都立片倉vs都立杉並
数多くの好投手を育てた名将も絶賛するアメリカ出身のジョンソン(都立片倉)が好投!充実の練習試合に
ジョンソン
11月も中旬に入り、練習試合ができる週末もあと2週間ほどしかない。貪欲に練習試合を入れていくチームも多い。2018年夏西東京大会ベスト8の都立片倉もその1つだ。秋季大会では一次予選で上野学園に敗退。大会後は、週末には練習試合を組んで、実力をつけてきた。
11月15日は都立杉並と対戦した。その中で1人おすすめの逸材を紹介したい。それが、ジョンソン・マーカス太一(1年)だ。父親がアメリカ人で、母親が日本人のハーフ。アメリカのテキサス州出身で、4歳の時に日本に移住。父親は仕事の関係で再びアメリカに戻って仕事をしている。4歳までアメリカにいたため、多少の英語での会話はできるようだ。
180センチ70キロ弱のすらりとした体格。彼の将来性の高さについては、高洲江拓哉(元中日)、金井貴之(フェデックス)など数多くの好投手を育てた宮本監督と、元プロで投手として活躍した舟山恭史部長からも高く評価されており、都立片倉の指導スタッフはジョンソンについて「選手の将来性を見抜ける人が見れば絶対に化けると思うほどの素材。だから絶対に化けさせたいんです」と入れ込むほど。
力任せではなく、キャッチボールのような力感から投げ込む。軸足にしっかりと体重を乗せ、胸郭を使って振り下ろすフォームなのが魅力的だ。まだ常時125キロ前後だが、コントロールが安定している。球質が良く、体ができれば、一気にボールが速くなる予感がある。入学当初、かなりのアーム式で、ボールがほとんど抜けてばかりだったが、何度もフォームの修正を行い、ストレートの球速が大きく向上した。
ストレートも微妙に動き、同じ腕の振りから大きく落ちるカーブ、スライダー、ツーシームも操り、非常に器用。体作りにしっかりと励み、強いボールを投げるようになれば、より多くの人から注目が集まる投手になれる可能性を秘めている。
星野日向(都立杉並)
そのジョンソンは5回無失点の好投を見せた。打線も相手にミスに乗じて二けた得点を記録。都立片倉の打者は伝統的に下半身をうまく回転してスイングができる打者が多いこと。都立校の打者はどうしても腰が回転できず手打ち気味のフォームになってしまう選手が多いのだが、都立片倉の打者陣は下半身をしっかりと使ってスイングができる。まだミスショットは多いのだが、それでも一気に打てる打線になる予感はある。その中でも4番・角田樹希(じゅいき)は178センチ77キロと筋肉質の体型から鋭い打球を放つ左のスラッガーでまだ通算4本塁打だが、現在は飛距離増のための打撃フォームに修正中。量産体制に入ることができるか。
この試合、秋の公式戦で投げた2年生の橋口拓海が登板せず、左腕の高岡大、右腕の時崎空汰の1年生が登板。高岡は120キロ前半だが、「手元でキレがあり、好調時はバットがボールのかなり下を振って空振りが奪えるほど。肘が立った投球フォームで球速表示以上に驚くボールがある。いわゆる育てがいのある左腕だろう。
時崎はややスリークォーター気味で身体の使い方も独特。120キロ中盤の速球と決して速くないが、110キロ中盤のスライダーは手元で鋭く食い込むキレがあり、いわゆる「スライダーピッチャー」。だがスライダーに頼らず直球を磨く狙いが見えた。
11月末までびっしりと練習試合を入れている都立片倉。テーマを儲け、さらなる上積みを目指していく。
敗れた都立杉並だが、1番ショートの星野日向はセンス溢れた遊撃手。ミート力が高く、さらに守備も落ち着いて処理を行い、投手としてもマウンドに登り、120キロ中盤。都立高の選手としてはなかなかの能力を持った選手だった。
(取材=河嶋 宗一)