花咲徳栄vs西武台
エース・松田のギアチェンジが功を奏す 西武台下し5回戦へ
6月に花咲徳栄を取材した時、岩井監督はきつい組み合わせに入ったと語っていた。
朝霞、春日部東とコールド勝ちしたとはいえ、あっさり勝ったといえるものではない。そして4回戦では実力校・西武台と対戦した。岩井監督は「苦しい試合になると思っていました」と語り、西武台の河野監督は「この試合に向けて気持ちを高め、準備をしてきました」と話す。
エースの松田和真は常時130キロ後半の速球、125キロ前後のスライダーを中心に投球を構成する。何度もピンチを迎えながらも要所で決まる高めのストレート、スライダーが冴え渡り、点を与えない。
一方、西武台は右の技巧派・山木優宏がのらりくらりと交わし、3回無失点の好投を見せると、4回裏には、左腕の岩崎寛太が登板。100キロ以下のスローカーブを織り交ぜ、花咲徳栄打線の打ち気を逸していき、また外野手のポジショニングも冴え渡り、着実にアウトを積み重ねる。
だが、花咲徳栄は5回裏、二死満塁のチャンスを作り、この春にかけて打撃面が成長した鹿野亮太が左前2点適時打でまず先制点を掴む。
それでも苦しい状態は続き、6回表、無死一、二塁のチャンス。打者は西武台4番の渡邊新太だ。ここまで渡邊は鋭いライトフライ、クリーンヒットと良いあたりが続いている。要警戒しなければならない相手だ。ここで渡邊は二度バントを試みるが、2ストライク先取。ストレートで見逃し三振を奪い、まず一死。さらに松田は続く5番金田幸大、6番青山廣大も三振に奪い、三者連続三振でピンチを切り抜けた。
松田は「ギアチェンジというのをテーマにしていて、6回の場面については4番打者に早めに2ストライクをとれたのがよかった」と振り返った。ギアを入れる場面でストライク先行ができたことが功を奏した。西武台からすれば、痛い試合運びだった。
なんとか追加点を入れたい花咲徳栄は8回裏、5番味谷大誠の適時打で3点目を入れた。岩井監督も「3点目を入れられたことが非常に大きかった」と味谷のタイムリーをたたえた。
花咲徳栄の松田は10安打を打たれながらも1失点完投勝利。昨秋までリリーフ中心だった右腕はこの夏、苦しい試合でも最後まで任せられる投手へ成長した。
5回戦の相手は山村学園に決まった。岩井監督は「次も同じく苦しい試合になると思います。なのでこうした接戦を制することができたのはチームにとって大きいですし、5回戦も後半勝負でしのぎながら戦っていきたいと思います」と意気込んだ。
敗れた西武台は非常にレベルが高いチームだった。シートノックからゲームノックを行うなど実戦を想定したノックを行い、内野手の動きも軽快で、外野手も強肩揃い。各打者のスイングも鋭く、攻守ともに鍛えられていた。
その中でも翌年も期待したいのが渡邊新太。最速143キロ右腕として注目され、強豪校との練習試合でも好投を見せ、評価が上がっていた投手だった。ただ肩のけがもあり、治っても調子が上がらず、リリーフとして待機する形となった。
この日はコンパクトなテークバックから常時130キロ〜135キロ前後と確かに本調子ではなかったが、潜在能力の高さは素晴らしいものがある。この試合は対戦した花咲徳栄の松田の凄さを肌で感じており、松田のようなストレートを投げたいと語った。
左打者としても腰が座った構えから鋭い打球を飛ばしており、来年の埼玉県を代表する逸材となりそうだ。
(文=河嶋 宗一)
■【トーナメント表】第103回埼玉大会の結果
■【レポート一覧】第103回埼玉大会
■【レポート一覧】第103回大会