試合レポート

智辯和歌山vs市立和歌山

2021.07.27

智辯和歌山がライバル対決を制して甲子園の切符を掴む

智辯和歌山vs市立和歌山 | 高校野球ドットコム
智辯和歌山先発の伊藤大稀

 智辯和歌山市立和歌山とのライバル対決を制して、2年ぶり(4大会連続)25回目の甲子園出場を決めた。

 市立和歌山はドラフト1位候補の大エース・小園 健太(3年)が先発。対する智辯和歌山はエースの中西 聖輝(3年)が予想される中で、背番号18の伊藤 大稀(3年)を先発マウンドに送った。

 「驚きはありましたが、やってやるぞという気持ちでした」と気合いを入れて登板した伊藤は、存分に力を発揮する。140キロ前半のストレートやスライダーを軸に初回を三者凡退。2回には連打で無死一、三塁のピンチを招くが、併殺と三振で切り抜け、先取点は与えなかった。

 対する小園も「気持ちが入った球が来ていましたし、ピンチの時でもギアを上げていたので、良いピッチングだったと思います」と中学時代からバッテリーを組む捕手の松川 虎生(3年)が話すように、序盤から快調な投球を見せる。この日は球場のスピードガンで最速148キロを計測。5回まで2安打無失点と強打の智辯和歌山相手に力を見せつけた。

 試合が動いたのは6回裏、失策と2つの四球から二死満塁のチャンスを掴むと、7番・高嶋 奨哉(3年)が左前適時打を放ち、1点を先制。甲子園最多勝利監督である高嶋 仁名誉監督の孫が、ここ一番で勝負強さを見せた。

 だが、市立和歌山も負けていない。7回表に先頭の3番・平林 直(3年)が左前安打で出塁すると、智辯和歌山はここでエースの中西 聖輝(3年)を投入。伊藤は6回3分の0を投げて、5安打、無四死球、4奪三振と十分に役目を果たす。ベンチに引き揚げる時には三塁側の智辯和歌山応援席から惜しみない拍手が送られた。

 中西は最初に対戦する打者が松川とタフな場面だったが、「最初からマックスで入れたので、良かったです」とプラスに捉えていた。中西はフルカウントからスライダーで松川を空振り三振に切って取る。その球がワイルドピッチとなり、二塁への進塁を許したが、怖い打者をアウトにすることができた。

 得点圏に走者を進めた市立和歌山は5番・田中 省吾(3年)が三塁線を破る適時二塁打で同点。その後のチャンスを生かすことはできなかったが、試合を振り出しに戻した。



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優勝を喜ぶ智辯和歌山の選手たち

 だが、後半に入って智辯和歌山は小園を捉えだしていた。7回裏、先頭の9番・大西 拓磨(3年)が中前安打で出塁すると、1番・宮坂 厚希(3年)が犠打を決め、一死二塁とする。このチャンスで打席に立った2番・大仲 勝海(3年)は「とにかく初球からどんどん振っていこうと思っていました」と初球を振り抜くと、右前適時打となり、大西が生還。智辯和歌山が再びリードを奪った。智辯和歌山はこの後も5番・岡西 佑弥の右越え適時二塁打で1点を追加。市立和歌山にとっては重いビハインドとなった。

 さらに智辯和歌山は8回裏、二死一、二塁から大仲が遊撃ゴロを放ち、遊撃手の河渕 巧(3年)は二塁に送球する。誰もがこれでチェンジだと思ったが、一塁走者の宮坂はスライディングせずに二塁ベースを駆け抜けると、これがセーフとなった。市立和歌山の選手たちが呆気にとられている間に二塁走者の大西が生還。トリックプレーで智辯和歌山が追加点を挙げた。

 実はこの走塁はかねてから練習していたという。スライディングせずに駆け抜けることで、スピードを落とす必要がなくなり、セーフになる可能性が高くなる。守備側が駆け抜けた走者に目を奪われて、二塁走者へのマークが薄くなる間にホームインするというものだ。大一番でこれを成功させ、「快心の1点でしたね」と中谷 仁監督もご満悦だった。

 9回表の市立和歌山の攻撃は3番からの好打順だったが、中西が三者凡退に打ち取り、ゲームセット。智辯和歌山が甲子園の切符を掴んだ。

 「今年は市高さんに成長させてもらったといっても過言ではない」と話した中谷監督。秋は市立和歌山を相手に3連敗を喫して、センバツの出場権を絶たれている。この悔しさを糧に「追いつけ追い越せ」の精神で取り組んできた結果、集大成の夏に全てが結実した。甲子園では世代屈指のエースを攻略した自信を武器に21年ぶりの全国制覇を目指す。

 一方、敗れた小園は「この2年半でやってきたことを全て出すつもりでした。自分として精一杯のやるべきことはできましたが、単に力不足だったと思います」と振り返った。最後の夏は甲子園に出場することができなかったが、これまでの活躍が色あせることはない。上のステージでの活躍にも大いに期待したい。

(取材=馬場 遼

【トーナメント表】第103回和歌山大会の結果
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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