試合レポート

大阪桐蔭vs箕面学園

2020.09.26

今年の大阪桐蔭は強いのか?箕面学園戦から投打の逸材を振り返る

大阪桐蔭vs箕面学園 | 高校野球ドットコム
本塁打を放った池田陵真(大阪桐蔭)

 2021年度の大阪桐蔭はかなり期待が高いチームといわれている。本当に強いチームなのかは検証するには、一歩引いてみる必要がある。大阪桐蔭の選手たちは中学時代に日本代表を経験している選手が多い。肩書きを見てしまうと、なんでもすごいと妄信的になってしまうところがある。過去の活躍はすべて取り除いて、まずはフラットな視点で今年のチームを見てみた。

 まず守備面は人工芝が変わった南港中央球場で守ったということで、バウンド面で苦労している様子が見える。

 動き自体は素早く、能力の高さは十二分に感じられるが、まだ精度は低い。そこは新チームらしいかもしれない。

 それは初回に出る。1回表、4番池田陵真の犠飛で1点を先制。しかし1回裏、先発の松浦慶斗が二死一塁の場面から4番の安打でピンチを作り、またここから連携ミスで同点を許す。2回表、松浦自身が適時打を放ち、勝ち越しに成功し、4回表にも1点を追加したが、箕面学園の先発・藤田海ののらりくらりとかわす投球の前に苦しんでいた。

 しかしそんな状況を切り開いたのが、3番宮下隼輔、4番池田陵真の夏の経験者組だった。

 まず5回表、宮下はストレートをとらえ、公式戦初本塁打。「ストレートをうまくとらえることができました。自分は中距離打者なので、うまく打てたと思います」
まだ高校通算5本塁打ではあるが、175センチ80キロと重心を低くした構えからインサイドアウトのスイングで振りぬき、広角に打ち分けるスタイルは吉澤一翔(早稲田大)を思い出させる。また「肩の強さには自信があります」と語るように守備力も非常に高い。この夏は先輩野手のけがなどもあり、遊撃を守った。打球反応が良く、軽快な三塁守備は魅力的で、さらに肩の強さも一級品だ。攻守ともに技術が高く、今年のチームの中心選手といっていいだろう。

 そして4番・池田も甘く入った変化球を逃さず、レフトスタンドへ3試合連続弾(この秋3本目)。打った瞬間、レフトが一歩も動かない豪快な本塁打となった。

 これで高校通算15本塁打目。172センチ80キロと身長があるわけではないが、それでも安定感のある構え、縦振りのスイングにより、強烈な打球を生み出す。センターからの強肩も魅力的で、攻守の総合力の高さは世代でもトップクラス。池田の魅力といえば、試合の中での集中力の高さ。改めて球場で彼の雰囲気を見ると、自分の間合いにもっていくのがうまい。

 無駄な打撃がなく、凡退となってもしっかりととらえている当たりや、犠牲フライなど最低限の打撃が多い。西谷浩一監督は「気持ちが強い選手」だと評する。取材陣の前に出てきた池田のいでたちは実に自信に満ち溢れており、主将を決める際は満場一致で池田となったそうだ。まず2019年の主将・中野波来(青山学院大)、2020年の主将・藪井 駿之裕は人柄の良さが前面に出る。池田の場合、中川卓也に近い、「オレについてこい」タイプの主将だ。攻守のパフォーマンスや試合での立ち居振る舞いを見れば、後からついていきたくなる選手だ。



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先発・松浦慶斗(大阪桐蔭)

 そして8回表、池田の中前安打を起点にチャンスを作り、6番藤原夏暉が2点適時打を放つ。藤原は試合前から軽快な遊撃守備を見せており、この試合でも投手の後ろへ抜ける打球を軽快に処理していた。また俊足であり、盗塁も決め、さらにバットコントロールもよい。例年の大阪桐蔭のショートに求められる能力は十分に達した選手だといえるだろう。

 投手陣では昨年から投げていた投手が登板。まず先発・松浦慶斗は3回1失点の力投。140キロ中盤を計測していた夏と比べると、まだ完全に仕上がっていないのか、常時130キロ~135キロ前後(最速136キロ)の速球、120キロ前半の縦横のスライダーを投げこんだ。手持ちのガンは球速が出にくく、球場のガンと比べると、2,3キロ遅く出るが、それでも、140キロ中盤を計測していた時と比べると、やはりボールの勢いで物足りなさを感じる。勝ち進むごとに調子を上げていければいいだろう。

 2番手・竹中勇登は2回無失点の好投。セットポジションから投げこむ直球は常時130キロ~136キロを計測。ストレートのスピードは標準レベルだが、120キロ前後のスライダーの切れ味が抜群。来年になれば、常時140キロ台も期待できるだろう。

 そして最速150キロ前後の速球を投げ込む関戸康介として登板。ただこの試合はあまり調子が良くなかったのか、2イニング目の7回に最速142キロを10球ほど計測していたが、同じ体格の篠木健太郎木更津総合)の145キロ前後の速球を見ていたので、142キロ程度は当然だといえる。それでも高校2年秋の段階としては威力があり、120キロ中盤のスライダー、フォークの精度も高く、ドラフト候補として今後はマークされる存在だろう。

 4番手で登板した西川音羽はまだ133キロ程度だが、真上から振り下ろす速球は角度があり、大きな可能性を感じさせる。将来が楽しみな大型右腕だった。

 1人1人の能力は高いが、攻撃部分で詰めの甘さを残す。守備の面でもカバーリング部分でまだ課題がある。主将の池田は「まだ攻撃の中で点が取れていないと、ベンチが沈んでしまうときがあり、流れが悪いままになっている」と語るように、いわゆる集中打がなく、淡白な終わり方をするイニングもあった。全国で数多く波乱があり、有名校の敗退が目立つ。現状の大阪桐蔭は潜在能力は非常に高いが、投打ともピークに達しておらず、まだ出し切っていないところがある。見方を変えれば、その分、伸びしろはたっぷりある。

 その中で、1つずつ課題を乗り越えていけば、どこも寄せ付けない強さを持ったチームへ成長するのではないだろうか。

 敗れた箕面学園だが、守備面で球際が強い選手が多く、伝統的に守備型のチームを作っているのがうかがえた。特に3番センター・新城 翼は守備力が非常に高いセンター。俊足を生かし、外野奥深くの打球にもしっかりと適応し、次々と飛球を捕球。松浦からもクリーンヒットを放ち、ミート力も確かなものがある。

 4番・原口翔もパンチ力ある右のスラッガータイプの選手。この3,4番を中心に打撃力を強化し、また来春、来夏も上位を狙えるチームになることを期待したい。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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