上野学園vs都立立川
粘り抜いて後半に逆転した上野学園。エース・竹森は9安打3失点の粘投
「都立立川さんは、謙虚に自分たちの野球をやるチームという印象を持っていました。
そういった所は私も普段から選手たちに伝えていて、得点を取られることもあるかもしれない、でもその中でいかに気持ちを前向きに持っていけるが大事だと思っていました。
そういった部分では、彼らは辛抱強くゲームを展開してくれたかなと思います」
謙虚に野球をすること。
上野学園の小川貴智監督が普段から大事にしている言葉だ。
[stadium]片倉高校グラウンド[/stadium]での秋季東京都大会一次予選1回戦、上野学園と都立立川の試合。
前半は都立立川がやや優勢な試合であったが、上野学園が粘り強く食らいついて逆転勝ちを収めた。
同点で迎えた5回表に、都立立川は3番・木村祥太郎のタイムリーヒットで勝ち越しに成功するが、後半戦に入った直後に上野学園の底力が発揮された。
6回裏、上野学園は相手のエラーから同点に追いつくと、その後ランナーを二人置いて9番・竹森がセンターへの2点タイムリーヒットを放って勝ち越し。タイムリーが欲しい場面での1本が飛び出し、上野学園がこの試合で初めてリードを奪う展開となった。
上野学園の先発・竹森大翔は、スピンの利いた直球を丁寧にコースに投げ分ける制球力が持ち味の投手。スライダーもきっちりとコースに決める技術があり、前半に2点を失ったが粘りの投球を続けた。
「元々1年生の時には、まだ子供っぽさや人間的な弱さがあり、一年間で生活面や野球以外のところで彼にはたくさん指導してきました。
2年生になると、学校の多くの先生方からも『変わったね』と言われるような成長を見せて、新チームでも1番を背負っていくという振る舞いが見られました。その意味では、自信を持って先発ピッチャーに送りましたね」
竹森は8回にも1点を失ったが、9回を投げきり9安打3失点で何とか逃げ切った。
試合は4対3で上野学園が勝利し、都立片倉との代表決定戦に駒を進めた。
都立立川は「粘り強い試合ができてこんな日が来るとは」
ここまで竹森のピッチングにばかりフォーカスを当ててきたが、その他の選手も消化していきたい。
竹森の女房役である吉田柊斗は、2年生から正捕手を務めていた経験豊富な選手で、肩の強さが目を引いた。手元のストップウォッチでは「1.90秒」を記録して、十分強肩と言える。
また投手への気配りや配球の切り替えなど、捕手としての資質は兼ね備えており、小川監督からの信頼も厚い。
「本当に彼は気が利く選手で、オープン戦でも他のチームからも良いキャッチャーだねと言っていただくこともあります。
人に厳しくなれない甘さもありますが、日常生活からも落ち着いていて、あと1年なんとか成長させたいなと考えています」
バッテリーを中心に次戦でも粘りの野球を展開して、都大会進出を掴みたいところだ。
一方、敗れた都立立川だが、先発の牛久保俊輔は前半はランナーを出しながらも粘り強い投球でリードを許さなかったが、味方のミスもあり後半は粘ることが出来なかった。
それでも池田典生監督は、試合後は晴れやかな表情を見せた。
「夏の練習試合では、そんなに内容が良かった訳でもありませんでした。夏から秋にかけて上手くいかなかったことを考えたら、粘り強い試合ができて、こんな日が来るとは思わないような感じです」
成長を実感し、今度は大会で負ける悔しさも経験した選手たち。
来春には、今度はどんな成長を遂げているのか今からとても楽しみだ。
（記事＝栗崎祐太朗）
