都立日野vs都立城東
東西東京の都立の雄対決、都立日野・木下 被安打5の完封で都立城東を破る
完封した日野・木下孔晴
東東京の都立の雄・都立城東と西東京の都立の雄・都立日野が1次予選の1回戦でいきなり激突した。都立の雄のプライドをかけた戦いだけに、試合前から緊張感が高まっていた。
昨秋のベスト４、この夏のベスト８の立役者である都立城東の左腕・林平太郎の名は、既に広まっている。独特のインステップ気味のフォームから投げる球を、いかに攻略するか。都立日野の各打者は、ホームプレート寄りに構えた。インコースに投げにくくし、アウトコースを叩く作戦だったが、「ひざ元にしっかり、コントロールされていました」と、都立日野の嶋田雅之監督は舌を巻く。
林は体が一回り大きくなり、打順も3番。投打にわたり、チームの中心選手に成長していた。昨秋は、対戦チームの監督が、「なぜ打てないのか分からない」というタイプの投手であったが、今では好投手としての風格も備わってきた。
対する都立日野の右腕・木下孔晴は、この秋からエースになった。それでも、「8月くらいからほとんど打たれていないです」と、嶋田監督は言う。実際、この試合での投球も素晴らしかった。直球は130キロ台半ばといったところだが、伸びがあり、都立城東の選手は次々にフライを打ち上げる。3回まで1人の走者も出さなかったが、三振1、内野ゴロ１以外は、全てフライアウトであった。
先制点を挙げたのは都立日野だった。2回裏二死から中前安打の6番・鈴木達哉を一塁に置いて、7番・丹駿貴が右中間を破る二塁打を放つと、鈴木が一気に本塁に還った。
試合はまだ始まったばかりであったが、この1点が重くのしかかる。都立城東は4回表に、二死から走者を2人出すが得点できない。木下は、直球にチェンジアップ、スライダー、カーブなどで緩急をつけ、都立城東に付け入る隙を与えない。「試合の雰囲気に慣れてきました」と木下が言う中盤以降は、球のキレも鋭さを増して、都立城東打線もなかなか攻略できない。
対する林も２回に失点をしたが、要所を抑える好投で、緊迫の投手戦になってきた。６回裏都立日野は一死後一塁から５番・廣岡太平のセンターの頭を超える二塁打で二、三塁のチャンスを迎える。ここで林が暴投。三塁走者が本塁を突いたが、本塁にカバーに入った林がタッチしてアウト。追加点の機会を逃した。
都立城東は走者を出しても、５回表は盗塁失敗、６回表は送りバント失敗でチャンスを広げることができない。また都立日野の守りは内外野ともしっかりしており、好投の木下を盛り立てる。
結局１－０、都立日野のリードで迎えた９回表都立城東の攻撃は、一死後、４番・佐藤タイラーが中前安打を放ったが、後続が倒れ、都立日野が白熱の投手戦を制した。
「意識をする相手で、絶対に負けられないという気持ちでやりましたが、城東も力がありました」と、都立日野の嶋田監督が言えば、都立城東の内田稔監督も、「紙一重の勝負でした。でも（木下投手を）捉えることができませんでした」と語っている。
この試合好投した都立日野の木下は、世田谷区の芦花中学で軟式野球をしていた。高校に入り硬式野球をして、初めは指のかかりの違いなどに戸惑ったが、これを克服し、この秋注目の投手に躍り出た。
都立城東も敗れはしたが、実力のあるチームであることは間違いない。４番の佐藤など力のある選手もいるが、打力のアップが春以降の戦いの鍵になる。
夏８強の城東は、都大会に進出すればシードされることになっていたが、この敗戦で、その権利を失った。
都立日野は都大会に出てもシードされるわけではないが、昨秋は４強、一昨年の秋は８強に進んだ都立城東に代わり、都立の雄としての戦いが期待される。
（記事＝大島 裕史）
