試合レポート

関東一vs日本航空

2021.05.17

「経験の場」で躍動。関東一投手陣が示したポテンシャルの高さ

関東一vs日本航空 | 高校野球ドットコム
先発・小島慧斗(関東一)

 日本航空関東一の一戦。関東一の米澤監督は関東大会を「経験の場」と語り、多くの選手を起用することを示唆していた。日本航空戦に先発したのが、小島慧斗(3年)だ。184センチ86キロとエースの市川祐にひけをとらない体格をした本格派右腕だ。

 実にバランスの良いフォームで、左腕の使い方、コンパクトなテークバック、体重移動ともに非凡なものを感じる。球場内のスピードガンでは、最速140キロだが、手元のスピードガンでは常時135キロ〜140キロ(最速142キロ)と、たびたび140キロを計測しており、ストレートの球威自体は市川と同等のレベルにある。120キロ中盤のスライダーのキレも良い。

 ただ高めに浮くのはあるが、それを補うほどの威力がある。4回表にチームのミスから1点を失ったが、ポテンシャルは十分で、夏まで戦力に慣れば大きいだろう。課題としては投球の駆け引きだろう。

 中学時代は投手だったが、外野手としてプレーしていた。投手の練習は最近初めてたばかりで、直近の練習試合で短いイニングを投げただけ。米澤監督はそれが課題なのは承知な上で経験をさせた。ポテンシャルは素晴らしいものがあるだけに、夏まで長いイニングを投げられる投球センスを身に着けておきたいところ。

 日本航空は秋から主力投手だった小澤耕介が登板。細身で振り下ろすストレートは常時120キロ後半〜130キロ前半(球場内の最速は135キロ)のストレートとスライダーを武器に勝負する本格派左腕。しかし、制球がまとまらず、1回裏、楠原裕太に適時打を打たれ、同点した4回裏、石見陸に適時打を打たれ勝ち越しを許す。まだ制球力はまとまらず、振りなカウントになりやすく、ピッチングのリズムも悪くなりやすい。実戦力の部分で大きな課題はあるだろう。とはいえ、力量としては大型左腕・ヴァデルナ フェルガスに匹敵するものがあり、日本航空首脳陣も小澤、ヴァデルナを軸に考えているようだ。



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3番手・市川祐(関東一)

 関東一は5回表から左サイドの矢野聖也が登板。178センチ70キロと体格もよく、常時120キロ後半〜132キロとなかなか球威がある。110キロ前後のスライダーが大きな武器で、左サイドとしては力のある投手で、米澤監督によると怪我で苦しむ時期が長く、ようやく掴んだベンチ入りだという。ただ制球力が安定せず、4番和泉颯馬の2点適時打で逆転を許す。米澤監督としては3イニングを投げさせる予定だったが、「今よりも、勝利して次の準決勝、決勝でチャンスを与えたほうがよいと思い、早めではありましたが、市川を投げさせました」

 

 だれた試合展開となっており、テンポの良いエース・市川祐で締めさせたほうがよい試合展開だった。市川もリリーフとして準備しながら、流れを引き戻したいと考えていた。5回裏に2点を勝ち越した後、登板した市川の安定感は抜群だった。

 「2回戦よりもボールは走っていました」と手応えを感じていように、常時135キロ〜140キロ(最速140キロ)のストレートは球速以上に勢いがあり、ストレートに強い日本航空打線から空振りを奪い、さらに120キロ後半のツーシームの割合を多めにして、スライダー、カーブ、チェンジアップを使い、狙い球を絞らせない投球。両サイドに散らせながら、緩急を使い、キレのあるストレートをより速く見せていた。左打者にはツーシームを使って芯を外し、凡打に打ち取るなど、投球術の上手さ、メンタルの安定感、制球力については今年の高校生右腕でもトップクラスだろう。

 米澤監督も「落ち着いていて、しっかりと相手を観察しながら投げていましたね」と称賛。4回を投げて無失点、無四球、3奪三振の好投で、5年ぶりのベスト4進出を決めた。米澤監督は市川の投球センスは認めつつも、さらなるステップアップを期待している。ドラフト候補として注目される市川について米澤監督もあえてこう注文をつける。

「市川は『勝てる投球』ができるようになっていますが、『勝てる投手』と『プロにいける投手』はベクトルが変わってくると思います。本人はそれが目指せる投手です」

 昨秋は踏み込み足の膝が割れる癖があり、その癖を修正するためにあえて踏み出し足の膝を突っ張らせるフォームに変更し、さらに体の回転力を生かして投げることをポイントにおいた。まだ本人からしても、米澤監督の目から見ても完成形ではない。

 夏までに時間はないが、直球は145キロ以上、平均球速140キロ以上、スライダーは130キロ以上を目指す市川。投手としてのセンスは一級品なだけに、大きく化けることを期待したい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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