試合レポート

履正社vs大阪商業大高

2020.09.27

課題多くも今年の履正社も潜在能力が高い選手を揃える!

履正社vs大阪商業大高 | 高校野球ドットコム
先発・渡邊純太(履正社)

 全国トップクラスの対応力と破壊力を兼ね備えた打線を作り上げる履正社。全国優勝した2019、交流戦出場した2020年は高校生レベルではとても抑えられないすごみがあった。2021年の履正社は経験者がほとんどいない。だから岡田龍生監督は「今年はすべてが課題なんです」と語るようにチーム作りに苦労している様子だ。
 そのためチームとしては完全に未知数。とはいえ、体格やスイングの強さを見ると、全国クラスの強力打線へ育つ可能性がある。

 履正社の先発は渡邊純太。最速138キロを誇るといわれる大型左腕だが、やはり連投ということで、常時120キロ後半程度。ただ表示以上に勢いを感じる。ガンが甘い球場ならば130キロ中盤は出ていてもおかしくない勢いはある。そして120キロ前半のスライダー、110キロ台の落ちる系の変化球の精度も高く、好投手なのがうかがえる。

 しかし勢いに乗る大商大高は一死一塁から3番・鈴木晶仁がレフト線へ二塁打を放ち、さらに4番太田宙の適時打で1点を先制される。

 追いつきたい履正社は3回裏、二死三塁から2番池田康晟の適時打で同点。4回裏には7番山本翼の適時三塁打と8番眞鍋蒼次朗のスクイズで3対1と勝ち越し。5回裏、一死から3番安田大輝の右翼線を破る二塁打でチャンスを作り、4番松林克真のライトへポトリと落ちる右前安打で一、三塁へ。そして二死から6番光弘穂高の一塁内野安打で1点を追加。5回まで4対1と点差を広げ、試合の主導権を握ったかに思えた。

 流れを明け渡さなかったのは、大商大高の先発・大槻翼の力投が大きい。走者がいなくてもセットポジションで始動し、細身の体型から小気味よく腕を振る右の力投派。常時125キロ~130キロの直球、120キロ前後のスライダーを投げ分けるコントロール型投手。内外角に投げ分け、ゲームメイクを行っていく。

 7回表、大商大高は打撃好調の3番・鈴木のレフト超えの適時二塁打をきっかけに追い上げ、7番大谷晃成、8番鮫島雅希、9番大槻翼の三者連続タイムリーが飛び出し、一気に同点に。なんと試合は振り出しに戻る。

 7回裏、履正社は2番池田の右前安打と犠打、4番松林の右前安打で一、三塁をきっかけに内田翔の敵失、6番光弘の適時打、8番眞鍋の2点適時打で8対4と4点差をつけた。さらに8回裏にも松林の犠飛で1点を追加した。

 そして渡邊は粘り強い投球で4失点完投勝利。ベスト4進出を決めた。



履正社vs大阪商業大高 | 高校野球ドットコム
3番センター・鈴木晶仁(大商大高)

 まだ対応力、判断力などもろもろ課題はあり、昨年、一昨年のような絶対感はない。しかし、1人1人見ていくと個々の能力の高さは例年通りだ。まず2安打を記録した安田大輝(2年)はインサイドアウトで振りぬく打撃技術の高さは素晴らしいものがあり、どのコースでもしっかりとさばいてヒットにすることができる。堅実な三塁守備も見どころがある。そして4番松林だが、若林将平(慶應義塾大)タイプの右打ちのスラッガー。右わきを落として、縦振りのスイングで角度のある打球を飛ばすことができている。キャプテンシーは去年の主将・関本勇輔以上で、グラウンド上や試合後の立ち居振る舞いを見ると、ガッツがあり、礼儀正しい。模範的な野球人という印象を受ける。

 5番に座る塔下尚利も楽しみな右打ちの大型スラッガー。振り幅が大きいスイングで鋭い打球連発している。

 6番・光弘帆高も俊敏な遊撃守備と振り幅が大きく、しなやかなスイングで安打を量産する期待の1年生ショート。肩も強く、1年生としてはなかなかの力量で、将来的には西山虎太郎(明治大)のような遊撃手になる可能性を持っている。8番・眞鍋も2.00秒台のスローイングとパンチ力あふれる大型捕手だ。

 次は全国トップレベルの力量を持った選手を揃える大阪桐蔭。どの結果になっても自分たちの課題を明確にするには絶好の相手であることは間違いない。

 敗れた大商大高は先発の大槻に加え、猛打賞を記録した3番・鈴木は楽しみな右打ちの外野手。シャープなスイングでライナー性で鋭い打球を連発し、センターからの返球も強肩なのがうかがえる選手。もともと出場機会は少なかったそうだが、今大会の活躍を機にさらに調子を上げて、成長を見せる外野手ではないだろうか。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.28

【広島】広陵、崇徳、尾道、山陽などが8強入りし夏のシード獲得、広島商は夏ノーシード<春季県大会>

2024.04.28

【岡山】関西が創志学園に0封勝ちして4強入り<春季県大会>

2024.04.28

【富山】富山商、氷見、未来富山などがベスト16入り<春季県大会>

2024.04.28

【鳥取】鳥取城北が大差でリベンジして春3連覇<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!