平塚学園vs横浜氷取沢
平塚学園が頼れる「女房役」にけん引されて快勝
平塚学園キャッチャー・安達斗希
春に東海大相模と接戦を演じたことで、平塚学園の存在感はさらに際立った。その平塚学園は初戦で横浜氷取沢と15日に[stadium]平塚球場[/stadium]で対戦した。
互いに1点ずつを初回に奪い合って迎えた3回、平塚学園は4番・村田 璃紀のタイムリーで勝ち越すと、5回には5番・安達 斗希のレフト前で3対1と平塚学園がリードして折り返した。
6回にも1点を追加した平塚学園だが、横浜氷取沢もその裏、5番・栁沢 蒼士と6番・赤井 佑樹の連打でチャンスを作る。ここで7番・石田 遥弥のセンター前で4対2と平塚学園に食らいつく。
突き放したい平塚学園は、8回に7番・佐々木 太陽のヒットなどで一死二、三塁とチャンスを作る。ここで9番・美登 祐介と1番・阿部 和広の連続タイムリーなどで9対2と、ここまで力投してきた横浜氷取沢・吉村 丈瑠を捉えることに成功した。
この試合で目に留まったのが、平塚学園のキャッチャー・安達だ。二塁送球は手動での計測で1.79秒をマークした。遠投114メートルを誇る強肩を活かしつつ、甲斐 拓也(楊志館出身)を参考にしているというステップで、捕ってから素早い送球を見せる。またフットワークも軽く、自らの前に転がったバントを素早く処理して二塁へ送球してアウトを記録した。一塁駆け抜けは4.1秒とまずまず俊足を持っていることもあり、バント処理が素早いのも頷ける。
また試合中の仕草を見ていると、ピッチャーを含めて野手全体への指示出しの細かさも、捕手として素晴らしかった。他の選手も「日常生活から冷静な人で、しっかりと全体が周りを見れる選手です」と話しており、根っこから捕手向きの人間であることが伺える。
横浜氷取沢先発・吉村丈瑠
小学6年生から安達は、キャッチャーとしての道を歩み始めたという。中学時代は伊勢原シニアで3年間を過ごしたが、ここでコーチから配球の基本を学んだことが安達の土台になっている。
「高校野球にきてスピードとパワーが違うので、打ち取ったと思ったボールでも打たれることがありました。一筋縄ではいかない難しさ、奥深さを感じていますが、そういう時こそ動じずに教わった基礎に立ち返って、そこから考え直すように心がけています」
なかでも代表的な試合は、春季大会で対戦した東海大相模戦であろう。スコアは8対9と善戦しているが、「守備の要、司令塔です」と自負している安達にとっては悔しい結果だ。ただその時に気づいたのも冷静さだ。
「強豪校相手だと単調なリードでは抑えられませんでした。後半に集中打を受けましたし、思い通りにいかないことも多かったです。だからこそ、余計に冷静にならないといけないと思いました」
この試合も、昨夏を含めてこれまでの経験から「拮抗した試合展開になる」と想定して、マスクを被った。守備の中心として後輩投手を含めてチームを牽引してきたが、心のなかには後輩を育てる思いも秘めていた。
「この1年間、監督からも言われてきましたが、後輩投手たちを経験ある自分がどれだけ引っ張っていけるか。そこも考えてきましたので、試合では基本的には状況に応じて自分がサインを出して、あとから意図を指導します。ただ、ピッチャーで投げたいボールがあれば、そっちを尊重して投げさせたうえで、理由を聞いて教える感じです。来年にもつながるように勝たせながら育てる感じです」
肩の強さだけではなく、経験に基づいた冷静なリードにも安達は自信を持つ。次戦の相手は春季大会で強打を発揮した日大藤沢だ。打力があるチームだからこそ、安達の活躍はカギを握っている。「自分が引っ張って抑えられればと思います」と静かに闘志を燃やした。次はどんなリードで投手を育てつつ、チームを勝利に導くか楽しみだ。
(文=田中 裕毅)