三島南vs静岡
創部100周年の三島南、五度目の正直で静高の壁破ってベスト4進出!!
大活躍した三島南・斎藤崇晃君
三島南を率いることになって7年目の稲木惠介監督。これまで、今夏季大会も含めて4度静岡高校の壁に跳ね返されてきた。「[stadium]草薙球場[/stadium]では静高の独特の空気がありますよね。その壁に当たって、跳ね返されながらようやく勝つことができました」と素直に嬉しさを表していた。しかも、三島南としては今年のチームが創部100周年を迎えることとなる節目の年のチームだ。そんな年に、学校としてもベスト4進出で、これは大きなステップアップを果たしたとも言えよう。
「頭を越されてホームランはしょうがない。ただ、大きな飛球はいっぱい来るだろうから、とにかくが外野は思い切り下げて守らせました。昨日、私も腰が痛くなるくらいに思い切り大きな外野ノック打ってきました(苦笑)」と言っていたが、その読み通りに力のある静岡打線に対して植松君が粘り強く投げて行って四隅を丁寧についていく投球だった。
そうして打たせた飛球は全部で16本だった。そういう意味では、稲木監督としては「上手くハマった」というところであろう。「力のある子は誰もいません。みんな東部地区の地元の子たちだけですけれども、100%の力を出そうということはいつも言っています。その100%、今日は出し尽くしてくれましたね」と満足げだった。
三島南は3回、一死から1番の斎藤崇晃君が右越三塁打を放つ。そして、深瀬涼太君が強めに二塁方向へ転がすスクイズを決めて先制。初安打をしっかり先制点に結びつけるそつのなさも示した。
そして植松君が、決してスピードがあるわけではないが、最速127キロくらいなのだけれども、丁寧に投げて、力強いスイングの静岡打線を何となく翻弄していった。5回まででは、静岡は2安打2四球で、内野飛球も含めて9本打ち上げていた。
それでも、静岡は6回に4番の池田君が一振りで右翼席への同点ソロを放つ。このあたりは、さすがに静高パワーだ。静岡ベンチも、「よし、これで行けるぞ」と大いに盛り上がっていた。
しかし、三島南の「100%野球」は逞しかった。取られた直後の7回、一死後7番山田駿君が四球で出ると、二死から、9番古川君も右前打で繋ぎ、山田くんはわずかなスキを突いて三塁を陥れるなどの巧みさを示して相手を揺さぶる。ここで、1番の斎藤崇晃君が左前打で勝ち越し打。さらに、続く深瀬涼太君も中前へタイムリー打でこの回2点。稲木監督も、「あそこで1点だけじゃなくて、2点入ったのは大きかった」という価値あるタイムリー打だった。
8回、三島南は無死で連打されて大ピンチを迎えたが、ここでも4番池田君、5番川端君、6番永島君と力のある打者をすべて飛球に打ち取った。9回も3者凡退で、球速140キロも出すという前田銀治君を使うこともなく、植松君が完投しての三島南の大殊勲となった。
「楽しい野球をしようとするのじゃなくて、苦しいのを耐えて、耐えたその後に楽しさがある」
稲木監督はそんなことをミーティングでも言っていたというが、まさにこの日の三島南は、耐えて耐えて、そして最後に大きな勝ちを射止めた。ベスト4進出で、静岡県として三島南が一躍21世紀枠の代表候補推薦校にも浮上してきそうだ。
(文=手束 仁)