試合レポート

日大三vs明星

2021.07.22

2年生富塚サイクル達成で日大三が快勝、フルスイング開花

 連日熱戦が続いている西東京大会は、24日から5回戦に入り、日大三明星のベスト8をかけた一戦が八王子市民球場で行われた。

 日大三は先発に背番号10の岡村海琉を起用するが、これが思うように試合を進められない。
 1回の立ち上がり、明星1番・志田 一真にヒットを許すと、2番・大橋 義輝の送りバントなどで二死一、三塁とピンチを招く。ここで明星5番・徳武 卓真の内野安打と6番・山田 稔太にタイムリーを許し、いきなり2点を追いかけることになる。

 だが、日大三打線は焦らない。その裏だ。2番・齋藤 広空が四球を選ぶと、3番・富塚 隼介の三塁打で1点を返す。さらに5番・山岡 航大にもタイムリーが生まれ、すぐさま逆転に成功した。
 すると2回、そして4回にも追加点を着実に重ねて8対2にする。コールドまであと1点というところで、6回に3番・富塚がレフトスタンドに届くホームランで9対2とした。

 このホームランで3番・富塚はサイクル安打を達成し、東京の高校野球の歴史に名を刻むことになった。

 富塚は、サイクル安打に王手がかかっていると知って4打席目に入り、ホームランを狙っていた。2ボール1ストライクから、内角甘めの真っすぐを一振りで捉えて偉業を達成した。

 元々、世田谷西シニア時代から打撃に自信があり、持ち味を磨くために強打の日大三に入学した。あまりバットを引かない反動を減らす形でトップを作ると、深い懐にボールを呼び込んで、ボールを捉えていく。突っ込むことなく、軸で鋭く回転できる富塚は、昨秋のブロック予選からベンチ入りを掴み、春はレギュラーで出場していた。

 その後、調子を落としてメンバーから外れていたが、そこからバッティングに対する意識が変わったという。練習ではバットの芯でボールを捉えることを大事にしてきたが、「フルスイングをするように心がけました」と思い切りスイングをすることを大事にバットを振り込むようにしてきたそうだ。

 その結果、持ち味だった広角に低く鋭い打球を飛ばすバッティングが磨かれた。これまでよりも飛距離はもちろん、野手の間を抜いていく打球の鋭さが変わってきた。すると、現在はフルスイングをしつつも、きっちり芯で捉えられるようになり、調子は上向きになってきた。

 磨きあげた持ち味のバッティングに自信に深めたからこそ、今大会初スタメンでの起用は「レギュラーをもう一度掴めるように頑張る」と強い決意をもって試合に臨んだ。そして見事サイクル安打という大記録で結果に応え、レギュラー復帰へ猛アピールに成功した。


 試合は7回と9回に、日大三2番手・宇山 翼明星に1点ずつ返されたが、9対4で勝利してベスト8進出を決めた。

 序盤までは日大三ペースで試合を進められていたものの、明星2番手・尾崎洋輔に代わってから、なかなかあと1本が出せない。試合を決めきれずに歯がゆい時間が続いた。そのなかで富塚が活躍したことに小倉監督は「今日は富塚に助けられました」と、2年生スラッガーの活躍をたたえた。同時に「夏は勢いのある選手が突破口を開いてくれると思っています」と2年生ではあるものの、富塚が今後も打線の火付け役として活躍することに期待した。

 次戦は同じシード校で強豪・創価と対戦する。小倉監督は、「まずは投手が抑えること。あとは打ち合いになると思いますので、打ち勝てればと思っています」と打撃戦でベスト4をたぐり寄せることを誓った。富塚も「連続安打を継続したいと思います」と引き続きバットで活躍することを誓った。

 後半は拙攻気味だった日大三だが、前半までの破壊力はさすがのものだった。明星・石山監督も「やはりスイングが速かったと思います」と話せば、尾崎も「カウントを取りに行った甘いボールは逃してくれませんでした」と強打・日大三の攻撃力を語った。

 前半までは四球でチャンスを広げたところで、タイムリーを放つ。一発が飛び出す怖さもありながら、繋ぐ怖さも見せた。創価相手に終始粘り強い攻撃を見せることが出来れば、打ち合いを制することは十分可能なはずだ。強敵との戦いで、打線の完成度が増すか注目したい。

(取材=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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