頑張りを称えた。
そんな小牧監督は、新チーム発足時の様子を語り始めた。
「1年前の今頃は練習試合をするたびにコールド負けで、試合にならないチーム状況でした。ですが、1つの負けから1つずつ階段を上って課題を克服しました。野球への思いの強さ、何が何でも勝ちたいという思いの結集で勝てることを勉強させてもらいました。
1+1が10にも100にも1000にも、みんなの力を合わせて、無い力を高める。高校生らしいお手本となるチームだったと思います」
◆勝利と育成の両立は止めない
森下、平野のWエースをはじめ、甲子園を経験した下級生を多く残して新チームが始まる。期待は自然と高まってしまうが、「残るから簡単に勝てるほど甘くありません」とむしろ小牧監督は気を引き締めていた。
今後も選手育成と大会を勝ち抜く。育成と勝利の両方を追い求める姿勢を変えることはないと断言した。
京都だけではなく、高校球界に新たな新風を巻き起こした京都国際。今度のチームはどんな形になって甲子園に戻ってくるのか。近い将来、京都国際が再び聖地に帰ってきて、今度こそ、歓喜の輪をグラウンドで作る日が来ることを楽しみにしたい。
(記事:田中 裕毅)