試合レポート

明徳義塾vs明桜

2021.08.22

打席と塁上の「重圧作戦」が成功した明徳打線、風間「変化球精度上げたい」

明徳義塾vs明桜 | 高校野球ドットコム
風間球打(明桜)写真:日刊スポーツアフロ

◆風間球打がどれだけ投げられるか

 何と言っても157キロの明桜風間 球打がどうなるか。そこが最大のポイントだろう。

 明桜サイドとしては、風間が相手打線をしっかりと抑え込んで、守備で落ち着かせた状態で、攻撃に集中していきたいところだろう。相手が守りの明徳義塾であれば、なおさら大量得点は見込めず、先に失点すると苦しい試合となるのは必至だ。

 対する明徳義塾は、風間をいかにして攻略するのか。高知大会で森木 大智という剛腕を攻略した経験があるが、風間相手にも同じように点数を奪い、守り勝つことが出来るのか。

 風間がどれほどの調子で投げられるか。両チームの命運に関わるキーマンが勝敗のカギを握った試合は、思わぬ試合展開となった。

◆球数を投げさせる

 試合は2回、明桜が先頭の真柴 育夢の死球でチャンスを作ると、7番・石川 恋のタイムリーで明桜が先制点を掴んだ。

 リードをもらった先発・風間だが、初回から打者3人に25球と球数を要すると、2回も21球を投じるなど、明徳義塾打線を抑えるのに手を焼いた。

 3回には9番・岩城 龍ノ介には10球を投じた末にヒットを許すと、3番・森松 幸亮のタイムリーで1点を失った。

 ただ今大会最速152キロを計測するなど、本人の調子は良さそうだった。中盤以降は抑えるかと思われたが、球数が増えた5回に明徳義塾打線が風間を捉えた。

 一死から1番・米崎 薫暉がセンターへ三塁打を放ち、チャンスを作る。二死になるが、ここで3番・森松の2本目のタイムリーで逆転を許した。

 6回もピンチを招いたものの0点に凌いだが、この段階で139球と投げ過ぎた風間はライトへ回った。2番手には石田 一斗が上がったが、明徳は7回に6番・山蔭 一颯のタイムリーなど3得点で明桜を突き放すと、9回にはダメ押しの3点で試合を決めた。

 明徳義塾が8対2で明桜を下して、3回戦進出を決めた。

[page_break:打席と塁上からのプレッシャー]

◆打席と塁上からのプレッシャー

 風間からは2点のみだったが、6回で139球とハイペースでボールを投げさせた。体力と神経を削っていたことが、この試合の勝敗を分けることになったのではないか。

 初回から三者凡退に倒れたものの、明徳義塾は風間に25球を投じさせた。2回も打者4人で21球という形だったが、イニングごとの球数を確認したい。

1回:25球(打者3人)
2回:21球(打者4人)
3回:29球(打者6人)
4回:19球(打者4人)
5回:24球(打者4人)
6回:21球(打者5人)
合計:139球(打者27人)

 打者1人当たり4~5球と簡単にはアウトにならない。明徳義塾のしぶとい攻撃が、風間の体力を少しずつ減らした。

 なおかつ、塁上からのプレッシャーも掛けてくる。
 単純な盗塁といったサインプレーや、ワンバウンドしたボールに対してスタートを切るといったことはもちろんだが、盗塁を仕掛けたように見えるように、偽走をする。常に隙さえあれば先の塁を狙うことを示し続けた。

 打席と塁上の2方向からマウンドの風間へプレッシャーをかけたことが、世代屈指の剛腕の攻略、そして試合の勝利に近づいた。

◆明徳義塾の緻密な風間対策

 実際に馬淵監督は風間攻略へ、「マシンを通常よりも50センチくらい高いところに設置しました」と速球よりも角度を付けたボールへの対応に重点を置いたようだ。

 あごを上げないようにして高めのボールに手を出さない。なおかつ膝より下のボールにも手を出さないように指示を出した。追い込まれてからも「食らいついていけ」と粘り強く対応するように選手たちに話したそうだ。

 ストレートを基本的には狙い、高めに浮いてきた変化球も打ちに行く。そして追い込まれてからは粘っていく。この指示を選手たちが徹底出来たことで、球数を投げさせることが出来た。

 そして走塁に関しても、馬淵監督の中でこだわりをもって、風間を攻めた。

「クイックになるとストライクが入りにくく、あまり牽制も上手くない傾向があったので、ランナーを意識させようと思ったんです。そうすればカウントが悪くなるので、エンドランとかも仕掛けましたが、ファールになりましたね」

 事前準備の上で、最善の策を講じて、実行に移す。やはり明徳義塾は怖いチームだと改めて痛感させられた。

[page_break:課題が出た157キロ右腕]

◆課題が出た157キロ右腕

 敗れた明桜の風間は「真っすぐだけでは勝てないことを学びました」と甲子園での2試合を振り返った。本人のなかでは思い切ってプレーができたようだが、試合に敗れたことは「悔しいです」と心の声を漏らした。

 風間自身、ストレートには手ごたえを感じていたようだが、「変化球を決めに行っても見逃されてしまいましたし、真っすぐもカットされた」と狙い通りの投球ができずにマウンドで苦しんでいた。そこも踏まえて、「絞ったボールに対してしっかりと振ってくるあたりは、今までの学校とは違いました」と明徳義塾の強さを分析した。

 風間は世代屈指の剛腕として注目をされてきた。今大会でも最速152キロを計測するなど、評判通りのパフォーマンスは発揮した。しかし、「切れが足りないと思うので、悔しいです。変化球も空振りを取れるように精度を高めたいと思います」とさらなる高みを目指す姿勢を示した。

◆指揮官も認める将来性の高さ

 輿石監督は、風間を3年間育ててきて「球速も伸びて良い投手になりました」と成長に嬉しさを感じている様子だった。ただ、「まだまだ伸びる将来性があるので、もっと成長してほしいです」と今後の飛躍も楽しみにしていた。

 今後については「出来れば上の舞台で戦いたい」と明言は避けたが、プロ志望を出せば、将来性を含めてドラフト1位指名の可能性は十分にあるだろう。

 甲子園での2試合を糧に、大投手へ成長することを楽しみにしたい。

(記事:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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