千葉学芸vs成田
ドラフト候補・有薗も守備で見せ場!堅守の千葉学芸が初の関東大会へ!
北田 悠斗(千葉学芸)
高校通算57本塁打の有薗直輝擁する千葉学芸と上位常連の成田との一戦。お互いとにかく守備が堅い。動きにキレがあり、球足が速い打球に追いつき、着実にアウトを積み重ねる。完成度の高いチームへ成長した。
成田は尾島監督曰く突出とした能力が高い選手はいない、普通のチームと表するが、どの選手も基本に忠実に鋭いスイングから強烈な打球を打ち返し、内野手の動きも軽快で、外野手の肩も強い。また小技を絡めながら相手チームにプレッシャーを与える攻撃は脅威で、練習試合で対戦する千葉県内の学校の指導者に話を聞くと、お手本となるようなチームという声が多い。
試合は1点を争う好勝負となった。1回表、一死一、二塁から併殺崩れトミスの間に千葉学芸が1点先制するが、その後は成田・高橋竜平、千葉学芸のエース・北田の投げあいで4回終わって1対0で迎えた5回表、一死二、三塁の場面で3番有薗に回ったが、ストレートの四球。ここで有薗とともに注目されてきた板倉颯汰が右前へ痛烈な2点適時打を放ち、3対0とリードを広げる。千葉学芸は有薗、板倉の並びを試していった。結果として3番有薗、4番板倉の並びが勝負を避けられにくいということで現在の打順となった。有薗が避けられても、板倉が打ち返すという理想的な得点パターンで試合の主導権を握った。
投げては今大会獅子奮迅の活躍を見せる北田悠斗が好投。常時120キロ後半だが切れ味抜群直球とキレのあるスライダーを低めに集め成田打線を打ち取っていく。高倉監督にすれば、ベストコンディションの内容ではなかったが、緩急や、間合いを使った投球は円熟味を感じさせる。コントロール、テンポ、根性と申し分ないものがあり、野口亮太(前橋商-仙台大-鷺宮製作所)を思い出させるような左腕だ。8回裏にピンチを招いたが、犠飛による1点に止め、そして9回裏も無難に締めて、千葉学芸が初の関東大会出場を決めた。
緊急事態宣言もあり、調整が難しかった千葉県の高校球児たち。千葉学芸も例外ではなく、限られた練習時間の中でもミーティングの練習時間を増やしながら、結束を固め、春の県大会優勝を目指してきた。さらに結束を固めるきっかけとなったのは2回戦の市立柏戦だ。主砲の有薗が顔面に死球を受け、退場。主将の斎藤聖弥は「有薗のために勝とうとみんなで言い合いました。凄い打者ですが、的確に助言を伝えてくれますし、本当にチームに欠かせない存在です」
大会が始まる前から、春の千葉県大会を制覇することを目標においていた。夏の甲子園にいくために、高倉監督は「うちは関東大会に出場するチームの中では弱いチームです。センバツに出たチームさんや甲子園出場する強豪校さんと試合したかったです」と関東大会に出場することは夏のために必要なステップだったのだ。
好守が光った有薗直輝(千葉学芸)
この試合は1失策だったが、とにかく守備が堅い。主将の斎藤は実戦を想定して、常に緊張感を持って練習を行っていた。
また有薗がスラッガー以外にも見どころがあるところもではないところも素晴らしい。とにかく強肩を生かした守備は実に堅いものがあり、勝負を避けられても守備面で見せ場を作れるのが地味に大きい。この試合も無失策。また9回裏二死の場面には北田のもとに駆け寄っては励ます姿も印象的だった。実際に取材をしても、スラッガータイプの選手としてはこんなにも優しい表情と性格をした選手なのか…と驚かせられたが、彼の人間的な良さをしっかりと活かしつつ、能力も伸ばしていて、良い成長曲線を描けているといえるだろう。
敗れた成田は、初回にミスからの失点により、自分たちのリズムを乗ることができなかった。とはいえ、課題だった投手陣に成長が見えた。最速137キロをマークした2年制右腕の高橋竜平、120キロ後半ながら横の角度を使ってコントロールの良い投球で抑える右サイドの永名悠平、130キロ中盤の速球を投げ込む右腕・井上裕貴と多くの投手が浮上してきた。あとは夏まで走攻守のレベルをどれだけ引き上げることができるか、注目をしていきたい。