近大新宮vs向陽
近大新宮が向陽との接戦を制す
8回表に山下慎の適時打で生還した山﨑雄大(近大新宮)
投手戦を制した近大新宮が4強入りを果たした。
近大新宮の先発は右横手投げの三田大知(3年)。低めを丁寧に突く投球で相手打者を手玉に取り、スコアボードに0を並べていく。4回裏には一死二、三塁のピンチを招いたが、冷静にスクイズを外して、窮地を乗り切った。
そして三田以上のインパクトを残したのが向陽の田中輝映(3年)だ。身長167㎝、体重64キロと小柄な体から最速は144キロ。「体が柔らかくて、質の良い真っすぐを投げられる」と山本慎監督が評価する右腕は力強いストレートとキレのあるスライダーを投げ分け、三振の山を築いていく。球場のスピードガンでも度々140キロ超えを計測し、この日は最速で143キロをマークした。
田中を援護したい向陽打線は7回裏、失策と犠打で一死三塁のチャンスを作る。ここで近大新宮は好投を続けていた三田に代えて、背番号1の左腕・新川祐貴(3年)を投入。厳しい場面での登板となったが、ショートライナーと空振り三振で凌ぎ、得点を許さない。向陽にとっては絶好のチャンスを逃す形となった。
ピンチを凌いだ近大新宮は8回表、一死から4番・山﨑雄大(3年)が出塁すると、5番・草山源太(3年)が右前安打で繋ぎ、一死一、二塁とする。ここで6番・山下慎(3年)が右前適時打を放ち、待望の先制点を挙げる。7回まで近大新宮を2安打に抑えていた田中だったが、「合わされて、球も浮いてきた」と疲れが見えたところを捉えられてしまった。
田中は8回までに152球を投げて、15個の三振を奪ったが、「序盤に制球を乱して、流れを悪くしたのがこの結果に繋がっていると思うので、流れを変えられるようなピッチングができたら良かったと思います」と反省。序盤から球数がかさんでしまったのが、最後に響いてしまった。
向陽は9回から宇治田壮志(3年)がマウンドに上がるが、暴投で追加点を与えてしまう。9回裏の攻撃も得点を奪うことができず、完封負け。2季連続の4強とはならなかった。
敗れはしたが、田中のピッチングは強く印象に残るものだった。卒業後は国公立大で野球を続けることを目指しており、今後の活躍にも注目だ。
勝利した近大新宮は8年ぶりの4強入り。三田から新川への継投がズバリとハマった。右横手投げからシンカーを武器にする三谷対して、左上手投げの新川は曲がりの大きい変化球を使いながら、勝負所で右打者への内角に鋭く食い込むストレートを投げ込む。タイプが全く違う2人の継投は相手打線にとっては厄介だろう。準決勝の市立和歌山戦でも鮮やかな継投策が見せてくれそうだ。
(取材=馬場 遼)