試合レポート

常総学院vs東海大甲府

2020.10.31

単打でつなぐ常総学院が6回コールドで東海大甲府を下し決勝進出!

 10月31日、関東大会準決勝は常総学院東海大甲府に10対0の6回コールド勝ちを収め、5年ぶりの決勝進出を決めた。

 関東大会準決勝は投手起用が分かれる。エースが登板するか、それとも登板していない控え投手を投げさせるのか。常総学院はダブルエースとして期待される大川 慈英で、東海大甲府はエースの若山 恵斗ではなく、左腕の加藤 太陽が登板することに。試合は常総学院が序盤から流れをつかんだ。

 1回裏、常総学院は4番青木 良弘の適時打で1点を先制。さらに4回裏には押し出し四球、1番宮原 一綺の犠飛、2番伊藤 琢磨の走者一掃の適時三塁打で5対0と点差を広げた。その後も安打を重ね、6回裏、7番塙 紫音の適時三塁打で10対0。6回コールド勝ちが決まった。常総学院は3試合連続で9得点以上と、攻撃力の高さを発揮。

 この得点力の高さだけ見てしまうと、長打が多く出ているイメージを持ってしまうが、この試合、13安打中、長打になったのは2本。大会全体を振り返っても、39安打中、二塁打5本、三塁打3本、長打率.549と、全体的に単打が多く、同じく決勝に進出した健大高崎と比較すると、健大高崎は36安打中、二塁打7本、三塁打2本、本塁打6本。長打率.707と大きな差がある。

 これはどちらも正しく、健大高崎は今のレギュラーたちが入学時から2年かけて強力打線を作り上げてきた。一方、常総学院はもちろん長打力がないわけではないが、それを追いかけるのではなく、勝利のために、選手の特性を見抜いた結果が、今回の打撃スタイルなのだろう。打撃のメカニズム、選手の体格を見ても本塁打を打てるような選手ではないので、正しい方向性だといえる。

 そして好投手・大川 慈英も6回まで1安打無失点の好投。このピッチングだけ見れば、来年のドラフト候補として推せるものだった。

 ゆったりとしたテークバックから一気に腕を振りだす投球フォームから投げ込む常時140キロ前後(最速145キロ)の直球、130キロ前後のカットボール系の変化球、120キロ前後のスライダー、チェンジアップを投げ分け、5回まで無安打の投球。

 力任せに腕を振るのではなく、リリースまで余計な力を入れずに脱力した動きから投げることができる。6月に常総学院のグラウンドに訪問したとき、剛のイメージがあるエース・秋本とは違って、しなやかさが目についた大川だが、さらに力強さが増した感がある。常総学院は、島田監督がこの4月から就任し、投手の管理を徹底的に行い、佐々木前監督の時代から重大な故障をさせないよう、気を配ってきた。

 またトレーニングにも気を使うチームなので、そうした積み重ねが145キロ前後の速球を投げ込むまでにつながっているのだろう。昨年、ドラフト候補に挙がっていた一條力真とタイプが少し似ているが、一條の2年秋の速球の威力、スピードよりも上なので、さらに縦系の変化球をマスターすれば、ドラフト候補として大きく評価を上げる可能性を持っている。

 今年は驚くようなスラッガーもいなければ、150キロを投げられる投手はいない。ただ、往年の常総学院を思い出すようなチームであることは間違いない。

 敗れた東海大甲府は若山を使わず、控え投手を育てようという明確な意図が見えた。東海大相模を破った試合を見れば強力チームであることは確か。また投打で鍛え上げて、来春には強い東海大甲府を見せることを期待したい。

(文・=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

横浜に入学した「スーパー1年生5人衆」に注目せよ! 佐々木朗希二世、中学日本代表の二刀流など明日の慶應戦で活躍なるか!?

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

【滋賀】シードの滋賀学園、彦根総合が登場<春季県大会>

2024.04.27

【広島】広陵は瀬戸内と、広島商は崇徳と夏のシードをかけて激突<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!