試合レポート

浦和学院vs聖望学園

2021.07.12

浦和学院、序盤あわやも終わってみればコールドで初戦突破

 実質ベスト8、ベスト4レベルのカードと言って良いであろう。レジスタ大宮球場にはズラリとスカウトが集結、Aシード・浦和学院聖望学園の対決が早くも初戦で実現した。

 まずスタメンだが、浦和学院は今春2番の八谷晟歩(2年)と9番の金田優太(2年)を入れ替えた。また、守備位置も金田がショート、セカンドに吉田匠吾(3年)、サードに八谷、ファーストに高松陸(3年)と今春終了後に大幅なコンバートが行われた。これは宮城、三奈木亜星(3年)、吉田匠、金田と今年の投手陣は投げない時は野手として出場することが多い故、いわゆる球数制限も踏まえた部分もあるであろう。一方の聖望学園は昨秋、今春と主戦級であった北原鷹門(2年)がメンバーからも外れ、セカンドには山本涼貴(3年)が入る。捕手には公式戦では昨秋以来のスタメンとなる三井颯大(2年)が復帰し、エースナンバーは、本来プロ注目の野手である佐々木海斗(3年)が背負う。今春はやや不本意な出来であったが今回はどうか。

 先発は浦和学院がエース宮城誇南(2年)、一方の聖望学園は左サイドの臼井翔真(3年)が先発し試合が始まる。臼井はインステップで投球する変則投手であり左打者の多い浦和学院打線が苦手とするタイプである。

 試合序盤は聖望学園ペースで試合が進む。

 先制したのは聖望学園であった。

 聖望学園は初回浦和学院・宮城の立ち上がりを攻め、先頭の小林蒼汰(3年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く菅野天空(2年)がきっちりと送り一死二塁とする。3番・山本の打球はライトライナーとなるが、これをライトが落球し一死二、三塁とチャンスが広がる。ここで続く佐々木がきっちりと犠飛を放ち幸先良く1点を先制する。

 だが、浦和学院も2回裏、この回先頭の三奈木が死球で出塁すると、一死後7番・高松がライト線へ二塁打を放ち一死二、三塁とチャンスが広がる。ここで続く宮城が左中間へ2点タイムリー二塁打を放ち、すぐに逆転に成功する。

 さらに、次打者・八谷を迎え聖望学園・臼井は二塁へ牽制球を放る。だが、その送球がやや上ずったのを見て岡本監督は早くも臼井の交代を決断する。


 逆転された聖望学園であったが3回表二死から4番・佐々木が四球を選び出塁すると、続く江口生馬(2年)がレフト場外へ2ラン本塁打を放ち3対2と再逆転に成功する。

 これで勢いに乗った聖望学園は、4回表にもこの回先頭の三井颯大(2年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く岡部大輝(2年)がきっちりと送り一死二塁とする。二死後、1番・小林のセカンドゴロがタイムリーエラーとなり1点を追加する。

 投げては2回途中からマウンドに上がった2番手・岡部が好投する。彼は一ヶ月前に腕の位置をやや下げたばかりだが、これが奏功し制球が良くなった。浦和学院打線の勢いを止め、聖望学園が4対2で前半戦を終える。

 だが、この展開にも岡本監督は

「元々、5回までワンチャンスで返せる点差でくっついていって後半勝負という展開を望んでいたが、前半から粘り合いのような展開になってしまった。守りに入るなよとは言っていたが」

と想定外だったようだ。

 案の定迎えた後半、ガラリと展開が変わる。

 浦和学院は6回裏、この回先頭の松嶋晃希(3年)が三塁線を破る二塁打を放ち出塁すると、一死後5番・三奈木、6番・藤井一輝(3年)が連続四球を選び一死満塁とする。ここで7番・高松がレフトスタンドへ満塁弾を叩き込み、一気に6対4と試合をひっくり返す。

 逆転を許した聖望学園も7回表、この回先頭の菅野がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く山本がきっちりと送り一死二塁とする。すると、浦和学院ベンチはここで宮城を諦め、右サイドの金田をマウンドへ送る。金田は期待に応え後続を抑えてみせる。


 すると浦和学院は7回裏にもこの回から再登板した臼井を攻め2死球を選び一死一、二塁とすると、代わった4番手・松永航希(3年)に対しても4番・吉田瑞樹(3年)のピッチャー強襲ヒットで一死満塁とすると、続く三奈木の内野ゴロで1点を追加し7対4とする。

 これで流れを掴んだ浦和学院は、8回裏にもこの回先頭の高松のライト前ヒットを足がかりに相手エラーなどで一死一、三塁とすると、1番・吉田匠のセーフティースクイズが野選となりまず1点、さらに続く金田がライト前タイムリーを放つ。その後連続押し出しで11対4とし、終わってみれば浦和学院聖望学園を8回コールドで下し初戦を突破した。

 まず聖望学園だが、打線は例年並みの破壊力を有していた。この日も宮城対策として「制球が悪い子ではないので目付の問題。序盤はあくまでオーソドックスに内を捨て、外のボールを狙う。インコースを決められたらまた考えよう」(岡本監督)と試合に入ったそうだが、宮城の不調も相まってこれが見事に嵌り、宮城から8安打4得点を奪った。だが、バッテリーが最後まで固まらなかったのは誤算であった。とはいえ、この日一発を放った江口や途中まで好投した岡部、今大会メンバーを外れた北原を含め、幸い2年生には投打に好素材が揃っているだけに秋以降の巻き返しに期待したい。

 一方の浦和学院だが、

「ガチガチでしたね、でも致し方ない。うちの子真面目なんで」

と森監督も試合後苦笑いであったが、序盤は投打にとにかく硬かった。これまではたとえ打線が沈黙しても、宮城がゼロに抑え流れが来るのを待つ展開が多かったが、この日は宮城のボールが総じて高く、インコースへもなかなか制球できずにいた。得点に直結する守備の乱れもあった。それでも、高松の逆転満塁弾で一気に流れを引き寄せると、その後は宮城に無理をさせず、7回途中からは右サイドの金田、8回表には吉田匠と小刻みな継投で強打の聖望学園打線を交わした。結果的には逆転しコールド発進と帳尻を合わせるあたりはさすがだ。とはいえ、今春宮城がかなりのイニングを投げただけに油断は禁物だ。今後は三奈木の出来にかかってくるであろう。

 目指す高みへ浦和学院がまず一つ大きな山を越えた。

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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