試合レポート

栗東vs彦根総合

2021.07.11

プロ注目の左腕・小林の好投で栗東が8年ぶりの夏勝利

 プロ注目の左腕・小林 純大(3年)を擁する栗東が8年ぶりに夏の大会で勝利を収めた。

 小林は身長184㎝の長身左腕。林 優樹(西濃運輸)を真似たというダイナミックなフォームで右打者の内角をえぐるストレートが持ち味だ。先発マウンドを任された小林はスタメンを1年生で固めた彦根総合に対して、1回表の守りを三者凡退と順調な立ち上がりを見せる。対する彦根総合先発の野下 陽祐(1年)も左腕から曲がりの大きいスライダーを繰り出し、三者連続三振と絶好のスタートを切った。

 このまま投手戦になると思われたが、2回裏に早くも試合が動く。一死一、二塁から栗東7番・津國 郁大(3年)が二塁ゴロを放ち、二塁手の上田 大地(1年)は二塁に送球。しかし、ベースカバーに入った遊撃手の蟹江 星允(1年)がこれを落球して一死満塁とピンチを広げてしまう。1対0で勝つしかないと見込んでいた彦根総合の宮崎 裕也監督が「あれで全てが決まった」と悔やむプレーだった。

 栗東はこのチャンスで8番・小林が投前スクイズを決めて先制。野下の本塁送球がフィルダースチョイスとなり、一死満塁は続く。すると、9番・泉 悠太(3年)もスクイズを成功させ、1点を追加。鮮やかな連続スクイズで栗東が2点を奪った。

 追いかける展開となった彦根総合は3回裏に二死満塁から押し出し四球で1点を追加されると、野下を諦め、主将の青山 瑠己亜(3年)をマウンドに送る。青山は続くピンチを凌ぐと、4回以降も粘りの投球を見せ、7回の犠飛による1失点で乗り切った。

 しかし、打線は小林のノビのあるストレートになかなか対応できず、8回まで2安打無得点と反撃の糸口を掴むことができない。

 何とか意地を見せたい彦根総合は9回表、先頭の青山が左前安打で出塁すると、続く代打・辻村 駿弥(3年)の三塁ゴロの間に二塁に進む。ここで、1番・坂元 幸大(1年)で中前適時打を放ち、青山が生還。最終回にようやく1点を返した。だが、反撃もここまで。最後まで小林を攻略できず、今春に正式に就任した宮崎監督体制での公式戦初勝利とはならなかった。

 10奪三振で4安打1失点完投勝利を収めた小林は「最初は変化球が入っていましたが、後半から疲労で入らなかったので、そこを修正したいです」と反省。春以降は変化球の制球力向上に力を入れ、中盤まではその成果が発揮されていたが、やはり夏の戦いは簡単にはいかないようだ。

 秋と春の8強入りに大きく貢献した最速138キロ左腕は「ベスト4と最速140キロ以上」を今大会の目標に掲げている。NPB球団のスカウトが練習の視察に訪れるほど注目を集めている逸材の活躍に今後も期待したい。

 彦根総合は有望な1年生が多数入部したが、彼らにとって初めての夏はほろ苦い結果となった。「3年生には本当に申し訳ない。もっと気持ちを込めてやってくれると思ったけど、軽かったですね。野球以前に人として、気持ちを鍛えていかないといけない」と宮崎監督は厳しい評価を下した。とはいえ、この経験は大きな財産になるはず。悔しさを糧として、今後の飛躍に繋げてほしい。

(文:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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