試合レポート

常総学院vs浦和学院

2020.11.08

まるで関東大会。常総学院vs浦和学院の一戦は9回裏まで白熱の展開に!

常総学院vs浦和学院 | 高校野球ドットコム
三奈木亜星(浦和学院)

 常総学院vs浦和学院。まさに関東大会のような黄金カードが実現した。

 両チームとも秋のエースが登板。浦和学院は1年左腕の宮城誇南常総学院は145キロ右腕・秋本 璃空が登板。

 宮城は秋の大会と比べるとそれほどのボールの勢いはよくないが、130キロ前後のストレート、スライダー、カーブをテンポよく投げ分ける投球。試合は3回表、常総学院が誇る大型遊撃手・三輪拓未。左前適時打で1点を先制する。

 秋本は威力で勝負する投手というイメージがあったが、やはり秋の大会で結果を残してきた先発投手だけに、実戦的な右腕だ。常時135キロ~140キロの直球は威力があり、120キロ中盤のスライダー、チェンジアップ、カーブを適度に投げ分ける。直球は低めに決まり、変化球も丁寧にコントロールできる。

 5回まで常総学院が1対0とリード。引き締まった投手戦となっていた。

 試合が大きく動いたのは6回裏。無死一塁から3番三奈木亜星が痛烈な中前安打を放ち、4番吉田瑞樹がファールで粘りながら、左中間を破る適時二塁打で逆転に成功。その後、内野ゴロ、8番高松陸の適時二塁打や、9番に入ったパワーヒッター・河原 杜吾の中前適時打が飛び出し、一挙5得点を奪った。

 島田監督は「簡単にストライクコースだけで攻めにいっている」と指摘。振り返れば、置きに行く直球、変化球が多かった。ストレート、変化球の精度の高さの割に強打のチームに打たれるのは攻めが単調なところにあるだろう。

 三奈木は投げても好投。体を縦回転に使う意識があり、真上からしっかりと下せる投球フォーム。常時135キロ~138キロの直球は勢いがあり、120キロ前後のスライダーの切れ味も悪くない。秋では故障で投げられなかったが、秋季大会後の練習試合では秋の神奈川4強・桐蔭学園相手に完封勝利を挙げるなど、その時も最速は141キロ。そのほかでも140キロを出す試合もあった。

 改めて常総学院との練習試合2試合を見て、三奈木の角がない洗練された投球フォームは浦和学院の投手陣の中で別格。プロ入り後、急激にスピードアップした榊原翼(オリックス)のような成長をするかもしれない。それがどの時点で訪れるか分からないが、投げ方がいい投手は一気に伸びる可能性があるだけに注目してみたい投手だ。

 投球以上に良かったのは打撃。秋本から右翼線へ二塁打、中前安打。146キロ右腕の大川からもタイミングを外しにいった変化球にもついていき、セカンド内野安打。今年の浦和学院の選手の中では最も打撃の形がいい選手だ。

 スクエアスタンスで構え、ブレを防ぐために、ほぼノーステップで構え、骨盤を鋭く回転させ、インサイドアウトで捉えることができる。どのコースに対してもきれいにバットが出るため、高確率で安打が期待できる。第2試合は捕手もこなして、軽快なスローイングを見せていたが、歴代の浦和学院の選手の中でも野球センスはトップではないか。



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大川慈英(常総学院)

 一気に1対5と4点リードを許した常総学院だったが、7回裏から登板した146キロ右腕・大川慈英が流れを引き寄せる投球を見せる。

 大川の素晴らしさといえば、リリースまで脱力し、リリースの瞬間に一気に力を入れる投球フォーム。写真を撮ると、サイド気味。本人曰く自然とそうなってしまうようだが、じっくりと見るといわゆる肘が立った状態でリリースができており、真後ろから見ると遅れて出てくる感覚に陥る。

 そのためワンポイント、タイミングが遅れる。140キロを連発し、7回裏、5番鍋倉 和弘を見逃し三振に奪ったストレートは最速142キロを計測。[stadium]千葉県野球場[/stadium]では140キロ中盤を計測していたが、噂通りのストレートだった。

 ストレートだけではなく、120キロ前後のスライダーの切れもよく、そして最も驚かされたのがチェンジアップだ。7回裏、4番吉田瑞樹から三振を奪ったチェンジアップ。落差のあるチェンジアップではなく、減速したストレートで打者の手元ですっと落ちていく厄介な軌道で、大川自身、「うまく投げられました」と手ごたえを感じていた。

 体の使い方もうまく、自然と打者が遅れてしまうような、腕の振りの良さがあり、直球も変化球の精度も高い。176センチ70キロと細身だが、さらに体ができて、ボールの威力ももっと出るようになれば、楽しみだろう。結果、2回5奪三振の快投。浦和学院打線を圧倒していた。

 9回表、常総学院が三奈木を襲い掛かり、先頭打者四球から始まり、計4連打で、5対4と1点差に追い上げられる。そして一死二、三塁から3番・三輪 拓未の2点適時打で勝ち越しに成功する。

 三輪は中学時代、世界少年野球大会日本代表に選出され、1年秋から遊撃手のレギュラーを獲得。欠点が少ない完成度の高い打撃フォームから広角に長打が打てて、さらに強肩が光る遊撃守備もレベルは高い。

 しかしポテンシャルの高さで勝負するタイプというより、ここぞという場面で力を発揮する選手。チャンスでもない場面は変化球を追いかけた三振もあるが、ここぞという場面でしっかりと食らいついてヒットにする集中力の高さがある。

 常総学院はこの回、6点を入れ、7対5と試合をひっくり返す。9回裏、三奈木が4安打目となる適時打で1点差とするが、反撃はここまで。常総学院が勝利を収めた。

 お互い収穫と課題が出た試合。常総学院は大川の好投に打線が応えた。三奈木レベルをしっかりととらえる打線の対応力の高さは侮れないものがある。

 逆転を許した浦和学院の三奈木は悔しい投球となったが、4安打を放った打撃、キレのあるストレートを見れば、素質の高さは伝わる。来春まで投打でレベルアップし、溢れる野球センスの高さを球場で発揮してもらいたい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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