試合レポート

花咲徳栄vs春日部共栄

2021.05.02

東部のライバル対決は相手の自滅もあり花咲徳栄が5回コールドで春日部共栄を下す

花咲徳栄vs春日部共栄 | 高校野球ドットコム
花咲徳栄、先制のホームイン

 強風吹き荒れる中行われた上尾市民球場の第二試合は2試合連続5回コールドと圧倒している優勝候補・花咲徳栄対Bシード・春日部共栄という東部地区のライバル校同士の一戦、これまで幾多の名勝負を繰り広げてきた両校の激突ということもあり、上尾市民球場は前の試合途中から外野席が解放されるなど熱気を帯びていた。だが試合は意外な展開となる。

 まずスタメンだが、春日部共栄は今大会4番を打っていた佐藤大悟(3年)が8番に下がり、5,6番を打っていた石﨑慶太郎(3年)、吉村颯(3年)がそれぞれ4,5番に打順を上げる。そして6番には今大会代打で結果を出していた村田晃尚(3年)がレフトでスタメン起用される。一方の花咲徳栄は昨秋から打順やスタメンも大きく変更されている。昨秋1番の鹿野亮太(3年)が7番に下がり、1番には川腰瑠一(3年)が入り、昨秋5番だった飛川征陽(3年)が2番へ上がる。昨秋9番の味谷大誠(3年)が5番に上がり、昨秋7番の秋山貫太(3年)が9番に入る。

 そして先発は春日部共栄髙橋正吾(3年)、花咲徳栄松田和真(3年)と両エースが登板し試合が始まる。

 高橋は一昨年秋から主戦で投げ続けている経験豊富な左腕でストレート、変化球共に低めへの制球力が生命線の投手だ。一方の松田はゆったりとしたフォームからMAX144kmのストレートを中心に組み立て時折変化球を交える本格派投手で今大会エースナンバーを任された。

 試合は初回から動く。

 初回花咲徳栄春日部共栄・髙橋の立ち上がりを攻め、2番・飛川がピッチャーゴロエラーで出塁すると、続く浜岡陸(3年)も四球を選び一死一、二塁とチャンスを広げる。二死後、5番・味谷がレフトへタイムリー二塁打を放ち1点を先制する。

 だが、春日部共栄もその裏、花咲徳栄・松田の立ち上がりを攻め、二死から山口叶翔(2年)が四球を選び出塁すると、続く石﨑の所でワイルドピッチが起こり一走・山口叶は二進する。ここで石﨑がレフト前タイムリーを放ちすぐに同点とする。

 初回を見る限りはライバル対決らしい互角の展開であった。今大会花咲徳栄は接戦を経験していないだけに状況によってはバタつく可能性もあった。だが、2回以降春日部共栄が急に崩れ始める。

 花咲徳栄は2回表、この回先頭の鹿野がショートゴロエラーで出塁すると、二死後1番・川腰、2番・飛川が連続四死球を選び二死満塁とする。ここで続く浜岡の打球はセカンドゴロであった。だが、セカンドが悪送球を放り花咲徳栄はこの回ノーヒットで2点を得る。

 これで流れを掴んだ花咲徳栄は3回表にもこの回先頭の味谷が四球を選び出塁すると、一死後7番・鹿野がレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とチャンスを広げる。ここで続く松田がレフト前ヒットを放つとレフトがワンバウンド後目測を誤り後逸し2点タイムリー二塁打としてしまう。さらに9番・秋山が左中間へタイムリー二塁打を放つと、続く川腰もセンター前タイムリーを放つなど花咲徳栄がこの回一挙4点を奪うビックイニングを作り7対1とし一気にコールドペースへ持ち込む。

 何とか反撃したい春日部共栄であったが、一旦守備の乱れで失った試合の流れは簡単に引き戻せない。

 花咲徳栄は4回表にも、この回先頭の味谷のセカンド横のゴロをセカンドが捕れず出塁すると(記録はヒット)、続く澤口滉(3年)のファーストゴロは併殺かと思われたが、二塁送球が乱れ一死二塁とする。9番・鹿野は死球で出塁し一死一、二塁とすると、続く松田がライト前タイムリーを放つ。その際一走・鹿野の三塁への突入は暴走気味であったが、ライトからの返球をサードがこぼし一死一、三塁とする。ここで9番・秋山の打球はセンターフライかと思われたが、風の影響もあったかセンターが転倒し2点タイムリー二塁打とすると、続く川腰のライトフライもライトが目測を誤りタイムリー二塁打とする。その後2番・飛川もセンター前タイムリーを放つなど結局花咲徳栄はこの回も5点を奪い12対1とし試合の大勢は決した。

 投げては花咲徳栄・松田が2回以降は危なげない投球を見せると、最終回は堀越啓太(3年)が春日部共栄の反撃を無失点で切り抜ける。

 結局、花咲徳栄が3試合連続となる5回コールド勝ちで春日部共栄を下し準決勝進出を決めた。

 まずは春日部共栄だが、この日はとにかく守備が乱れた。記録上は3失策であったが、他にも見えないミスが随所に出た。エース高橋は打たせて取るタイプだけにこうなってしまうと試合を作ることは難しい。不甲斐ない内容に本多監督も試合後やや自嘲気味に
「(コロナの影響で)これまでの練習不足が全部出た。髙橋は彼なりに一生懸命投げていたし、良いボールは投げているが続かない。この日は彼に何が足りないかわかってもらうために最後まで投げさせた。実際に花咲徳栄と対戦しないと見えてこない部分があるので、この後選手達と夏までにどういう練習をしなければならないか考えさせます」
と語った。朝霞西戦でも「レフトもライトも素人」と本多監督が不安材料に挙げていた守備力、特にコンバートによる外野守備の不安がこの日露呈してしまった形だ。打線は悪くないだけに夏へ向け投手力、守備力の強化が必須であろう。

 一方の花咲徳栄も試合後岩井監督は
「今大会バントはしないので打つだけでどれだけ行けるかなと。打線もまだまだ甘い。投手陣もこれまで3試合で15イニングしかできていないので、9イニングを投げさせてどうなるかわからないので。本番は夏ですし」
と未だ一戦一戦経験を積ませている段階であり、発展途上であることを強調していた。とはいえ、1巡目こそ春日部共栄・髙橋の低めの変化球の見極めについてばらつきが見られたが、2巡目以降はそのあたりもきっちりと修正できていた。そして何より今年のチームの売りは投手力だ。140km越えの投手が5人おり、その投手陣が高いレベルで競争をしている。それ故に練習試合でも完投することがないという高いレベルならではのジレンマを抱えているが、相手としては脅威であることに変わりはない。打線も飛川、浜岡、富田などを中心とし中距離打者が多いが、一冬を越し例年並みの破壊力を有している。次の相手は上尾高校だが、上尾にとってはチャレンジゲームであることに変わりはない。どれだけ接戦の状態を長くキープし花咲徳栄を慌てさせる展開に満ち込めるが鍵であろう。

(取材=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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