高知vs明徳義塾
決勝3ラン&4打点&好返球&2盗塁&154キロ!「森木祭り」で高知・5年ぶりの春四国王者!
9回表無死満塁から1回を8球で締めた高知・森木 大智(3年)
本来「チームスポーツ」である高校野球において1人の選手だけがピックアップされる傾向は、必ずしも好ましくないもの。ただ、この試合に関しては高知の背番号「1」森木 大智(3年・右投右打・184センチ87キロ・高知中出身)で埋め尽くされたと言っても過言ではないだろう。
県新人戦決勝戦(高知1-0明徳義塾)、秋季県大会決勝戦(高知1-1明徳義塾・延長12回日没引き分け再試合)、同再試合(高知0-6明徳義塾)、春季県大会四国大会順位決定戦(高知1-2明徳義塾・延長13回タイブレーク)に続く、この代で5度目の「名勝負数え歌」に7番・左翼手でスタメン出場した森木は、まずは「練習では何百本もホームランを打っている」(濵口 佳久監督)打撃でその非凡さを誇示した。
4回裏一死一・三塁から6番・田野岡 脩人(3年・遊撃手・右投左打・175センチ66キロ・高知市立潮江中出身)の投前セーフティーバントが先制内野安打となった直後に右打席に入った森木は、1ボール後に明徳義塾先発・矢野 勢也(2年・右投右打・180センチ73キロ・球道ベースボールクラブ<フレッシュ・福岡>出身)が投じた外角スライダーに対し「ストレート待ちだったので少し泳いだけれども身体が反応して」バットの芯にミート。打球は強い追い風にも乗って弾丸ライナーで高校通算10本塁打となる決勝3ランとなった。
森木の独壇場は続く。6回裏には2つ目の四球を選んだ後、2回裏に続く二盗を決めて9番・川田 響生(3年・右翼手・右投右打・168センチ65キロ・高知中出身)の右中間適時三塁打を誘発。8回裏には一死二塁からフルカウントまで粘った上で左前適時打で結果、4打数2安打4打点2得点2盗塁。加えて守備でも7回表一死から明徳義塾1の俊足である8番・井上 航輝(2年・中堅手・右投左打・168センチ63キロ・河南リトルシニア<大阪>出身)の左翼フェンス直撃の当たりを全く無駄なく処理し、鉄砲肩で二塁で刺す離れ業も演じてみせた。
さらに野球の神様は、最後に2021春・四国高校野球界最大のハイライトを用意していた。9回表・明徳義塾が意地の反撃を仕掛け、無死満塁とした場面で「この代で明徳義塾との勝敗をタイにして夏に臨む」ことをミッションとして選手たちとも確認し合っていた指揮官は迷いなく森木を投入した。
「試合中に投球練習はさせていた」(濵口監督)とはいえ、状況的には難しい場面。にもかかわらず森木はエンジンをトップギアに入れ、最初の打者を球場ガン151キロで二ゴロに仕留める(この間に1点)と、主将の1番・米崎 薫暉(3年・遊撃手・右投右打・173センチ71キロ・茨木ナニワボーイズ<大阪>出身)に対しては2球目の122キロスライダーがボールになった以外は4球全てストレート勝負。そして「うまく体重が乗っていい力感で投げられた」5球目。米崎が「コースはボールだったけど飛び付いてしまった」空振り三振を奪ったストレートは球場ガンで「151キロ」。同時に複数球団のNPBスカウトガンでは中学時代「明徳義塾中vs高知中」でライバル物語を演じていた関戸 康介(大阪桐蔭3年)に並ぶ世代最速の「154キロ」を示したのである。
かくして最後の打者も148キロストレートで一ゴロに仕留め、高知を5年ぶり11回目の大会制覇に導いた背番号「1」。「全国制覇を目指す上で絶対に倒さなければならない相手」(森木)明徳義塾に対する快勝は、夏の県大会・明徳義塾に続く第2シードが確定している高知に勢いを与えると同時に「森木 大智」の価値を高めるに十分なものであった。
(取材=寺下 友徳)