履正社vs大阪商業大高
課題多くも今年の履正社も潜在能力が高い選手を揃える!
先発・渡邊純太(履正社)
全国トップクラスの対応力と破壊力を兼ね備えた打線を作り上げる履正社。全国優勝した2019、交流戦出場した2020年は高校生レベルではとても抑えられないすごみがあった。2021年の履正社は経験者がほとんどいない。だから岡田龍生監督は「今年はすべてが課題なんです」と語るようにチーム作りに苦労している様子だ。
そのためチームとしては完全に未知数。とはいえ、体格やスイングの強さを見ると、全国クラスの強力打線へ育つ可能性がある。
履正社の先発は渡邊純太。最速138キロを誇るといわれる大型左腕だが、やはり連投ということで、常時120キロ後半程度。ただ表示以上に勢いを感じる。ガンが甘い球場ならば130キロ中盤は出ていてもおかしくない勢いはある。そして120キロ前半のスライダー、110キロ台の落ちる系の変化球の精度も高く、好投手なのがうかがえる。
しかし勢いに乗る大商大高は一死一塁から3番・鈴木晶仁がレフト線へ二塁打を放ち、さらに4番太田宙の適時打で1点を先制される。
追いつきたい履正社は3回裏、二死三塁から2番池田康晟の適時打で同点。4回裏には7番山本翼の適時三塁打と8番眞鍋蒼次朗のスクイズで3対1と勝ち越し。5回裏、一死から3番安田大輝の右翼線を破る二塁打でチャンスを作り、4番松林克真のライトへポトリと落ちる右前安打で一、三塁へ。そして二死から6番光弘穂高の一塁内野安打で1点を追加。5回まで4対1と点差を広げ、試合の主導権を握ったかに思えた。
流れを明け渡さなかったのは、大商大高の先発・大槻翼の力投が大きい。走者がいなくてもセットポジションで始動し、細身の体型から小気味よく腕を振る右の力投派。常時125キロ~130キロの直球、120キロ前後のスライダーを投げ分けるコントロール型投手。内外角に投げ分け、ゲームメイクを行っていく。
7回表、大商大高は打撃好調の3番・鈴木のレフト超えの適時二塁打をきっかけに追い上げ、7番大谷晃成、8番鮫島雅希、9番大槻翼の三者連続タイムリーが飛び出し、一気に同点に。なんと試合は振り出しに戻る。
7回裏、履正社は2番池田の右前安打と犠打、4番松林の右前安打で一、三塁をきっかけに内田翔の敵失、6番光弘の適時打、8番眞鍋の2点適時打で8対4と4点差をつけた。さらに8回裏にも松林の犠飛で1点を追加した。
そして渡邊は粘り強い投球で4失点完投勝利。ベスト4進出を決めた。
3番センター・鈴木晶仁(大商大高)
まだ対応力、判断力などもろもろ課題はあり、昨年、一昨年のような絶対感はない。しかし、1人1人見ていくと個々の能力の高さは例年通りだ。まず2安打を記録した安田大輝(2年)はインサイドアウトで振りぬく打撃技術の高さは素晴らしいものがあり、どのコースでもしっかりとさばいてヒットにすることができる。堅実な三塁守備も見どころがある。そして4番松林だが、若林将平(慶應義塾大)タイプの右打ちのスラッガー。右わきを落として、縦振りのスイングで角度のある打球を飛ばすことができている。キャプテンシーは去年の主将・関本勇輔以上で、グラウンド上や試合後の立ち居振る舞いを見ると、ガッツがあり、礼儀正しい。模範的な野球人という印象を受ける。
5番に座る塔下尚利も楽しみな右打ちの大型スラッガー。振り幅が大きいスイングで鋭い打球連発している。
6番・光弘帆高も俊敏な遊撃守備と振り幅が大きく、しなやかなスイングで安打を量産する期待の1年生ショート。肩も強く、1年生としてはなかなかの力量で、将来的には西山虎太郎(明治大)のような遊撃手になる可能性を持っている。8番・眞鍋も2.00秒台のスローイングとパンチ力あふれる大型捕手だ。
次は全国トップレベルの力量を持った選手を揃える大阪桐蔭。どの結果になっても自分たちの課題を明確にするには絶好の相手であることは間違いない。
敗れた大商大高は先発の大槻に加え、猛打賞を記録した3番・鈴木は楽しみな右打ちの外野手。シャープなスイングでライナー性で鋭い打球を連発し、センターからの返球も強肩なのがうかがえる選手。もともと出場機会は少なかったそうだが、今大会の活躍を機にさらに調子を上げて、成長を見せる外野手ではないだろうか。
(文=河嶋宗一)